第二章 第九話 兄弟弟子
2023/1/9 一部修正しました。
side:イース
僕は自分の名前がイースで、種族がプチドラゴンである事以外の記憶がなかった……
そんな僕を守さんは自分がボロボロになってまで、僕を2回も助けてくれた。ミズキさんもゲンジさんも僕の事を助けてくれたり、良くしてくれていた。新しく出会ったハンスさんも優しい人だと感じた。
イース「(僕は守さんがボロボロになっていくのを、ただ見ていただけだった…………)」
全身が痛くて痛くて、身体が言う事をきかなかったのもあるかもしれない。けれどハッキリ言うと、怖くて……怖くて動けなかったんだ。守さんは僕を守る為に、男の人達に立ち向かって行ったと言うのに……
本当に僕は自分自身を情けなく思う……
男の人達から守さんとミズキさんが助けてくれてから翌朝、ミズキさんから、守さんが僕や助けを必要としてる方達を守る為に、ゲンジさんに修行を志願したと聞いた。
イース「守さん……僕は……」
朝食を済ませた後、また僕は悩んでいた。
男の人達に暴力を振るわれた時の記憶が蘇る……苛烈な暴力を振るわれ、魔物は死ねば良い、醜い姿を晒すな、なぜ生きてるんだ?死ね……死ね!!
そんな暴言を浴びせられていた。
怖い……怖い………………今思い出しただけでも涙が出そうだ……
けれど、その人達に立ち向かっていた守さん……僕は……僕は…………!
ミズキ「イースちゃん……!」
僕は涙を流していた。そんな僕をミズキさんも涙を流しながら、優しく抱きしめていた。
ミズキ「イースちゃん……辛い事を思い出していたの……?」
僕はハッとする。僕が泣いてしまったせいで、ミズキさんに心配をかけてしまった。
イース「ミズキさん、すみません……。何でも……何でもないですよ……」
ミズキ「何でもなくなんかないよ……イースちゃん、私、イースちゃんの力になりたい……」
ハンス「イース君。君も色々と思う事があるんだろう。微力ながら、私もイース君の力になりたい。」
イース「ミズキさん……ハンスさん……」
守さんやゲンジさん、そしてミズキさんやハンスさん。この方達は守さんが言っていた、僕の「心」を見てくれている方達なんだ。一緒にいると心が安らぐ。この方達は強くある一方で、「優しさ」も持ち合わせているのだと……
……ここに来てから苛烈な暴力や暴言を浴びせられて、怖い思いをした。だけど、僕を助けてくれた守さんやミズキさん、ゲンジさんやハンスさん達の様になりたい……!
イース「僕も……僕もゲンジさんに修行を見て頂ける様に、お願いしてみます!!」
ミズキさんは凄い驚いていた。ハンスさんは僕がそう言うのを想定していたかの様に、納得していた様子だった。
ミズキ「……本気なの!?イースちゃん!?……老師の修行は物凄い厳しいのよ?守さんには耐えられても、イースちゃんには耐えられないよ……はっ!(私なんて事を……)ごめんなさい……」
イース「謝らないで下さい。僕は本当に弱いです。……でも強くなりたいんです。皆さんの様に強くて優しい、誰かを助けられる存在になりたいんです!」
ミズキ「イースちゃん…………分かった。でも辛かったらいつでも言ってね……。」
その晩、ゲンジさんと疲弊していた守さんが帰ってきた。僕は夕食前に、決心した事をゲンジさんに伝えた。
イース「ゲンジさん!僕も守さんと一緒に……修行を付けて頂けないでしょうか!」
守さんは大変驚いていた。一方で、ゲンジさんは優しい顔をしていた。
ゲンジ「……イースよ。オヌシも色々と思う事があったんじゃろう。ワシはイースがそう言ってくれるのは正直に言って嬉しく思う。……じゃが、オヌシが受けた暴力よりも、更に辛く険しい道になる。暴力を受けていた方がマシだと思う位に厳しいぞ。それでも修行がしたいと、そう思うのか?」
ゲンジさんは優しい顔から一変、厳しい顔で問い掛けてくる。
イース「暴力を受けていた時の事を思い出すと、今でも正直怖いです……
けれど、皆さん達と関わらせて頂く内に、僕も皆さんの様に強く優しくありたいと思う様になりました。僕と同じ様に迫害されている方がいたら助けたい。それを出来る位強くなりたい……僕は弱い自分を変えたいんです!!」
守「(……イース……お前……)」
ゲンジ「オヌシの言葉、しかと聞いた。良かろう。明日から守と一緒に修行を始めようかの!」
イース「はい!宜しくお願い致します!」
守「(イースも色々と考え、悩んでいたんだな……皆を守りたい、助けたい……俺と同じ気持ちだったんだな……優しい上に……強い心だ。俺はイースと一緒に強くなりたい!)
イース!一緒に頑張ろうな!一緒に強くなって、助けが必要な方達を守っていこう!!まずはこの領地奪還、皆さんと一緒にやり遂げよう!!」
守さんは優しくもやる気に満ち溢れた顔で、激励してくれた。
ミズキ「イースちゃん……微力ながら、私も協力するからね……!でも無理はしないでね……」
ハンス「イース君。僕も時折になってしまうが、出来る限り協力させてもらうよ。」
ミズキさんは心配してくれながらも、ハンスさんと一緒に激励してくれた。
ゲンジ「さしずめ、守が兄弟子、イースが弟弟子じゃな!宜しく頼む!兄弟弟子よ!今日は沢山食べてしっかり寝て、明日から一緒に修行じゃ!」
守「はい!(イースの兄弟子かぁ……なんか良いな!)」
イース「はい!(守さんの弟弟子……やったぁ!)」
こうして僕も守さんと共に、修行に励む事になった。
……しかしこの後、悲惨な運命を辿る事になろうとは、この時の僕達は思いもしなかった……
……第二章 完
……第三章 第一話へ続く
ここまで読んで頂き、有難う御座いました。
第二章はここで完結となります。
次回からは第三章に入ります。
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