第五章 第四話 修行の成果
ガーサル領に突入した俺達は、作戦を優位に進めていた。しかし敵の数が多く、各地に被害が出ていた。
そんな中、ドグマにはミズキとイースが、シシオウには俺が相対する形となる。
シシオウ「まずはパッとしない男!テメェからだぁ!!死ねえぇぇっっ!!」
シシオウは巨大な口から、俺の方に向けて、激しい火炎の息を吐いてきた。
守「(……止めながら接近する!)」
シシオウの火炎息攻撃は、強力で広い攻撃範囲を誇るが、同時に隙が大きくなる。俺は周りの被害を少しでも抑える為に、守護壁を展開しながら接近した。
シシオウ「(止めながら近付いて来やがる!くそ!回り込まれる!)」
俺はシシオウの直前で右へ回り込み、渾身の右ストレートをシシオウの左脇腹に叩き込んだ。
シシオウ「ぐっ!(前回よりも拳の威力が上がってる!?……生意気な!!)」
シシオウは右脚で踏ん張ると、そのまま強烈な連撃を放つ。やはり連撃速度はかなり速かったが、俺は円を意識した空道の防御術と、守護壁術で、それらを全て捌いていく。
シシオウ「オラァァァッッ!!(当たらねぇ!前は腕でガードするだけで、必死だった筈だ!……かくなる上は……)」
シシオウは、大きくバックステップをして、俺から距離を取った。直後、シシオウは大きく息を吸い込んだ。
守「!(咆哮か!?周りの味方に被害が出る!止めなければ!!)」
俺は全速力で、シシオウに直進する。
シシオウ「(やはり咆哮を警戒していたか……)ハアアアッッッ!!!」
しかし、シシオウが放ったのは咆哮ではなく、先程よりも強力な火炎の息であった。
俺は急いで守護壁を展開していたが、火炎の威力に押され、近づく事が出来なくなり、終いには押され始めていた。
守「くっ!」
シシオウ「距離が更に空いたな。頃合いだ!」
守「(マズイ!今度こそ咆哮が来る!)」
シシオウが咆哮を上げようとした、その時だった。
「やらせはせん!!」
シシオウ「!!」
師匠がこのタイミングで、駆け付けてくれた。シシオウに強力な掌底を叩き込み、咆哮を解除した。
ゲンジ「最高の弟子よ!今じゃぁっ!!」
守「はい!」
俺は、隙が生じたシシオウの元に全速力で直進し、脚から腰、体幹、肩にかけて螺旋状の捻りを加えていった。
シシオウ「……!!(まずいぃっっ!!)」
守「……闘気螺旋拳!!」
ドゴォォォォッッ!!!
俺はシシオウの腹に、身体全体、最後に拳を螺旋状に回旋させた必殺の拳を、全力で叩き込んだ。
シシオウの腹が、螺旋状に大きく凹む。
シシオウ「ぐはぁっっ!!」
直後、師匠が追撃の一撃を見舞う。
ゲンジ「玄武大衝波!!」
シシオウの腹が更に大きく凹み、加えて顔面も陥没した。
シシオウ「ガァァァッッ!」
ゲンジ「最高の弟子よ!後は一緒に追撃するぞ!」
守「はい!師匠!」
ドドドドドドドドドドドドッッッ!!
師匠と俺は、シシオウに掌底と拳の連撃を叩き込んだ。
シシオウ「ガバババババババッッッ!!(バカな…………)」
シシオウは、仰向けで倒れた。そして白目を向いたまま、動かなくなった。防衛戦の時は、殆ど歯が立たなかった相手を、師匠の手助けがあったとはいえ、倒す事が出来た。
ゲンジ「よし!片付いたな!よくやったぞ!最高の弟子よ!後はミズキとイースの所じゃな!加勢しに行くぞ!」
守「はい!行きましょう!」
side:イース
ミズキさんと僕は、ドグマさんと相対していた。やはり凄い迫力だ。防衛戦の時の記憶が蘇り、気負いしそうではあったが、何とか持ち堪えていた。
ドグマ「クソ女!クソチビデブドラゴぉぉん!!今度こそブッコロぉぉす!!イクゾオオオ!!」
ドグマさんは突進してきた。
ミズキ「イースちゃん!修行で反復した通りにいくよ!」
イース「はい!」
僕は一旦離れ、ミズキさんがドグマさんを引き付ける。ドグマさんの突進を、ミズキさんは直前でサイドステップで躱していく。
直後、ミズキさんが鋭い連撃を放つ。
ミズキ「無月刃!!」
光り輝く透明の、三日月型の刃達が、ドグマさんを襲う。
ドグマ「グウオォォォ!!(何だこれは!?水の刃じゃない!)」
ミズキ「はぁっ!(威力は劣るけど、無属性の技も習得した……致命傷は与えられないけど、これで確実に傷をつける!)」
ドグマ「ブッコロス!!クソ女ぁぁっっ!!!まずはテメェからだぁぁっっ!!」
ミズキ「(よし!怒りが私に向いた!)」
ドグマさんは右腕を思いっきり上げ、重撃をミズキさんの方に振り翳した。ミズキさんは左サイドステップで躱し、次々と連撃をドグマさんのお腹に刻んでいく。
ドグマ「クソオォッ!!前と何が違うってんだよぉぉっー!何がどうなってんだぁ!!」
ミズキ「……無月斬!!」
更に大きな透明の斬撃が、ドグマさんを襲う。
ドグマ「ぐわああっっ!!……いい加減にしろよぉ!!クソ女ぁぁっっ!!!」
ミズキ「(……イースちゃん!今だよ!)」
ドグマさんが、右腕を思いっきり上げようとした時……僕はドグマさんの左側へ走り込んでいき、ドグマさんの左脇腹へ、右腕の重撃を全力で叩き込んだ。
ドゴォォォォッッ!!
ドグマ「ぐふうぅぅっっ!?」
ドグマさんは右へ大きく倒れ込んだ。
ドグマ「(あのクソチビデブドラゴンか!?クソオォッ!まずはアイツからだぁっっ!)」
イース「(ここだぁ!この機を逃さない!!)」
僕は倒れているドグマさんの元に直進し、すぐさま全力の重撃を顔面に何発も叩き込んだ。
イース「うりゃぁぁっっ!!!」
ドグマ「ブブブブブブブブブ!!!(やばっ……早く、脱出…………できな……)」
ミズキ「(イースちゃん……凄い……迫力…………)」
全力で重撃を叩き込んだ為、合間に息を整えようとしたが、その時には既に、ドグマさんは白目を向いたまま、動かなくなっていた。
イース「はぁ、はぁ。……勝ちました?」
ミズキ「凄い!イースちゃん!勝ったよぉ!」
ミズキさんは僕の方に駆け寄ってくれた。……若干顔が引き攣っていたのは、気のせいであろうか。
ゲンジ「2人とも!加勢しに来たぞ!」
守「2人とも無事か!?」
師匠と守さんも、駆け付けてくれた。しかし、白目を向いているドグマさんを見て2人は、
ゲンジ「ドグマも倒したか!流石はミズキと愛弟子よ!」
守「やったな!イース!」
イース「はい!」
守さんと僕は拳を合わせた。
ゲンジ「これで幹部の魔物全員を倒した!残るは親玉だけじゃな!2人とも、動けるか?」
ミズキ・イース「はい!大丈夫です!」
師匠が無線貝で、ハンターさんにシシオウさんとドグマさんを倒した事を報告した。直後、奥の砦から強烈な爆発音が鳴り響いた。
ゲンジ「よし!もうすぐ親玉が砦の外から出てくるじゃろう!その間に残りの魔物も片付けるぞ!」
一同「はい!!」
その時砦の内部では……
「貴様らが爆発を引き起こした犯人だな。人間風情が……まぁ良い。貴様らには、残りの人間達への見せしめになって貰おう。」
「ぐっ……」
「うっ……」
シシオウさんと、ドグマさんとの戦いは、僕達が勝利した形となった。しかし、この先の……過酷な戦いを……悲惨な運命が僕達を待っていた事は…………この時の僕達はまだ、思いもしていなかった…………
…… 第五章 第五話へ続く




