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第四章 第一話 和解

今回から、第四章に入ります。


 臨時村防衛戦は、辛くも俺達の勝利に終わった。

 俺は生死の境を彷徨ったが、ゲンジ達の治療や看護の甲斐あって、一命を取り留める事が出来た。

 そして、師匠や仲間達の想いに触れ、俺は号泣した。

 ……泣いたのは、両親が亡くなって以来だった。


 


 

 


 防衛戦参加者の約100名のうち、俺を含む超重症者は3名だったが、迅速な応急処置や臨時村での治療の甲斐あって、残り2名も一命を取り留める事が出来た。

 

 ……だが、12名の参加者が命を落とす事になった。

 まだ修行が出来ないが歩ける位に回復した俺は、亡くなった方達のお墓の前に座り、供養した。


守「(守る事が出来なくて、申し訳ありませんでした。必ず祈願は果たすので、見ていて下さい……。)」


「(あいつは……動ける様になったのか。…………。)」






 ゲンジとハンスは防衛戦で失ってしまった戦力の確保、更に物資の調達の為、臨時村から離れたサウスマンドという都に出払っていた。

 ミズキとイースは重傷者ではあったが、かなり動けるまで回復していた。

 俺達3人、家で昼食を済ませた後の事だった。突如男の声が聞こえた。


 



 


「すまない。話をしたいのだが……良いだろうか?」


ミズキ「……この声は!?」


 家の出入口前に、ポーと子分達が立っていた。


ミズキ「守さん、イースちゃん……どうしましょう……?」


守「防衛戦でポーは手下を失っています。……おそらくもう敵意はないかと。俺とミズキさんで出ましょうか。」


イース「守さん……僕も出ます。」

 

ミズキ「……イースちゃん。良いの……?」


イース「あの時の事は……今思い出すだけでも怖いです……。ただポーさんは戦いの直前、名前で呼んで下さいました。仲間の方がお亡くなりになってしまい、悲しんでおられると思います……。」


守「分かった……。」

ミズキ「イースちゃん……。」


 俺とミズキは、イースの頭を撫でた。






 そして3人でポー達の前へと赴いた。


守「……今回の件……残念だったな。あと……助ける事が出来ずに、申し訳なかった。」


ポー「いや、とんでもない……。助けられなかったのは、俺も同じだ。……ただ、あんなバカな奴等でも、俺にとっちゃ仲間だったんだ。俺達は魔物達に故郷を奪われた、親族や頼れる人がいない……はぐれ者だったんだ。」


 ポーはそのはぐれ者達を寄せ集め、ガーサル領を根城として生活していた。しかし、例の魔物達が領地を奪っていった。ポー達は魔物達に2度も、住む場所を奪われたのだ。


ポー「親族や友人は死んだ。そして仲間達も次々に死んだ。1度ならず2度までも、俺は大事な物を魔物に奪われたんだ……そして今回の戦いでも………………だが、」



 そう言った直後、ポーは俺達の前に土下座した。


ポー「そんな理由で、あんな暴力を振るってしまったのは間違いだった!!イースは俺の手下を助けてくれた!魔物達の仲間だったらあんな事は絶対にしねぇ!!姿、形で判断して、俺達は取り返しのつかない事をしてしまった!!」


 手下達も次々と土下座した。


手下「あの時、イースさんが助けてくれなかったら、俺は死んでました!そして守さんにも、励ましてもらいました!俺達は沢山傷つけてしまったのに……本当に申し訳ありませんでした!!」


ポー「どんな罰を受ける覚悟は出来てる!こいつらもそのつもりで来ている!俺の事は殺しても構わない!!

 だが……だがどうか!こいつらの事は生かしておいてやって下さい!!」


手下「親分………」



 ポーは非常にプライドの高い筈の男だ。にも関わらず、土下座をして、この様な御願いを申し出るまでするとは……


ミズキ「…………」

守「……イース。どうしようか。イースが1番の被害者だよな。」

イース「僕は…………この人達に罰を課す事は出来ません……だってもう共に戦った仲間ですから……。」


ポー「!!」


イース「それにこうやって謝罪までして頂けた……もう僕には充分すぎます……」

守「……お咎めなしって事かな。」

イース「はい。すみません、勝手に決めてしまい……ただ守さんは僕を守る為に、ボロボロになってしまいました……守さんは宜しいですか?」

守「俺はイースが良いのであれば、良いよ。」

イース「すみません。……有難う御座います。」

ミズキ「イースちゃん……守さん……」



 ポーが大層驚いた顔で、こちらを見上げる。


ポー「なっ……こいつらにも聞いたが、俺も含めてあんな……あんなに酷い事をしたんだぞ!?それをお咎めなしだなんて……そんな事が……そんな事があるのかぁ!?」

守「諦めろ。イースはこういう奴なんだ。無闇に他者を傷つけられない、物凄く……物凄く優しい奴なんだよ。」

ポー「くっ………………くぅっ…………。本当に……本当に申し訳ありませんでしたぁ!!」

手下「申し訳ありませんでしたぁ!!」



 ポーと手下は崩れ落ちながら涙を流した。

 ……ポーの状況は俺の時と似ていた。俺は両親の復讐の為に生きてきた。だがポーは同じ境遇の者達を寄せ集め、助けていた。周りから見れば悪でも、少なくとも仲間達にとっては、大きな存在だったんだなと。







 


 ……そうだ。俺は一つ思い出した事があった。俺にとっては物凄い重要な事だ。ポーと約束しないと。絶好の機会だ。このままじゃ終われないんだった。



守「……あっ!そうだ!ポー、俺と殴り合ってくれ!!お前の仲間達の前で!」

ミズキ「……!?(……守さん?このタイミングで……?)」

イース「……!?守さん!?」

ポー「あぁ!……て、えぇ!?殴り合う!?」


 

守「あの時俺ボコボコに負けたからなぁ!悔しいんだよ!だけど、誰も見てないとお前絶対負けようとするだろ?全力で戦って貰いたいから、お前の仲間達に立会人になってもらうんだよ。

お前は親分だ。仲間達の手前、無様な負け方は出来ねぇだろ?

 

 ……だからポー、皆。それまで死ぬんじゃねぇぞ。」



ポー「…………守。お前ってやつはぁ…………!分かった!!その挑戦受けるよ!!お互い生き延びて、その時は戦って気の済むまで殴り合おう!!」

手下「楽しみです!!……ヒック……俺達、それまで死にません!!」



ミズキ「あわわわ……私もその時は必ず立ち会いますよ!心配です……!」

イース「僕も……僕も立ち会います!!お二人の勇姿を見届けます!」



守「じゃあここにいる皆揃って……だな!出来ればゲンジさんとハンスさんも立ち会ってくれたら良いな!

 そう言うわけなので…………皆!必ず生き残ろう!!!


一同「おぉぉっ!!!」



 



 


 こうして俺達とポー達は和解する事になった。

 

 そして俺にとっては重要な約束も取り付ける事が出来た。俺以外の人達にとっては些細な事になるんだろうけど……皆んなが生きる理由の一つにでもなってくれると良いなと……そんな風に思っていた。




 



 



             …… 第四章 第二話へ続く




 

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