エピソード 守② 「親友」
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守のエピソード編、続きです。
とある日、俺は学校で飼育しているウサギの世話当番の為、朝早くに学校に来て、エサをあげたり、フンの掃除等をしていた。2人1組だが、もう1人は俺に仕事を任せてそこにはいなかった。
黙々と作業をしていると、堂田とそのグループ達がやってきた。
堂田「おいおい1人寂しくやってるねぇ。」
守「!!」
堂田がそういうと、俺の身体を掴みながら、いきなり腹を殴りつけてきた。
ドゴッ!!ドゴっ!!
鈍い音が周囲に響き渡る。
堂田「おらっ!おらっ!ははっ!テメェは臭えウサギ小屋で、殴られるのがお似合いだぜ!」
その時小屋の入口が空いてしまっており、ウサギが飛び出してしまった。直後堂田の手を噛んだ。
堂田「いてっ!……獣の分際で……許さねぇ!!!」
俺を助けてくれたんだろうか……ただ俺はハッとする。堂田が殺意にも似た気迫を、助けてくれたウサギに向けていたのだ。
守「うわぁぁぁ!」
俺は慌てて堂田に体当たりをして、降りてきていたウサギを守る様に身体と腕で囲い、うずくまった。
堂田「おい、コラ。何してくれてんだ。おい。
…………テメェと獣はぶっ殺す!!お前らも参加しろ!」
そう言うと、グループの奴らも俺に殴る蹴るの暴行をしてきた。タカが外れたのか、堂田は俺の顔面を蹴り上げたり、頭を掴みながら連続で殴ったりと……もう何発喰らったのかも分からない程であった。
「!……お前!大丈夫か!」
その時偶然通りかかったのかだろうか、翔が駆けつけてくれた。
翔「テメェら何してんだ?人を殴ってるんなら、自分も殴られる覚悟はあるんだよな?」
堂田「ふん!そんなもんねぇよ!俺は無傷でテメェがボコボコにされるんだからな!おめぇらやってやれぇ!」
グループの奴ら達が翔に目掛けて殴り掛かってきた。翔はそれらを躱したが、その隙に乗じて、堂田が翔の顔に右拳を思いっきり振り翳してきた。
その拳は翔の頬に直撃したが……翔は倒れなかった。
翔「俺は人を殴る時は、自分も殴られる……やられるかもしれないと覚悟を背負う。そんな覚悟がない奴は人を殴るんじゃねぇ!!」
その瞬間、翔は1人一発ずつ拳を見舞っていった。堂田は咄嗟に防いだが、他のメンバー達は次々と拳を受けてしまい、うずくまっていく。
翔「残るのはテメェだけだ。覚悟は出来てるんだろうな?」
堂田「……覚悟、覚悟ってうるせぇんだよ!!テメェは前々から気に食わなかったんだ!そこで獣を抱えている奴の前に、テメェをブッ殺してやる!」
翔「……獣……!?」
そんな時教員が遠くから声を上げた。
教員「お前ら!何を集まっているんだ!ウサギに何かしてないだろうな!!」
堂田「ちっ!おいお前ら、起きろ!めんどくせぇ事になる前に行くぞ!獣は手を出すと面倒か……だが、キザ野郎と、弱虫野郎!!テメェらは絶対に許さねぇからな!!」
そういうと他のメンバーを無理矢理叩き起こし、堂田達は足早にその場を去っていった。
翔「獣……お前が抱えているウサギか!お前……もしかしてウサギを守る為に……?」
守「……このウサギさんは殴られていた僕を助けてくれたんだ。けど、堂田くんが何をしでかすか分からなかったから、必死だった。危なかったよ。……僕だけじゃウサギさんを守れなかった。翔くんありがとう。」
翔「(こんなにボロボロになってまで…………ここの奴らも信頼出来ない奴らばかりだと思っていたが……こいつは…………)
……ウサギは俺もいつも気にしていたんだ。あのデカブツが何をしでかすか分からなかったのもあってな……。
……ウサギを守ってくれて、有難うな。
……あと、お互いお前や、くん付けで呼ぶのは辞めよう。」
守「……!有難う!!翔!これからも宜しくね!」
翔「……あぁ!これからも宜しくな!守!」
後日、翔に誘われて合気道の道場で一緒に稽古したり、俺の父親の言葉を胸に、翔と一緒に堂田やそのグループの奴ら達に挑んだりしたのだが……それはまた別の機会に話そうと思う。
ふと、そんな昔の事を思い出しながら、俺はイースの寝顔を見ていた。翔が俺にそうしてくれた様に、今度は俺がイースにしてあげられたのか……ただミズキが助けてくれなかったら、イースを助けられなかっただろう。今の俺には翔の様な力がない……
……この世界に来る直前の……刃を交えた戦いの時、翔はどんな気持ちで戦っていたのだろうか。翔は俺を本気で止める為に、色々と葛藤しながら戦っていたのだろうか。
なのに俺は復讐の事だけしか考えていなくて……
……イースとの出来事と、昔の親友との記憶を重なり合わせたり、翔と刃を交えた戦いを思い返し……俺はある決心をした。
……第二章 第七話へ続く
エピソード編を読んで頂き、有難う御座いました。
次回から本編に戻ります。




