表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Revenge(リベンジ) 〜「元暗殺者」による異世界救済 〜  作者: goo
第三章 臨時村防衛戦
27/88

エピソード 守④ 「おかえり」

守エピソード編、続きです。


 2年で初の公式戦敗退後、俺は更に練習に打ち込んだ。

 ただ闇雲に……ではなく、負けてしまった試合での反省点を活かしながら。


守「あの時はただ闇雲にパンチを振るっていた。ボディは的確に当たっていた様だったが、右腕のガードが下がってた所を狙われた……」


 基本に立ち返り、左ジャブからパンチを一つ一つ磨いていった。また、足捌きやガード、パーリング、スウェーバック等ディフェンス技術も磨いていった。


守「あの時、攻撃も守りの技術も遠く及ばなかった……。

 毎日積み重ねて着実に強くなってやる!」


 毎日毎日、練習を積み重ねた。身体も頭もフル稼働して、ボクシングに打ち込んだ。3年生が引退し、キャプテンに任命されてから、後輩の指導をしながら、自分の練習も怠らず励んでいった。

 心が沈んでいる時には、部屋にある「Revenge(リベンジ)!!」と書かれた大きな文字を見て、奮起していた。







 そして遂に俺が3年生として、最後の公式戦の日となった。偶然なのか……昨年の全国インターハイ準優勝者で、昨年県予選1回戦で俺が負けた相手でもある……西城蓮生(さいじょうれんしょう)が、またしても1回戦で当たる事になった。

 

守「……偶然か。必然か。いずれにしても西城さんとのリベンジのチャンス!……絶対に勝ってみせる!!」



 試合前日、両親と3人で夕食を取りながら、話した。


父親「いよいよだな。この日の為に頑張ってきたんだよな。悔いがない様に、練習の成果を相手に全力でぶつけてこい!」

母親「無事に帰ってくる事が一番……でも、お父さんの言う様に悔いのない様に頑張ってね!」


守「うん!有難う!全力で頑張るよ!!練習の成果を全部出して、絶対に勝つよ!!」





 

 


 そして再戦の日を迎えた。俺は深呼吸してリングへと上がった。西城の方は一度勝った相手というのもあり、リラックスしていた。


守「(……とにかく、今までやってきた事を全力でやる!)」


 試合開始のゴングが鳴らされた。

 西城は前回と同様にガードを固めてきた。それはこちらも織り込み済みだ。俺はボディへの連射を見舞っていった。


西城「(前回と攻め方が違う!?しかし顔面がガラ空きだ!)」


 西城は俺の空いた顔面に、左フックのカウンターを合わせようとする。しかし俺は先読みし、ダッキングで躱す。そこから右アッパーを西城の顎に見舞っていった。


西城「!!(ガードを下げていたのはワザと……!?

 前回とは別人だ!1年前と同じだと判断するのは危険だ!本気でいく!)」


 西条は適応能力にも優れていた。すぐさま左ジャブを連射しながら、ステップを使っていくアウトボクシングに切り替えた。

 俺はパーリングやガードで防ぎながら、こちらも左ジャブの連射を繰り出していく。その攻防の中、1R目が終了した。






 続く2R目、西城は左ジャブに加え、右も使いながら、攻撃の角度を変えてきた。変幻自在の拳に、俺は徐々に喰らってしまう様になる。

 だが突如として、西城の拳が急激に遅くなる。


守「!!(チャンスだ!)」


 西城の左ストレートに右クロスカウンターを捩じ込もうとした。だが西城の左拳は途中で止まってしまい、西城は顔面を横へとズラし躱す。


西城「(エサに引っかかったな。)」

守「!!(……しまった!罠か!)」


 気付いた時には遅かった。俺は右ストレートのカウンターをモロに浴びてしまった。


守「……!ならば!」


 1R目の様にボディで、相手のフックを誘って、ダッキング後に右アッパーを捩じ込もうと試みる。

 予想通り西城は左フックのカウンターを繰り出した。俺はダッキングで躱そうとしたが、左フックは下斜めから突き上げる様に、軌道が変化していた。

 斜め下から突き上げる……「スマッシュ」パンチだ。


守「!!」


 そのスマッシュは直撃し、俺はマットに沈み込んでしまった。


 


守「(やはり向こうが何枚も上手……しかし、諦めない!)」


 俺はすぐさま立ち上がり、目力でレフェリーに訴えかける。試合は続行された。

 練習の成果から、倒れてからも幾分は動けたが、試合は西城ペースとなっていった。ここで2R目が終了となった。



 

監督「北条!大丈夫かぁ!」

守「はい!大丈夫です!やっぱり西城さんは強いですね!」

監督「そんな西城選手と渡り合ってるお前も凄いぞ!練習を頑張ってたのは、周りの皆も見てる!お前の集大成、見てやれ!」

守「はい!(このラウンドで全てを出し切る!)」




 



 そして3R目。最終ラウンドが始まった。

 俺は左ジャブにフック、右ストレートにフックやアッパー、ボディブロー等、あらゆる攻撃を繰り出した。


西城「(やはりこの選手、気持ちが強い!だが、見切れない速さではない!)」


 西城は俺の様々な攻撃を防ぎ、見切り、遂にはカウンターを取っていった。俺は何とか踏ん張って耐えていたが、時間は刻々と迫る。判定に入ってしまったら、確実に西城が勝利する事は目に見えている。


守「(西城さんは俺の攻撃に合わせて、的確にカウンターを入れてくる…………ならば!覚悟を決める!)」




 残りあと10秒を切った時だった。俺は大振りの右フックを振っていった。


監督「あぁ!最後は大振りにぃ!!まずいぃぃ!!」

西城「(右!しかも大振りだ!右ストレートのカウンターを取る!)」

守「(……昨年と同じ……予想通り!ここだぁ!!)」

西城「……!!」


 西城が右ストレートを繰り出したと同時に、俺は前進した。顔面には直撃したが、インパクトポイントをずらし、威力を半減した。

 俺は同時に右腕を畳んで、ストレートの軌道に変化させた。その右ストレートを、全体重、全身全霊かけて、西城の顔面へと繰り出していった。


西城「(しまった!!……だが、負けるわけには……負けるわけにはいかないんだぁぁ!!)」


 捨て身の攻撃は西城の顔面を捉えた。……しかし西城は額の所で拳を受けて、威力を軽減させていた。


西城「(……!視界が……歪む……!?……まずい!!)」


 西城は額で拳を受けたが、立つのが精一杯の状況だった。


守「(今だぁぁ!!)」


 俺は追撃の左フックを見舞おうとした……

 しかし次の瞬間、無情にも試合終了のゴングが鳴り響いてしまった。俺は左拳を、西城の顔面手前で止めた。直後にレフェリーが割って止めに入った。


 





 ……判定はダウンを取り、ヒット数で上回った西城の勝利となった。周りに歓声が湧き上がった。

 俺の最後の公式戦は……1回戦判定負けの結果に終わってしまった。


 直後、俺は西城の元へ駆け寄った。


守「今日は有難うございました!やっぱり西城さんは強かったです!完敗です!」

西城「……そんな事はない。あんなに覚悟を持った拳は初めて受けた。額で受けたのに効いたよ。しかも最後の左フック……止めてなければ、俺は間違いなく倒れていた。振り切れば君が勝っていたかもしれないのに……。」

守「あの時は何とか止まりました……終わりのゴングが鳴った時点で、試合は終了ですよ!」



 そんな時歓声の中、一際大きな声がした。


父親「守ぅぅぅ!!良く頑張ったよお前はぁぁ!!流石は俺の子だァ!最高だよお前はぁぁぁ!!!西城選手も有難う御座いましたぁぁ!!」

母親「ちょっと……人前よ。抑えて……でも良く頑張ったわね守。心配で心配で……」

守「……父さん!母さん!」


 その直後、西城へだけでなく、俺への歓声も上がっていった。


西城「……これじゃぁ、どっちが勝者か分からないな。君は高校卒業してもボクシングを続けるのかい?」

守「高校で辞めようと思います。高卒で社会人になろうかと。今叫んでるのが父親で隣が母親なんです。2人を早く楽にさせたくて。」

 

西城「そうか。君とは是非プロのリングで……と思ったが……。仕方ないな。」

守「西城さん……。僕は1年前に負けたからこそ強くなれました!本当に有難う御座いました!」

西城「……あぁ!必ず全国優勝して、一番強かったのは県予選一回戦で当たった、北条守選手だったと言わせて貰うよ!こちらこそ今日は本当に有難う!」

守「はい!応援してます!有難う御座いました!」


 俺と西城は握手を交わした。大歓声の中、俺の最後の公式戦は終わったのであった。








 



 試合後、監督にもお礼の挨拶を行い、帰路へ着こうとした時だった。両親が迎えに来てくれた。

 人目もはばからず、2人は泣きながら俺を抱きしめた。


父親「守ぅぅ!!よくぞ無事に戻ってきたぁ!正直滅茶苦茶心配だったんだぁ!!」

母親「うぅ……守……守ぅぅ!!」

守「ちょっと父さん、母さん……もう俺高校3年生だよ……流石にこれは……」

両親「無事で良かった!良かった……!」

守「恥ずかしいけど……ありがとう!!」




 こうして、俺の高校ボクシング生活は幕を閉じた。


 リベンジはならなかったけど、悔いはない。俺は強い相手に立ち向かう心、負けても挫けない心を手に入れる事が出来た。

 何より、今まで支えてくれた両親に、早く恩返しをしたい気持ちであった。感謝してもしきれない位だ。






 

 


両親「守ぅ!……おかえりぃぃ!!!」

守「うん!……ただいま!!!」





 

 

 



             …… 第三章 第十話へ続く



 

守エピソード編でした。

次回から本編に戻ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ