第一章 第二話 暗殺者たち
2023/1/3 一部修正しました
……地獄の様な日々の中、1年半が過ぎた。脱落者が何人もいたが、俺は復讐を遂げる目的を支えに耐えていた。この時から実行者ではなく、あくまでサポートとしての形だが、任務にも参加する様になった。相変わらず非常識な鍛錬や訓練は受け続けられていたが。
そんな中、良く関わる同い年の同期が2人いた。1人はコードネーム「水音」。女性の同期であり、長い亜麻色の髪と白い肌が特徴で、淡麗な容姿をしていた。背は俺が170cmに対して、少し低い160cm程だ。
水音「……訓練も依頼も凄い辛いですが……頑張りましょうね、朱音さん。」
俺は組織から「朱音」というコードネームを付けられていた。
水音は筋力に若干乏しかったが、刀術は流れる様に滑らかであり、苦無術等の遠距離攻撃の命中率や、気配を消す事に関しても優れていた。また誰に対しても敬語であり、暗殺者らしからぬ優しい女性で、構成員達の事を気遣っていた。俺の事も。そして組織に消された構成員や、暗殺された人達の事までも。
水音「この世の中を変えたいんです。その為には、汚れ仕事を誰かがやらないといけないんだと思っています。」
加入理由は不明であり、暗黙の了解としてお互い聞く事もしなかった。しかしこの様に言っていた水音の眼には、力強さを感じた。
もう1人の同期がコードネーム「呪韻」。背は俺と同じ位の170cm程で、癖っ毛と色黒が特徴的だった。体術はそこそこだが、様々な暗器を駆使したり、機転の効いた変則的な闘い方を得意としていた。名前からして陰湿かと思いきや、社交的で陽気な男で、俺に良く絡んできた。
呪韻「ねぇねぇ朱音くぅん?何で暗殺者になろうとしたのぉ?気になるんだよねぇ。」
コイツは俺の身の上話を聞きたがっていたが、俺は頑なに拒否していた。一方、コイツは自分が組織に加入したのは金の為だと言っていた。真意は分からないが。
そして先達の中で1人、俺が信頼を寄せる人物がいた。その名はコードネーム「雷鳴」。背は180cm少し程で、外国人の様な金色の髪が特徴的だった。俺との年齢は10歳くらい離れていたが、訓練を共にしたり、色々と指導をしてもらったりと、関わりが深い人物であった。雷鳴は俺を含む同期と比べて、遥かに凌駕する位強かった。特に刀の扱いに秀でており、刀の扱いや刀術に関しては特に良く指導をしてもらっていた。
雷鳴「おぉ、朱音か。どうだ?刀の扱いには慣れてきたか?また見たいと思っているから、いつでも声を掛けてきてくれ。」
暗殺者らしからぬ、暖かい…俺の両親と似た様な心や雰囲気を持つ人であった為、組織の中でも数少ない信頼に値すると判断していた人物だった。
しかし俺が組織に入って2年程経ってから、雷鳴はより大きな任務を任される事が多くなり、殆ど会えなくなってしまった。
一方俺の方は、壮絶な訓練に耐えながらも、任務のサポートに入る事が徐々に多くなった。
任務のターゲットになる人間は、違法行為で多額の利益を上げている連中や、人々を迫害して自分は甘い蜜を吸う様な……そんな外道のみであった。
その為、あの時何故両親が殺されなければならなかったのか……本当に分からなかった。
そうした中、俺は同期の呪韻から、とある話を聞いた……。
……第一章 第三話へ続く