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第四章 第六話 恩人


 ゲンジ達との慰労会で、ゲンジに誘われて外に出た。

 そこで、俺が弟子入りを志願した時に言った、ここに来る前の話を皆にしてはどうかと提案された。



ゲンジ「あの時にも言わせて貰ったが、皆なら、守の良い理解者になると思うのだが……どうじゃろうか?」


 正直、暗い話になってしまうのは明らかだ。

 だが、皆もう苦楽を共にした、大事な仲間だ。ゲンジも大事な師匠であり、まだ詳しく俺の過去については話してなかった。

 ……良い機会だと思った。


守「……暗い話になっても皆さんが良ければ、話したいと思います。」


ゲンジ「うむ。では席に戻り、皆に話してやってほしい。オヌシの事を。」







 そして、ゲンジと俺は皆のもとに戻った。


ミズキ「あっ!おかえりなさい!」

イース「おかえりなさい!」


ゲンジ「うむ。守よ……良いか?」


ミズキ・イース「?」


守「はい。皆さんには、俺の過去についてお話してなかったですね。暗い話になってしまいますが……それでも良ければお話したいと思っています。」 


 俺はイースと同じく、ここに来る前の記憶がない体で接していた為、ミズキとイースは驚いていた。ハンスは何となくであったが、この事を想定していた様だった。


 皆、俺の過去について知る事を、了承してくれた。


守「有難うございます。ここに来る前の事を、お話させて頂きます。」





 


 そこからは、俺が違う世界の住人であった事、両親が殺された事、復讐の為に暗殺者組織に入った事、ミズキによく似た水音(みずね)という同僚がいた事、兄の様な存在であった雷鳴(らいめい)が両親を殺害した犯人であった事、親友であった翔と戦った事などの話をした。

 更に翔との戦いで死んだと思われたが、こちらの世界に転移して、イースやゲンジ達と会った事を話した。

 

 


イース「(両親が…………守さん、大変辛い目に合われたんですね……)」

 

ミズキ「(水音……私と似ている…………偶然よね………)」


ハンス「(雷鳴か……あの件と関わりが……?何か引っ掛かるな……)」

 

ゲンジ「(……やはり特殊な組織、しかも暗殺者組織の者だったか……。そして親友と刃を……これは運命なのかもしれん……)」


 俺が異世界の住人であった事に驚きながらも、4人は頷きながら、真剣に俺の話を聞いてくれた。所々で、4人の思いが一際強く感じられる所はあったが、俺は全てを話し終えた。



 




ミズキ「守さん……本当に辛く、大変な思いをされてきたんですね……」

イース「守さん……」

ハンス「守さん。話してくれて有難う。」

ゲンジ「本当に良く、ここまで来てくれた。良くぞ心を強く持ち、乗り越えてくれた。やはりワシが確信していた通りじゃ。」


 4人が俺にいたわり、ねぎらいの言葉を掛けてくれた。しかし俺は……


守「…………ですが、両親を殺した雷鳴に復讐したいという心が……消えないのです。こんなに素晴らしい仲間達や師匠に巡り会えたのに……なんて私は自分勝手なんだろうと、つくづく思わされます……」


 それに対し、ゲンジはこう答えた。


ゲンジ「……守や。誰でも大事な者を奪われれば、復讐心という憎しみの心は、湧き上がってくる。奪われた者が大事な存在であればある程、その憎しみの心は強い物となる。それだけ、両親の事が大事な存在だったんじゃろうて。」


 ゲンジは話を続ける。


ゲンジ「守が抱えている復讐心は、簡単には消えない物じゃろう。今は、目の前の仲間や大事な者を守る……それを考えて貰えれば、それで良い。会ったばかりの時は確かに心を閉ざしておったが、今は大事な者を守る為に、オヌシはこんなにも努力しておる。

 復讐心を持ったままでも……今はそれだけ考えて貰えれば……それだけで充分なんじゃよ。」


守「ゲンジさん…………」


 俺は感謝の心で胸がいっぱいになった。


 


ハンス「守さん。話してくれて有難う。貴方の胸の内、確かに聞かせて貰った。復讐心を持ったままでも、貴方の強く優しい心は変わらない。皆を守る為に、また一緒に頑張ろう!」


ミズキ「守さんの心の強さと優しさの源は、その御経験があり、それを乗り越えられた事にもあるんですね……辛い体験をお話して頂き、有難うございます。微力であり、僭越ではありますが……私も助力したいと思っています。何かあったら、いつでも言って下さいね!また一緒に頑張りましょう!」


守「ハンスさん……ミズキさん……」


イース「守さん……僕は守さんに沢山助けて貰いました。そして今は一緒に修行を頑張ってる……僕の大事な兄弟子です。防衛戦の後、僕はもし守さんがいなくなってしまうと思ったら……もう僕は……僕は…………」

 

守「イース……」


 ミズキは涙ぐみながら、イースの身体をさすって、なだめてあげていた。


ミズキ「イースちゃん……」


イース「ミズキさん、有難うございます……。本当に守さんが無事で良かったです。守さんは両親が亡くなった時、こんなに辛い思いをしたのかと……そんな辛い体験をお話して下さって、有難う御座います。僕に出来る事はないかもしれませんが……また兄弟弟子として、そして仲間として、これからも宜しくお願い致します!」


 

 ……暗い話になってしまったけど……皆に話して良かった。本当に良い仲間達、師匠に巡り会えた……


守「ゲンジさん、ハンスさん、ミズキさん、イース。皆さん有難う……有難う御座います!皆さんは……私の恩人です!!未熟者ではありますが……これからも宜しくお願い致します!!」


 復讐心は未だに消えないけど、目の前の人達や仲間を守る為に、また頑張っていこう……改めてそう決意した。


ゲンジ「守よ!こちらこそ改めて宜しくな!では、ここにいる最高の仲間達で、盛大に飲もうじゃないか!」

一同「はい!!」









 俺達は盛大に飲んだ後、帰路に着いた。

 家に着いて、暫くするとゲンジが外へ出て風に当たりに行くと行って、家を出た。ゲンジについて行く様に、俺も外へと出た。




守「ゲンジさん……先程のお言葉……心に沁みました。最初に俺を助けて貰ってから、今まで本当に……何から何まで有難う御座いました。」


ゲンジ「いや、気にせんでくれ。ワシもオヌシと出会えて、本当に嬉しく思う。この位の事はさせてくれ。」


 俺はゲンジに頼み事をした。


守「ゲンジさん……貴方は私の恩人でもあり、大事な師匠でもあります。ゲンジさんの事を……師匠と呼ばせて頂いても宜しいでしょうか。」


ゲンジ「……!……はっはっはっ!今更じゃな!……良いに決まっておろう!!」


イース「僕も……僕も師匠と呼ばせて頂いても宜しいでしょうか!」


 俺達についてきたのだろうか、いつの間にか、イースもその場にいた。


ゲンジ「おぉ、イースか。イースも良いに決まっておろう!師匠……良い響きじゃあ!ハッハッハッ!」


 ゲンジは大変喜んでいた。俺もイースも安堵しながら、喜んだ。


ゲンジ「……そうじゃ!オヌシ達が師匠と呼んでくれるのじゃから、ワシも名前以外で呼びたいのぉ!

 ……守は……最高の弟子じゃ!……イースは……愛弟子じゃ!」


守「最高の弟子……」

イース「愛弟子……」

守・イース「良い響きですね!!」

守「……でも俺の方はちょっと長いかもしれません……戦闘に入ったら不便では……」


ゲンジ「まぁ気にするな!上手く使い分けるわ!」





 


 そんな中、ふとイースが寂しそうに、あるいは不安な趣で、口を開く。


イース「守さん……あの時お話して頂いて、有難う御座います。皆さんは恩人だと仰られていましたが……師匠やミズキさん、ハンスさんは修行をつけてくれたり、助けてくれたりしたので分かりますが……僕は助けられてばかりで……」


 俺は師匠と目を合わせた。師匠は……おそらく分かっているだろう。


守「イース……。お前も俺にとって恩人なんだよ。俺は復讐が叶わない事を悟り、絶望していたんだ。そんな時、お前の澄んだ優しい心が……俺の心を救ってくれたんだ。お前がいなければ、今の俺は未だに絶望していたままだった。

 俺の心を救ってくれて有難う。イース。」


イース「守さん…………うぅっ。……こちらこそ……です……」


 イースは大粒の涙を流した。俺はイースを抱きしめた。

 師匠は笑顔で微笑ましく、頷いていた。


ゲンジ「最高の兄弟弟子じゃ。これからも一心同体じゃ。お互い助け合い、精進し合うのじゃぞ。」


守・イース「はい!!」



 


ゲンジ「そこでじゃ……明日はワシと手合わせしてみるか?ミズキやハンスとは手合わせしていたが、ワシはまだじゃったからな!どうじゃ?」


 俺たちは驚きながらも……二つ返事で答えた。

 思わぬ形でとなったが、明日師匠との模擬戦が行われる事が決まった。


 




 


ミズキ「……これで3人は真の師弟関係になれましたね。……何だか……良いですね。羨ましいけど、私達にもそれぞれ師匠がいますもんね。」

 

ハンス「あぁ、そうだな。微笑ましくなるし、羨ましくもなるな。だが、俺達5人の関係は……大事な仲間達って事は、変わらない。」


ミズキ「ふふっ。そうですね。私達は……大事な仲間達です!」



 ハンスとミズキは家の入口から、俺達の事を見守りながら、その様に呟いたのだった。


 


 


 




             …… 第四章 第七話へ続く



 



 

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