第三章 第八話 絶体絶命
ミズキとイースは、ドグマの圧倒的な力の前に窮地に立たされていた。
その戦いの一方で、俺はシシオウと相対していた。
シシオウ「オラオラ!どうしたどうしたぁ!?ジジイがいなきゃ、なぁんにも出来ねぇのかぁ!?」
守「……くそぉ!!」
俺は自らの両腕を犠牲にしながらも、何とかシシオウの猛攻に耐えていた。
守「(冷静になれ!爪以外の所で受け止めようとしても、力じゃ圧倒的に向こうの方が上で、叩きつけられる!
ならば……)」
俺は連撃の隙間でタイミングを図り、シシオウの右腕を掴むと同時に、後方へと受け流した。シシオウは自らの攻撃の威力に体勢を崩し、床へと叩きつけられた。
シシオウ「ゴブッ!(クソが!すぐに立ち上がって八つ裂きにしてやる!!)」
守「(ここだ!今が好機!)」
俺は立ちあがろうとするシシオウの顔面に、怒涛の拳の連打を放った。
守「オラオラオラオラ!!!」
シシオウ「グブブブブ!!」
俺の拳はシシオウにも確かに効いていた。
しかしシシオウはカッと目を見開き口を大きく開け、大音量の咆哮を上げた。それは風圧も加わる形となり、俺を後方へと吹き飛ばした。
シシオウ「きさまぁぁぁ!!!よくも俺の顔を殴ってくれたなぁ!!殺す!殺す!八つ裂きじゃ足りん!千裂きにして、跡形もなく血祭りに上げて殺してやるぅぅ!!!!
ガアアアアアアアアァァッッ!!!!!!!」
守「……!!」
シシオウは更なる咆哮を上げると、両眼が真っ赤になり、更に筋肉隆々となり、爪も伸びて鋭くなった。
俺は強烈な咆哮と殺意を向けられ、怯んでしまった。
そしてシシオウは俺の方へ突進してきた。
「うわぁぁぁ!」
その時叫び声を上げて、俺の後ろから、俺とシシオウの間に男が吹っ飛ばされた。男はポーの例の取巻きだった。
取巻きが後ろを振り向くと、絶望感と恐怖から声を殆ど上げる事が出来なくなった。
取巻き「あっ……あぁ……」
シシオウ「邪魔すんじゃねぇぇぇ!!!」
取巻き「ギャァァァァァッッッッッ!!!!」
シシオウは両腕をクロスして、取巻きを引き裂いた。
取巻きは4分裂に裂かれ、息絶えてしまった……
俺は動けなかった……震えが止まらなかった……
すぐ様シシオウは俺の近くまで来ると、俺が自ら生み出してしまった隙に乗じて、連撃を見舞う。その連撃は先程よりも格段に速く、鋭利な長爪で俺の身体を、次々と引き裂いていった。
シシオウ「うおおぉぉぉ!!!死ねぇぇっっ!!!!」
守「ぐぅっ!!(まずい……これは俺が跡形もなく消し去られた……最後に翔が繰り出した無数の風の刃の技と同じくらい……いや、それよりも……!?)」
恐怖から震えが治らない身体は、完全には剛体術が発動せず、更に自らを強狂化したシシオウの攻撃に、俺の身体は次々に裂かれ、抉られ、削られていき、形を失っていく。遂には剛体術が解かれ始め、俺の身体はシシオウの爪に刺される様にもなってしまった。
辺りは大量の鮮血が次々と舞い、落ちていく。俺の身体は無数の裂傷と刺傷により、原形を失っていた。
ギリギリの所で意識を繋ぎ止めていたが、事態は深刻だった。
シシオウ「これで何裂き目だぁ?百は超えたかぁ?だが爪だけでは恨みは晴らせなさそうだ!砕け散れぇ!!」
シシオウは斜め下から爪を振り上げると、遂に俺はその威力に負けて、横向きのまま宙に浮いてしまった。
直後シシオウは大きく口を開け、横向きで空中に浮いていた俺の身体へと牙を向けた。その牙達は俺の身体に深々と突き刺さってしまった。肋骨などの身体の骨達も、次々と完全に折れていくのを感じた……
守「……ゴフゥッッ!!(まずい………………死ぬ…………)
シシオウ「(渋とかったが流石にこれは死ぬだろう!もっと生きたまま裂きたかったが……トドメだ!)」
シシオウは両腕の爪を鋭く立て、俺の頭ごと串刺しにしようと、両腕を内側へと刺し込もうとした。
もはやこれまでか……と思った時だった。
「守ぅぅぅ!!!貴様ぁぁ!離れろぉぉぉ!!!」
シシオウ「!!」
ゲンジが前線へと復帰したのだ。すぐ様俺の頭ごと串刺しにしようとした両腕は阻まれ、すかさずゲンジは両手でシシオウの口を開く様に強引に外した。
シシオウ「がぁぁぁ!!」
シシオウの顎は完全に外れた。直後ゲンジはシシオウの腹へ掌底を叩き込み、シシオウは後方に吹き飛んでいった。
ゲンジ「守ぅ!大丈夫かぁ!!!(傷が酷すぎる!!出血も酷い!!これはポーの奴にやられた時よりも更に深刻じゃ!急がねば!!)」
守「ゲンジさん……ゴフッ。ミズキさんとイースが……ドグマと……ゴフッ。」
ゲンジ「(こんな状態になっても他の者の心配か……!)
そちらは安心せい!もう大丈夫じゃ!」
守「……?」
ゲンジ「向こうには強力な助っ人が来ておる!大丈夫じゃ!(時間がない……一気に片を付ける!)」
その頃、イースとミズキはドグマと相対していたが、窮地に立たされていた。ミズキは凍傷と壁の激突、イースはドグマの重撃を何発も浴び、両者どちらも多大なダメージを受けていた。
ミズキ「(……しかもイースちゃんの攻撃も、私の攻撃もドグマには相性が悪い……!)……でもやらなきゃ……っ!」
ミズキは更に渾身の力を込めて、三度ドグマの腹部へと斬撃を見舞った。今度は初撃よりも深くドグマの腹部に刀を入れ込めたが、致命傷には至らなかった。
ドグマ「流石にいてぇな……流石にキレたゾォ!潰してやるぅ!!」
ドグマは右腕を振り下ろした。ミズキはバックステップで躱す。直後ドグマが追撃を図ろうとした時、側に倒れていたイースが立ち上がり、ドグマの腹目掛けて横から全力の殴打を見舞った。ドグマは横へ激しく倒れていった。
ミズキ「イースちゃん!?」
イース「……これ以上ミズキさんを傷付けません!!」
ドグマ「(たった一撃なのに、何でこんなに効くんだ!?)……てめぇ!!てめぇにもブチギレだゾォ!!まずはてめぇからぶっ殺す!!」
ドグマはすぐ様立ち上がると、最初と同じ様に両腕を交互に振り下ろし、重撃を連続でイースに見舞った。
ミズキ「イースちゃんから離れろぉぉ!!」
ドグマ「てめぇはすっこんでろぉぉ!!」
ドグマへと駆け込んだミズキだったが、ドグマは右腕をミズキの方へ薙ぎ払った。ミズキは刀で間一髪防いだが、大きく吹っ飛ばされ、またしても壁に激突してしまった。
ミズキ「ガハッ……!(イースちゃん……!)」
イース「ミズキさぁぁぁん!!」
ドグマ「クソ女は後で殺す!まずはてめぇからだぁ!クソチビデブドラゴぉぉん!!」
ドグマは両腕を大きく上げ、思いっきりイースに振り下ろそうとした。イースはダメージと恐怖心から動けなくなっていた。
イース「……!!」
ミズキ「……!!イースちゃぁぁん!!!」
だが、その両腕がイースの元に届く事はなかった。叩きつけた両腕の下は、大きく凹んだ地面だけだった。
「間一髪だったね。大丈夫かい。2人とも、良く踏ん張ってくれた。あとは俺に任せて欲しい。」
ミズキ「あぁっ……あぁ……!」
イース「なぜ……ここに……?」
ミズキの側にはイースがいた。そしてハンスがいた。
イースは自ら移動したわけではなく、ハンスが間一髪の所でイースを運び助け出したのだ。
ハンス「……さて。殺し合いの場だから恨みはない……そう言いたいが、こうも身内がボロボロにされると悲しくなってくるな。……覚悟しろ。」
ドグマ「なんじゃぁ!てめぇはぁぁ!何だかてめぇが1番ムカつくゾォォ!!ぶっ殺してやるぅぅ!!!」
2人の窮地に駆け付けたハンス。2人を助ける為、ハンスはドグマと相対するのであった……
…… 第三章 第九話へ続く




