第三章 第九話 防衛戦終幕
ミズキとイースはドグマと相対し、窮地に立たされていた。そんな時、駆け付けたのはハンスであった。
今度はドグマとハンスが相対する。
ハンス「こっちだよ。」
ハンスはいつの間にかドグマの背後を取っていた。
ドグマ「……!!こっちか!おらぁぁ!」
ドグマはすぐさま振り返り、ハンスへ右腕を薙ぎ払った。その攻撃は直撃したかの様に見えたが、その瞬間ハンスは消えてしまった。
ハンス「戦闘中によそ見はダメだよ。」
ドグマ「……!!」
ドグマが攻撃したのはハンスの分身だった。またしてもハンスはドグマの背後を取る。
ドグマ「チョコマカとぉ!!本当にムカつくぜぇ!!」
ドグマは腕で薙ぎ払うが、それはまたしてもハンスの分身だった。この後同じ様な攻防が3回続いた。
ドグマ「くっそぉぉぉ!ぶっ殺す!ぶっころぉぉす!!ぶっころぉぉす!!」
ハンスはドグマから少し距離を取っていた。
ハンス「そういえば、火に弱いらしいね。」
ドグマ「ぶっころぉぉ!……へっ?」
ハンス「火遁・豪炎陣!!」
ハンスは右人差しと中指を立て強く念じると、ドグマが立っている地面の方から、激しい炎が噴き上げてきた。
ドグマ「ぎゃぁぁぁ!!!あついぃぃ!あついぃぃぃ!!」
ハンス「追撃させてもらう!」
ハンスは自らの分身を、次々と作り出した。
ドグマ「ぐうぉぉぉ……だが偽物をいくら作り出した所で……」
ハンス「それはどうかな。」
ドグマ「……!?」
ハンス「分身斬!!」
ハンス本体と共に、分身達もドグマの体を次々と苦無で切り刻んでいった。今作っている分身は攻撃時に実体化する物であった。
ドグマ「ぎゃぁぁぁ!!(コイツ強すぎる……!これはまずい!まずいゾォ!!)」
ドグマは四つ脚となり、足早に後方へいるであろうシシオウの元へ向かった。
ハンス「……!すまない!守さんの所には、老師が向かっている!相当な手傷を負わせたが、俺はドグマの方へ向かう!2人ともこれを!」
ハンスは特殊な飲み薬をミズキとイースに手渡した。
ハンス「即効性のある活性薬と痛み止めだ。少し楽になるだろう。」
ミズキ・イース「ありがとうございます。守さんを……助けて下さい!」
ハンス「あぁ!必ず助ける!もうすぐで俺達の勝利だ!もう少し踏ん張ろう!また後でな!」
ミズキ・イース「はい!………………。」
一方俺が絶体絶命……もう死ぬ寸前の所で、ゲンジが俺を助け出してくれていた。
ゲンジ「(守の傷と出血が酷すぎる!!早々に片を付けねば!)」
シシオウは強引に外された顎を、両手で強引に治していた。
シシオウ「ジジイ……もう少しだったのによぉ……。まぁその男は既に致命傷だ!どのみち死ぬ!そしてどのみちテメェも殺す予定だった!覚悟しろやぁ!!」
シシオウは強狂化した状態で、ゲンジに突進してきた。……そう思ったのだが、目の色は戻り、筋肉も爪も強狂化される前の状態に戻ってしまった。
シシオウ「何だ!なぜ元に戻っている!?」
ゲンジ「残念じゃが、先程腹を打たせて貰った時に、ワシの気力も一緒に打ち込ませて貰った。おそらくその気力が強化を解除したのじゃろ。ここで終わらせて貰う。」
ゲンジはシシオウの元へ直進し、掌底の連打をシシオウへ見舞った。掌底は次々とシシオウの身体に打ち込まれていく。シシオウはなす術なく、掌底を次々と喰らっていくしかなかった。
シシオウ「グウオォォォ!!」
ゲンジ「これで終いじゃ!玄武大衝波!!」
ゲンジは、連撃の最後に両手掌をシシオウに向けると、
大きな衝撃波を見舞った。シシオウの顔面や身体前面が大きく凹み、後ろに大きく吹っ飛んだ後倒れた。
シシオウ「ガッ……ガァッ…………(マズイ……これは……。)」
「シシオウ!俺やられそうだぁ!変なクソキザ野郎が強過ぎてぇ!一緒にやるぞぉ!……ってあれぇ!?シシオウもやられてるぅ!!たてぇ〜シシオウ!!」
ドグマが四つ脚で敗走してきた。
守「ゴフッ……!(キザ野郎……?確かコイツもシシオウと同等レベルに強かった筈……ゲンジさんが言ってた強力な助っ人ってまさか……)」
シシオウ「……!(ドグマも相当な手傷か!?恐らく傷を負わせた奴がこちらに向かってくる筈……戦況は限りなく不利だ……仕方ない…………撤退だ!)
……ドグマ!ここは撤退する!急げ!奴等は今度ブチ殺す!!」
シシオウはすぐさま立ち上がり、ドグマに指示する。
ドグマ「くそぉぉぉ!!!!でも仕方ねぇ!!お前ら撤退ダァ!!クソ人間共とクソチビデブドラゴぉぉん!!今度会ったら絶対にぶっ殺してやるからなぁ!!!!」
シシオウ「覚えておけ……最後に笑うのは我らだ!
必ず貴様らを血祭りに上げて、その上で……殺す!!!」
2体の指揮官は魔物達に撤退の指示を出し、魔物達も撤退した2体の指揮官に続いて、撤退した。
ゲンジ「皆の者!無理に追う必要はない!これで無事に村を守り抜けた!!
我らの勝利じゃぁ!!!勝ち鬨を上げるぞぉ!!!
えいえいおおおぉぉぉっ!!!!!
一同「おおおおおぉぉぉっっ!!!」
ゲンジの勝ち鬨に合わせて、周りの一同も勝ち鬨を上げた。残っている魔物は全て撤退し、防衛戦は俺達の勝利で幕を閉じたのであった。
ポー「はぁはぁ……(俺よりも前線は更に激しかったみたいだな……。クソ!!俺の所だけ魔物共が沢山集まって来やがって、前に出られなかった!手下も3人死んでしまいやがった……ちくしょぉぉっ……!!!)」
ハンス「老師!無事でしたか!ドグマ達は撤退した様ですね。」
ゲンジ「ハンス!オヌシが助太刀してくれたから、何とかなったわい。ありがとうな。して、ワシは守や他の超重傷者を、治療者の元へ運んで行く。」
ハンス「……!!凄い怪我ですね。(……これは非常に危険な状態だ……)分かりました。私は他の負傷者の対応を致します。」
ゲンジ「すまぬ。頼んだ。」
ゲンジは俺や他の超重傷者を連れて行き、ハンスは他の負傷者の対応等を行った。戦死者はポーの取巻き含め、12名。重傷者はミズキやイース含めて約30名、軽傷者は約20名であった。
とりわけ俺は超重傷者扱いで、応急処置を済ませた後、他の者達よりも早く、ゲンジ達と臨時村の治療場まで向かう事になった。
ゲンジ「超重傷者は3名か。応急処置をしてから、迅速に村まで帰り、集中治療をして欲しい。ワシも手伝う。」
治療者「分かりました!」
守「ゲンジさん……本当に……ありがとうございます……ゴフッ………………」
この世界に来てから、最も身体の損傷が酷い状態だった。出血も酷く生死の境を彷徨っていた。
…………俺の意識はゲンジにお礼の言葉を言ったと同時に闇へと落ちていった………………
…… エピソード 守③ 「強敵」へ続く




