第五章 第三話 ガーサル領突入
「…………!!……………………。
……シシオウ、ドグマよ。どうやらダラスが、ハンスという者に討ち取られた様だ。」
「!!あの悪魔がですか!奴は性格は最悪でしたが、その狡猾な性格と実力は本物だと思っていましたが……まさか討ち取られるとは……」
「うおぉぉん!!ハンスってアイツだぁ!あのクソキザ野郎だ!!アイツはクソ強かった!だが、ダラスが殺されるなんて……くそおおぉぉぉ!!ぶっころおぉぉす!!」
「(我が分身と言える者だったのだがな…………)
うむ。だが、奴も幹部としてのプライドがあったんだろう。そのハンスという者は、呪いの力を受け戦闘不能だ。解呪には時間は掛かり、仮に動ける様になったとしても、万全ではない。
シシオウ、ドグマよ。残りの人間達は、既に近くに来ておる。迎撃を頼んだぞ。」
「……承知致しました。必ず奴らを血祭りにあげて、生まれた事を後悔させながら、全滅させます。」
「分かったぞ!全員、ぶっ殺してやるぅぅぅ!!」
俺達はガーサル領まであと少し、という所に来ていた。
その時、師匠から報告があった。
ハンスがダラスと戦闘に入っていたが、ダラスを見事討ち取る事が出来たと。しかしハンスは、呪いを受けてしまい、解除薬は飲んだが、ダラスの生命をかけた強力な呪いは残ってしまい、戦線復帰には時間がかかるという。
ゲンジ「やむを得まい。ハンスが生きているだけでも、良かった。……おそらく敵側には、ワシらが攻めてくる事は伝わっていると考えて良いじゃろう。奪還作戦はワシらだけで行うとしよう!」
一同「はい!」
そして、ガーサル領が目の前に、という所まで来た時だった。魔物の軍勢が、既に入口を封鎖していた。
イース「……ミズキさん。一緒に生き残りましょう。」
イースが震えながらも、ミズキに話し掛けた。
ミズキ「うん。必ず一緒に生き残りましょう。ドグマとの戦いも……今まで頑張ってきた修行の成果を、発揮しましょう!」
イース「はい!」
俺の方は、近くにいた師匠に話し掛けた。
守「……師匠。絶対に生き残りましょう。一緒に未来を……作っていきましょう!」
ゲンジ「最高の弟子よ……無論じゃ。必ず一緒に生き残り、また共に未来を作っていこう!」
守「はい!!」
そしてゲンジが、周りの味方達に声を掛ける。
ゲンジ「……いよいよじゃな。向こうは迎撃体勢を取っている。…………皆の者。準備は良いか?」
一同「はい!」
ゲンジ「……では、行くぞ。
…………皆の者ぉぉ!!我らの明日を!未来を!勝ち取りにいくぞぉぉ!!!!突入ぅぅぅ!!!!」
いよいよ、ガーサル領を奪還する戦いの火蓋が切って落とされた。
俺達は円陣を崩さない様にしながら、ミズキ達前衛の後に続く様に、領地への突入を図った。
ミズキ「(初撃が肝心……) 水月斬!!」
ミズキの持っている妖刀「輝水刀」による、必殺の一撃が魔物達へ繰り出される。
「ギャァァァァァ!!」
横薙ぎに一閃された、光り輝く水色の斬撃は、魔物達を次々と分断していった。
イース「(僕も続かなきゃ……!) はぁぁっっ!!」
今度はイースが氷属性の白銀の息を、魔物達に向けて吐き出していった。魔物達は身動きが取れなくなる。
ポー「お前らぁ!!続けぇ!!」
そして、ポー達残りの前衛も続き、身動きが取れなくなった魔物達を、次々と蹴散らして行った。
ゲンジ「うむ!このまま敵を蹴散らし、中央突破を図るぞ!!」
俺達は入口を封鎖していた魔物達を蹴散らし、ガーサル領内へ突入した。
領地の奥にある砦は、現在地から500m程度先にある。更に砦の前には50m程の大きな橋がある。それらは目で確認する事が出来た。
しかしその前には、大量の魔物の軍勢が立ちはだかっていた。その数や迫力に、味方達の中には怯む者もいた。
すかさず師匠が喝を入れる。
ゲンジ「皆の者ぉぉ!怯むなぁ!!領地を奪われた屈辱!大切な者を奪われた悲しみ!死んでいった者達、ここにいない者達の想い!忘れるなぁァァッッ!!!」
一同「おおおおぅぅっっ!!!」
守「(凄い…………)」
師匠の喝により、俺達は士気を取り戻した。
「シシオウ、やっぱりあのジジイ、厄介だぞぉ。」
「……あぁ。ドグマよ。しかしあのジジイは、お前が言っていた、あの悪魔を討ち取ったクソキザ野郎と同等か……いや、それ以上の強さだ。それまでは敵を限りなく減らし、機を見る……………………うん!?
(……よく見たら…………なんでアイツがいるんだぁ!?パッとしない男!!パッとしなさ過ぎて気付かなかったぁ!あの致命傷を受けて生きてやがったか……!!
今度は…………確実に殺す!!!)
俺達は円陣を崩す事なく、徐々に砦へと近付いていった。ミズキやイース、ポー達の前衛の奮戦があり、師匠と俺達後衛はサポートをしつつ、前衛の間を潜ってきた魔物から補助班を守りながら、魔物達を排除していった。
ゲンジ「守よ!後方へ魔物が回り込んでいる!ワシは後方へのサポートに回る!」
守「分かりました!ここは任せて下さい!
……皆!砦まで着実に近付いている!!このまま陣を崩さずに、中央突破するぞぉぉ!!」
一同「おおおっっ!!」
ゲンジ「(最高の弟子よ。頼りになるわい。)」
そして俺は、前方に位置する後衛の指揮を取る事になった。
ミズキ「……水月刃!!」
ミズキは輝水刀で、水色の三日月型の斬撃を、次々に飛ばしていく。魔物達はその斬撃を、次々と喰らっていき、倒れ消滅していった。
イース「はぁぁっっ!」
ポー「オラァッ!!」
イースは白銀の息で魔物達の動きを封じ、ポー達はそれに続き魔物を蹴散らしていく。
戦況は俺達が優位に進めていた。
「丁度ジジイが離れて、パッとしない男が取り残されたな。」
「おぉん!クソ女とクソチビデブドラゴンもいるゾォ!やるか?シシオウ!」
「あぁ!この前と殺す分担は同じだ!前回は邪魔が入らなければ、お互いに奴らを仕留めていた!今回は邪魔になる奴は近くにいない!やるぞ!」
守「皆!踏ん張れ!……!危ない!はっ!」
俺の方は後衛の指揮を取りながら、守護壁術を駆使して味方を守っていた。
「ぐわぁっ!!」
「ぎゃぁっ!!」
守「(……数が多い!味方に被害が出始めている!)
大丈夫か!?」
「……おい。味方の心配をしてる場合か?」
守「……!(この声と気配……まさか!)」
直後、鋭い爪攻撃の連撃が俺を襲う。
守「はぁぁぁっ!!」
しかし俺は守護壁で、全ての斬撃を防ぐ。その攻撃主は、前回の防衛戦で相見えた……シシオウであった。
シシオウ「(全て防ぎやがった……前回よりも強くなってるのか?)……パッとしない男よ!何だその忌々しい壁は!?ジジイが出してたヤツじゃねぇか!……今度は確実に殺す!!」
守「あの時は大変だったよ……だが、前回と同じようにはいかない。お前を倒して、その先にいる親玉も倒す!!」
シシオウ「あぁ!?前回ズタボロにされたお前がか!?笑い者だな!ジジイがいなきゃ何も出来ねぇ虫ケラが!!
生まれてきた事を後悔しながら、血祭りに上げて、あの世へ送ってやる!!」
一方ミズキとイースは、前衛で奮闘していた。
ミズキ「イースちゃん!その調子!」
イース「はい!」
イースは白銀の息攻撃以外も、腕による重激で、魔物達を蹴散らしていった。魔物は皆、イースの一撃で倒れていた。しかし前方から、ある魔物が猛速度で、ミズキに突進してきた。
イース「!!ミズキさん危ない!!」
ガシッ!!
ミズキ「イースちゃん!」
「テメェ……止めやがったな!オレの全力の突進をぉぉ!!」
突進してきた魔物は、こちらも防衛戦で相見えた、ドグマであった。
ドグマ「オラァァァッッ!!!」
ドゴォォォォッッ!!
ドグマは右腕で、イースに重激を振り翳す。
イースは大きく後方に飛ばされたが、両腕で防御し、無傷であった。
ドグマ「今度は、クソキザ野郎の邪魔は入らねぇ!!クソ女とクソチビデブドラゴぉぉん!!テメェらは確実に殺す!!その後に残りの奴らを殺す!!」
ミズキ「やらせない!前回の様にはいかない!」
イース「貴方を倒し、領地を奪還します!」
ドグマ「はぁ!?テメェら何ほざいてんだぁ!!クソキザ野郎がいなけりゃ、俺に敵わなかったくせによぉ!!
まとめてぶっ殺してやるぅぅっっ!!!」
乱戦の中ではあったが、ドグマにはミズキとイースが、シシオウには俺が相対する形となった。
ここからガーサル領奪還作戦は、熾烈な戦いとなっていくのであった…………
…… 第五章 第四話へ続く




