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第四章 第二話 第三の強敵


 ポー達と和解した翌日、夕方にゲンジとハンスが帰ってきた。

 夕食は久々に5人で取ることになった。そこでミズキはポー達と和解した事……そして俺が例の約束を取り付けた事を、ゲンジとハンスに報告した。


 



ミズキ「お二人とも優しすぎるんです。……でもそんな優しいお二人と出会えて……良かったと思います!

 ……ただ、守さんがいきなりあんな事を言うとは驚きでした……。」


ゲンジ「はっはっはっ!子分の1人をイースが助け、守が励ましていた時は、最高な気分じゃったが、まさかポーとも和解するとはのぉ!あっぱれじゃな!流石我が弟子じゃ!その殴り合いとやら……ワシも楽しみじゃわい!」


ハンス「本当にそうですね。……この和解は、今後の戦力や連携を考える上でも、非常に大きいです。結束力というのは、集団戦にとって不可欠な物ですから。二人の戦いを見る為にも、領地奪還必ず成功させないとですね!」


守「お二人とも楽しみにしていて下さい!あの時の借りは、拳で返させて貰います!

 ……ポー達も色々な思いを抱えていました。酷い事ばかりされましたが……今は共に戦う仲間です。

 ……ところでハンスさん、今後の予定としては……やはり我々が領地に出向く形になるのでしょうか。」


 俺はハンスに、今後の展望を質問した。





ハンス「そうだね。なるべく早く且つ着実に、戦力を補充して整えて、総力戦でガーサル領奪還作戦を決行しようと考えている。」


 続けてハンスは、総力戦で挑む間、臨時村が非戦闘者だけとなり、奇襲を受けたら、その人達が皆殺しにされる危険があると述べた。

 そこで、奪還作戦の準備を進めつつ、非戦闘者はサウスマンドの都への移転の準備を行う。作戦の準備と、非戦闘者の移転が完了したら、いよいよ総力戦で、ガーサル領奪還作戦を開始するとの事だった。


守「了解しました。私達も更に強くなって、奪還作戦では借りを必ず返します!特にシシオウには借りがあります……なので、必ず勝ちます!」

 

イース「僕も強くなります!ドグマさんと戦ってる時は怖かったけど……僕もやられたままでは終われません!」


ミズキ「私もです。あの時何が足りなかったか……答えは出つつあります。私も修行して、強くなります!」


 


 


 3人は決意を新たにした。するとゲンジは考え込んでいた。


ゲンジ「(おそらく、相性的には分担を変えた方が良いのもあるが……シシオウの咆哮には、恐慌状態を付与してしまう事も分かった上では……やはりそれを克服した守が適任か。

 ドグマに関しては……ミズキがおそらく戦い方をはじめとして、修正点を見つけたのじゃろう。)」


ゲンジ「分かった。シシオウには守と……ワシがつこう。ドグマにはミズキとイース……出来ればハンスもつくと確実なのじゃが……恐らく難しそうじゃな。」


守「難しい?……そういえば、防衛戦の時に、ハンスさんが助けに来てくれたと聞きました。何故ハンスさんはあの時、助けに来る事が出来たんですか?」


ハンス「守さんには話してなかったね。すまない。実は注意するべき魔物は、シシオウとドグマだけじゃないんだ。」


守「えっ!?」







 


 


side:ハンス


 話は防衛戦の時に遡る……。

 俺は老師達と別れてから、臨時村の近くで待機していた。老師から戦況は有利に進んでいると報告を受けてから、間もない時だった。


 一羽の大きいコウモリが、村の方に向かって飛んできた。そのコウモリには膨大な魔力を感じられた為、注意深く観察していると……身体には禍々しい紋章が見て取れた。


ハンス「怪しいな……進路を遮るか。」


 俺はコウモリの進行方向に苦無を投げ、風の結界術を張り巡らせた。すると、コウモリは結界の前で止まり、こちらへと向いた。

 

「流石ですね。バレてしまいましたか。」


 コウモリは地上に降り立つと、みるみる内に変身した。その魔物は漆黒色をした、2m程ある人型の悪魔の様な魔物だった。


「どうも。私はワイドネス様の側近、ダラスと申します。ふむ……貴方はニンジャの類ですかね。……私が嫌いな人種です。ニンジャは勘がいい……勘のいい人間は嫌いなんですよ。人間を騙す事が、私の至福の一時なのに……」


ハンス「やはり魔物か。随分とお粗末な変装だったよ。それにコウモリはこの辺りにはいないから、俺でなくても怪しいのは分かるよ。」


ダラス「ハッハッハッ!本当に私が嫌いなタイプですねぇ!では、遠慮なく殺してさしあげますよ!」





 

 そう言うとダラスは、両手で黒い球体を作り出し、俺の方へと放出した。恐らく闇属性の魔法だろう。


ハンス「(魔法を使う魔物か。)風遁・風刃玉(フウジンギョク)!」


 俺は風の球体を作り出し、黒い物体を掻き消した。物体は黒い大きな煙となって、辺りを立ち込めた。

 俺はその間に、無線貝で老師や他のハンター達に、奇襲を掛けた魔物と交戦中だと報告した。

 その後黒い煙は消えたが、そこにいた筈のダラスの姿が見えない。


ハンス「……!!」


 俺の背後に魔法陣が出現しており、ダラスは魔法陣の中から飛び出していた。直後ダラスは、腕に剣の様な形をした、漆黒のオーラを纏わせ、俺に攻撃した。

 俺は気配を察知していた為、苦無で攻撃を防いだ。


ダラス「素晴らしい。だがこれは受けではダメですよ。避けないと……」


 漆黒のオーラは俺の身体に纏わりつき、俺は呪いが掛かったかの様に崩れ落ちた。


ダラス「このオーラは呪いを付与する物なのです。オーラは私の意のままに。変幻自在なのです。それでは殺してあげますね。」


 ダラスは俺の身体目掛けて、剣状のオーラを突き刺していった。俺の身体が貫かれた時……俺は消えた。



 


ダラス「……なに?」

ハンス「……」

ダラス「!!」


 俺はダラスの背後を取っていた。そしてダラスの頭目掛けて、苦無を突き刺そうとした。

 だがダラスは魔法陣を使い、緊急脱出し、難を逃れた。


ダラス「分身の術と、隠れ身の術……でしたかね。やはり私の嫌いな人種です。」


ハンス「そのお陰で、アンタの対応方法まで教えて貰ったよ。」


ダラス「対応方法?面白い事を言いますね!所詮は人間。か弱い存在。捻り潰してくれましょう!」







 そう言うとダラスは、漆黒のオーラを全身に纏わせ、真正面から急加速で、俺の方へと向かってきた。


ハンス「(速い!)」

ダラス「死ねぇっ!」


 ダラスが剣状のオーラを纏わせた右腕で、攻撃を繰り出す。俺はそれを間一髪で躱した。


ダラス「これならどうです!」


 今度は左腕で、オーラを広い範囲で放出してきた。たちまちオーラは俺の周りを取り囲んだ。


ダラス「それでは喰らいなさい!」


 ダラスが左手を握ると同時に、オーラは俺を丸め込む様に小さくなった。


ダラス「……。また変わり身と分身ですか。」

ハンス「…………」


 俺は先程と同じ様に苦無を、ダラスの背後に周り、ダラスの頭に刺し込もうとした。


ダラス「今度は逃げませんよ!」


 ダラスは後ろへ振り向き、俺の肩を掴むと、闇魔法を俺に浴びせていった。しかしそれは俺の分身であり、俺はダラスから離れた位置に立っていた。


ダラス「……また分身ですか。手が込んでますね。……いや?これは、ただの分身ではない……!?」


ハンス「御名答。水遁・分身水爆破(ブンシンスイバクハ)!」


 分身が闇魔法を浴びた直後、俺は強く念じ、分身を水蒸気爆発させた。爆発の瞬間、ダラスは魔法陣による緊急脱出をしていたが、爆発による身体の損傷を負っていた。


ダラス「面白い。私は今貶されている気分です。非常に気分が悪い……楽には死なせてあげませんよ……」







 そう言っていたダラスであったが、ふと驚いた様な顔をしたと思うと、遠くにいる誰かの話を聞いている様に見受けられた。

 

ダラス「……!ネズミが入り込んだと?……分かりました。戻らせて頂きます。……シシオウ達はそのまま攻め込ませると……了解致しました。」



 どうやらスコットとケニーが上手くやってくれたらしい。防衛戦が開始されたら、手薄になっている領地に、混乱を生じさせる為に、爆発を起こして、すぐに帰還する様に伝えていた。


ダラス「あのバカ2人達に任せてはおけませんので、今回は私は別口から村を襲撃しようと思いましたが……思わぬ邪魔が入りましたね。今度会う時は貴方の命日となりましょう。それでは……」


 そう言うとダラスはコウモリに変身し、遠くへと飛び立った。




 

 



 直後、老師から無線貝での連絡が入った。

 老師はシシオウとドグマに大きく吹っ飛ばされ、守さん達と離れてしまった。守さん達は今、シシオウ達と交戦中だと。

 直前まで魔物はダラスの気配しかなく、既にその気配も殆ど感じ取れない距離にあった。


 老師と、待機している他のハンターに防衛戦の加勢に入ると報告し、俺は急加速して洞窟へと向かったのだった。






 




             …… 第四章 第三話へ続く




 

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