第三章 第七話 混戦
防衛戦は開始から、俺達の優勢で現状進んでいた。
シシオウ「(いっちょ喝を入れるか……。)
てめぇぇらぁぁ!!か弱い人間如きなんぞ、捻り潰してしまえぇぇ!!血祭りにあげろぉぉ!!殺せぇぇぇ!!」
例の獅子型の魔物だ。咆哮を上げると情報にあったが、敵を威圧するだけでなく、味方の士気を上げる事も出来るらしい。
「グウオォォォ!!」
「キシャァァァ!!」
魔物達の士気が上がり、反撃に転じられた。味方の前衛達は、魔物達の攻撃を次々と受けてしまった。
「うわぁぁぁ!!」
「ぎゃぁぁっ!!」
ゲンジ「(……魔物達の士気が上がっている!前衛の者の負傷者がかなり出ておるな。) 負傷している前衛の者は下がれ!動けない者は後衛が補助班に運び出すのじゃ!
残りの後衛は、更に前に出て守りを固めろ!」
シシオウ「(……ジジイ達が更に前に出たな……) ドグマ!同時ブレス攻撃だ!」
ドグマ「ガッテン承知でさぁぁ!!」
シシオウが合図をすると、魔物達は一斉に指揮官2体の後方に下がった直後、シシオウは火炎の息、ドグマは氷の息を吐いてきた。
ゲンジ「(まずい!!狭い洞窟内を敵側も利用してきた!)前衛は散らばれぇ!守とイースは、ワシに続けぇ!!」
ゲンジは一目散に前に出ると、両手を前にだし、光り輝く大きな壁を作り出した。
ゲンジ「はぁぁぁぁ!!
守!イース!ワシが作った壁に手を当てろ!そして両手に気力を吹き込むのじゃぁ!」
守・イース「分かりました!」
俺達はゲンジが作った光り輝く大きな壁に、両手を当てがった。ゲンジの莫大な気力が、両手を伝って強く感じられた。そこから俺達は両手に気力を吹き込んだ。
ゴォォォォォォッッ!!!
ヒョォォォォォッッ!!!
二つの息攻撃が壁に激突する。攻撃の威力も手に伝わってくる。身体ごと吹き飛びそうになる位の威力だ。
しかしゲンジが作り出した強固な壁に加え、微力ながら俺とイースの気力も加わり、息攻撃は威力が弱まり、やがて消えていった。
シシオウ「(!!!(防ぎやがった……!やっぱりあいつらの力は厄介だな……)」
ドグマ「おぉん!俺達のブレス攻撃がぁ!」
シシオウ「ドグマ!これで改めて分かったな!あいつらは厄介だ!さっき伝えた分担で、確実に殺すぞ!」
ドグマ「うぉぉぉ!!ガッテン承知でさぁ!!」
2体の指揮官と共に、魔物達が前進してきた。
ゲンジ「(後方の指揮も取りたいが、負傷者が多く守りを固めねば……仕方ない。戦いながら無線貝を通じて、補助班のリーダーに指令を出そう。)
こちらゲンジ!後衛が連れてきた負傷者の搬送の補助と、手当てを頼む!ワシらは前方の大群を止める!」
シシオウ「おい。殺し合い中に余裕だな?」
ゲンジ「……!!」
シシオウはいつの間にかゲンジの近くに立っていた。直後、鋭い爪が生えている右腕を振り翳してきた。3mを超えるであろうという巨体の攻撃は力強かったが、ゲンジは何とか防ぎ堪えていた。
ドグマ「うぉぉぉ!シシオウ!一緒にやるぞぉ!!」
今度は遅れたドグマが合流してきたかと思えば、次の刹那、シシオウとドグマが同時に、鋭い爪が生えた両腕をゲンジに振り翳した。
ドゴォォォォッッ!!!
どちらも3mを超えるであろうという巨体の強力な同時攻撃を、何とか防いだゲンジだったが、後方に大きく吹っ飛ばされてしまう形となった。
ゲンジ「……!!(しまった!3人から離れてしまう!)」
守「ゲンジさぁぁぁぁんっ!!」
シシオウ「おっと!パッとしない男よ!俺が相手だ!」
守「(パッとしない男?俺の事か!)」
直後シシオウは両腕を使い、怒涛の連続攻撃を俺に見舞ってきた。その連撃はこの世界に来て以降では、受けた事がない威力を誇っていた。
守「……!!(マズイ!!なんていう威力だ!!)」
桁違いの威力に加え、連撃速度は非常に速く俺は両腕でガードを固めるしかなかった。両腕は爪で抉られ、鮮血が飛び散る。
ミズキ・イース「守さぁぁぁぁんっ!!!」
ドグマ「おっとぉ!女と小太りドラゴンの相手は、この俺だぞぉ!」
ミズキ「くっ……!」
シシオウには俺、ドグマにはミズキとイースが相対する構図となった。
ドグマ「どっちを最初にやるのが正解かなぁ……まぁどっちでも良いかぁ!」
ミズキ「!!」
ドグマは近くにいたミズキの方へ、右腕を振り翳した。
ミズキ「(老師を吹っ飛ばしたあの威力……私は尚更直撃を避けないと!)」
ミズキは左へサイドステップで攻撃を躱した直後、輝水刀をドグマの腹に目掛けて、横へ薙ぎ払った。
斬撃はドグマの腹に命中したが、刀は腹の表層で止まり、抜けなくなってしまった。
ミズキ「(しまった!刀が!)」
ドグマ「痛いなぁ。まぁ俺の身体を切り裂くには至らないけどな。おらぁぁ!」
ドグマは左腕をミズキの方へ振り翳す。
イース「ミズキさん!」
ミズキ「イースちゃん!」
イースは両腕で、ドグマの左腕の攻撃を防いだ。ミズキはすぐさまドグマの身体から、刀を引き抜いた。
イース「ミズキさんから離れて下さい!」
イースは大きく息を吸い込み、白銀の息をドグマに向けて吐き出した。
ドグマ「?涼しいなぁ。いや、ちょっと寒い?まぁどっちでも良いかぁ!」
今度はドグマが強烈な氷の息を吐き出した。それは、イースの氷の息を掻き消し、2人に直撃した。
ミズキ「きゃぁぁ!」
イース「うわ!」
氷の息が掛かった場所は凍りついた。
氷の耐性があるイースは、軽傷で済んだ。しかしミズキは普通の人間であり、氷への耐性はなく、かなりの凍傷を負ってしまった。
ミズキ「くっ……動けない……」
ドグマ「おっ!女の方は動けなくなった!好機だぞぉ!」
ドグマは涎を垂らしながら、ミズキの方へ四つ脚で突進してくる。
イース「させません!」
イースは自らの身体を盾にし、ドグマの突進を防ごうと試みた。しかし力で勝るドグマに押し込まれ、ミズキもろとも洞窟の壁に激突してしまった。
ミズキはその衝撃に身体が耐えられず、吐血した。
ミズキ「(……くそ!私の身体動け!動け!動けぇぇ!)」
ドグマ「女の方はあと一押しかぁ。もっと苦労すると思ったけど、案外楽勝だったなぁ。」
ドグマが再びミズキの方へと向かう。
イース「……まだです!」
イースはドグマを両腕で止めて、前進を防いだ。
ドグマ「また小太りドラゴンかぁ。いいやぁ。こいつを先にやっちまおう。」
ドグマは両腕を交互に次々と振り翳し、イースの身体を打ちつけていった。
イース「ぐぅぅ!!」
打ち込む度に衝撃音が鳴り響き、イースの身体も耐えきれず、吐血した。
ミズキ「うぉぉぉぉっ!!イースちゃんをこれ以上傷付けるなぁぁっ!!」
ミズキは渾身の気力を振り絞り立ち上がると、必殺の斬撃をドグマに見舞った。
ミズキ「水月斬!!」
水色の大きな斬撃はドグマの身体を大きく切り裂いた……かと思われたが、またしてもドグマの身体は表面を傷付ける程度に終わった。
ドグマ「びっくりしたなぁ。でも多分水攻撃は俺にはあんまり効かないぞぉ。」
ミズキ「くっ……!(技の相性が悪い!このままじゃ……)」
「ガアアアアアアァァッッ!!!!!!」
ドグマ「おぉ。シシオウの強狂化の咆哮だぁ。戦ってる男はもう終わりだなぁ。俺もいそがねぇとぉ。」
ミズキ・イース「(守さん…………!)」
乱戦となり姿は見えなかったが、離れているにも関わらず、シシオウの強烈な咆哮がミズキとイースの身体を硬直させる。
相性の不利、更にはドグマの圧倒的な攻撃力と防御力を前に、ミズキとイースは窮地に立たされる……
…… 第三章 第八話へ続く




