第二章 第五話 降り注ぐ雨の中で
自分の心にある、暗いおぞましい部分が少しずつ剥がれていく……その様な感覚を感じ取っていた時、ゲンジが再度口を開いた。
ゲンジ「実はもう1人、玄龍国出身の者がいてな。守よりも少し年上になるのでないかの。ハンスという名前の者じゃ。」
ミズキ「ハンスさんは凄い人なんです!ハンスさんとは少し前からハンター活動をご一緒させて頂いていて、色々と教えて頂きました!クールですが、優しい人ですよ!」
ハンスはゲンジ達と同じくハンターであり、今は周囲の見周りや、占領されている領地へ潜入もしていると言う。近い内に戻ってくる為、その時に紹介するとの事だ。
ゲンジ「……して守はどの様にして、ここにやってきたんじゃ?……無理には答えなくて良いぞ。」
守「(結果的に人を殺す事がないままだったが、元暗殺者というのは伏せておこう……)……気が付いたら、あの場所で倒れていました。」
ゲンジ「そうか。さしずめ、イースと同じ様な感じかの。……よし、ワシは腹拵えが済んだし、ハンスと合流して、見回りと敵地偵察に行ってこようかの。ミズキよ、守とイースはポーの奴らに目をつけられておる。護衛を頼めるか。」
ミズキ「分かりました、老師。守さんはまだゆっくり休んで下さい。」
そうしてゲンジは出発した。
……何事もなく、夜を迎えた。ゲンジ、そしてハンスは戻ってくる事はなく、夕食はミズキとイース、俺の3人で食べた。相変わらず料理は絶品だった。そして簡易的な風呂に3人別々に浸かった後、寝床に入った。
ミズキ「私も仮眠を取ります。くれぐれも外には出ない様に、お願い致しますね。イースちゃんもね。それではおやすみなさい。」
守「おやすみなさい。」
イース「はい!おやすみなさい。」
……眠りについてから少し経った頃だろうか。俺はふと目を覚ました。隣で寝ていた筈のイースがいない。そして、隣の部屋で仮眠を取っていたミズキまでもがいない。
守「ミズキさんには外には出ないで下さい、と言われたが…………」
気付けば俺も外に出ていた。外は雨が降り注いでいた。
何だかあの子を見てると、放っては置けない。昔の俺を見ている様な気がするからか……。あの子は暴力を振るわれても、抵抗しないだろう。優しすぎるんだ。
守「俺は……心配してるのか……?」
そう思っている事が不思議であると感じながら、俺はイースを探し回った。そして、簡易的な酒場らしき建物の横で、イースが複数の男達に暴力を振るわれている所を目撃した。
「へっ!こいつ抵抗しないぜ!やっちまえ!オラオラどうした!!」
男達の中には巨漢男ポーの近くにいた、あの取巻きがいた。男達は全部で5人いて、例の取巻きがリーダー格の様だ。
その人数で無抵抗な者に暴力を振るっていたのか……虫唾が走る。
守「!!!お前ら!何やってるんだ!!その子から離れろ!!」
イース「!!守さん!」
取巻き「あぁ!?親分にフルボッコされた男じゃねぇか。打たれ強さは半端なかったが、俺らでやれば楽勝だな!!ボコボコにして親分に引き渡そうぜ!」
守「お前ら、他者を殴っているって事は、自分達も殴られて良いっていう覚悟があるって事だよな?」
取巻き「そんな覚悟ねぇよ!テメェら!いくぞぉ!」
そういうと取巻き達は、俺の方へ一斉に襲いかかってきた。
……第二章 第六話へ続く




