第四章 第八話 ハンターへの想い
様々な修行に打ち込む中、非戦闘者が移転する日がやってきた。俺達は、酒場の移転の手伝いを行っていた。
店主「この間はお越し頂き、有難う御座いました。本日の移転のお手伝いに御協力頂き、感謝致します。」
ゲンジ「いやいや。こないだの料理や酒、美味かったぞ。今日は宜しく頼む。」
店主「とんでもない!こちらこそ宜しく御願い致します。」
ハンスは別件があり、師匠、ミズキ、イース、俺の4人で手伝っていた。テーブル、椅子、樽に酒瓶、食材などの大量の荷物を荷車に乗せて、サウスマンドの都まで運んでいく。
4人で協力しながらではあるが、大量の荷物を運びながら、長い距離を移動するのは重労働だった。
ミズキ「グヌヌヌ……これも良い修行ですね……」
イース「ミズキさん!頑張りましょう!……よいしょっ!」
守「1番の戦力はイースだな!俺も負けない様にしないと……」
ゲンジ「ワシも負けられないな!よっ!」
グキッ!!
何か変な嫌な音が聞こえた……音の元は師匠であった。師匠はうずくまっていた……どうやら腰を痛めてしまった様だ。
守「……荷物が一つ増えましたね。」
ミズキ「……ただでさえ重いのに……」
イース「頑張りましょう!ヨイショぉ!」
ゲンジ「……すまん。いえ、すみません……」
そのまま置いてきぼりにするわけにはいかないので、師匠も荷車に乗せ、俺達3人で頑張って運んだ。
約半日程でサウスマンドの都に着いた。中世の街並みであるが、臨時村とは雰囲気が一変して、各場所に店が立ち並んでおり、非常に賑わっていた。
入って暫くの所で、俺達は店主達の臨時住居場所に、荷物を置いた。
店主「本当に有難う御座いました。領地が奪還されたら、私達も復興のお手伝いをさせて頂きます。落ち着いたら、そこでお店を出そうと思います。その時は是非お越し下さい。」
ゲンジ「いやいや!何のこれしき!その時は是非宜しく頼む!楽しみじゃわい!」
守「……。」
ミズキ「……。」
ゲンジ「ナハハハ……例ならこの3人に言ってくれ!」
そして俺達は臨時住居場所を後にした。サウスマンドから出る途中、ハンターズギルド支部の前を通った。
ゲンジ「ここがハンターズギルドの支部じゃ。ハンターになる為には、ここで受付を行い、課せられた加入試験に合格せねばいけん。まぁ、頭の片隅にでも置いて貰ったらええ。」
ミズキ「…………。」
ゲンジ「ワシとミズキは中に用事があるから、オヌシ達は先に帰ってくれ。」
守・イース「分かりました!」
師匠達と一旦別れ、俺とイースはサウスマンドの都を後にした。
守「イース。サウスマンドの都は賑わってたな。」
イース「はい!ガーサル領が奪還されて、復興が落ち着いたら、また行ってみたいです!」
俺は、ある話を切り出した。
守「そうだな!……イース……実は、またここに来たら、ハンターになる事を考えているんだ。今磨いている力を、他の方達にも役立てていきたいと思っているんだ。」
イース「僕も実は……ハンターになりたいと思ってます!僕は種族の問題があって、試験を受けて貰えるかの問題がありますが……あと、ミズキさんは反対してますね……」
イースが悲しい表情で話した。ハンターになって、困っている、助けを求めてる方達を助けたい。そんな想いがあるのと、理解者である筈のミズキが反対している……その葛藤に囚われている様だった。
守「……そうみたいだな……。奪還が叶ったら、復興作業を手伝いながら、ミズキさんを説得してみよう!まずは目の前の奪還作戦を、一緒に頑張ろう!絶対に生き残らないといけないな!」
イース「はい!有難う御座います!絶対に皆さんで、生き残りましょう!」
将来の目標が出来るのは良い事だ。イースも笑顔を取り戻した様だ。……何としてでも、生き残らなければいけないな。
俺とイースは一足早く、臨時村へと着いた。
非戦闘者もそれなりの人数であった様で、村は静かになっていた。……後は作戦の最終準備に取り掛かり、決戦を待つまでだ。
朝早くから作業に取り掛かったが、荷物の搬送が半日近く掛かってしまった為、夕方過ぎの暗い時刻となっていた。俺とイースは家に戻り、瞑想訓練を行なっていった。
暫くすると、師匠、ミズキ、ハンスが帰ってきた。
夕食時は師匠が腰を痛めてしまい、足手纏いになってしまった事などが話題となり、談笑が弾んだ。
ゲンジ「あの手の作業は、武術とはまた違うからのぉ……参ったわい。」
ハンス「皆さんお疲れ様でした。私の方は、他のハンターにも協力を貰いながら、奪還作戦を練り上げていました。」
今残っている臨時村の者を集めて、明日作戦会議が開かれる。そして作戦決行日はその2日後の……明々後日となる。皆には既に声を掛けてあるとの事だった。
ハンス「今回の総司令官も、老師に御願いしようと思うのですが、如何でしょうか。」
ゲンジ「うむ……今回はハンスに、総司令官を御願いしようと思ったのじゃが……オヌシはダラスに目をつけられているじゃろう。分かった。総司令官の立場、全うしようぞ。ハンスは副総司令官に就いてくれるか。」
ハンス「はい。承知致しました。」
そして、前衛のリーダーにはミズキ、ポーのダブルリーダー、補助班のリーダーは前回と同じ者に御願いするという。更に……
ハンス「守さん。貴方にも後衛のリーダーに就いて貰います。貴方の卓越した守備力と、敵に立ち向かっていく胆力、強く優しい心と器の大きさ……リーダーに相応しい。老師も後衛にいるので、共に皆を守り、導いていって下さい。」
なんと、俺が後衛のリーダーを任される事になった。前回のメンバーはかなりいるものの、前回はかなり前衛にいる時間が長く、途中から1人でシシオウと戦闘に入っていた為、後衛で戦っていた感覚はあまりなかった。
ハンス「ただ、今回は防衛戦以上の乱戦が予想されます。後衛と言っても、前へ出る機会はより多くなると思います。」
守「……分かりました。責務を全うさせて頂きます。」
こうして、明日は奪還作戦会議が開かれる事になった。また奪還作戦の決行日も決まり、決戦の時は、すぐそこまで来ていた……
…… 第四章 第九話へ続く




