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閑話 ふざけるな!!

 

「冗談じゃない!!」


 待ちぼうけを喰らわせるなんて!

 怒りと屈辱に目の前が真っ赤に染まる。

 それだけじゃない、私がラブホテルから出て来る写真までバラ蒔くなんて信じられない!


 お陰で言い訳するのが大変だった。

 私が別れたのは和真が原因だと思ってくれていたのに、半年の苦労が水の泡になるところだった。


「頭に来た!」


 和真の住むアパートの扉を蹴りあげる。

 どうせ誰も見ちゃいない、壊れたって構うもんか。

 半年前に追い出された時は滅茶苦茶に暴れてやった。

 涙目で私を見る和真に溜飲が下がったんだ。


「なんで居ないよ!!」


 もう一度蹴りあげる。

 私がわざわざ来てやってるのに!


「な...なによ」


 突然響き渡るサイレン、訳も分からず立ち尽くす私の頭上に突然フラッシュか光った。


「...嘘」


 あれは防犯カメラ?

 ひょっとして今の撮られていたの?


 慌てて鞄を手に和真のアパートを後にする。

 まさか顔まで撮られて無いよね?

 恐怖で家に帰る事が出来ず、友人の川井真奈美が住む家に向かった。


「...紗央莉、アンタね」


 深夜にも関わらず、真奈美は私を迎えてくれた。

 彼女は私と和真の関係を知っている、今日だって携帯を貸してくれたんだ。

 真奈美は普段の携帯とは別に、仲間との連絡用にもう1つ持っていて、それを借りた。


「ごめんね」


 借りていた携帯を返し頭を下げる。

 とにかく謝るしかない、さすがに悪い事をした。

 これも全部和真が悪いんだからね。


「川島君と会えた?」


「ううん」


 見りゃ分かるだろうに。


「まあ、そうでしょうね」


 真奈美は紅茶を一口啜り呟いた。

 余裕のある態度がムカつく。


「もう諦めなよ」


「嫌だ」


「無理だって、こんな写真まで撮られちゃ」


 真奈美は違う携帯から、忌まわしい写真を見せた。

 借りていた携帯からは消去したのに、きっと仲間から送られて来た画像だな?

 ふざけやがって!


「消して!」


 「言われなくても消すわよ」


『なら見せるな!』

 そう言いたい心の声をなんとか声を抑えた。


「酒癖が悪いのも大概よ」


「分かってるわよ」


 そんな事分かってる。

 でも仕方ないじゃないか。


「あれは本当に何も無かったの」


 写真の言い訳は、

 昨日の夜、お酒を飲み過ぎたので介抱されていただけ、男とは何もしてないと説明した。

 酒は本当、後は嘘だけど。


「信じると思う?」


 真奈美は呆れた顔、クソ...駄目か。

 でも行きずりの男と寝たのは昨日が初めてだ。

 それだけは信じて欲しい。


「川島君を解放してあげなよ、もう充分でしょ?」


「なんでそんな事言うの?」


 今まで応援してくれたのに、真奈美の一言が突き刺さる。


「だって、さすがにこれは...復縁したい人のする事じゃないよ」


「だから!」


 そんなに悪い事したの?

 酒の上での過ちだよ?恋人なら許すのが本当じゃない?


「じゃあなんで、そんなに執着するの?」


「...それは」


 上手く説明出来ない。

 思い返してみれば、和真とは大学の合コンで知り合った。

 初めて見た瞬間、あまりの可愛らしさに声を失った。

 酒の勢いを借りて、私から告白したんだっけ。


「よく3年も持ったわね」


「...真奈美」


 おかしい、いつもの真奈美じゃない。

 そんな責める態度を取る人じゃなかったのに。


「ねえ紗央莉、親友だったから言うけど、貴女は川島君に何して来た?」


「...何って、恋人だから普通に付き合ってたわよ」


「普通って、夜中に呼び出したり、プレゼントをねだったりする事?」


「なんでそれを...」


 どうして知ってるの?

 確かに飲み過ぎて和真をバーまで迎えに越さしたり、記念日にはプレゼントを指定したけどさ。

 それって恋人なら当たり前じゃない?


「挙げ句、お酒で浮気じゃ、川島君だって逃げるわよ」


「だから浮気じゃない!!」


 浮気って、私の心はずっと和真一筋だ!

 身体は仕方ないじゃないか!男が勝手に迫って来るんだから!


「世間の人に聞いてみな?」


「...ぐ」


 何が世間だ。

 それに他の男と身体を交わしても、私の心は全く満たされない。

 それどころか、和真と過ごしたセックスの方が遥かに気持ち良かった...


「そう言う事、こんな写真まで撮られちゃ、誰も紗央莉の言う事は信じられない。

 みんな言ってるよ、話が違うって」


「...違わない」


 何が写真だ?

 こんな写真くらい...この写真って?


「...おかしい」


 疑問が私の頭を掠める。

 まさか...


「何が?」


「ちょっと見せて」


「は?」


「さっきの写真よ!」


 なぜ分からないの?


「分かったわよ」


 真奈美の携帯を引ったくり、写真を大きく拡大した。


「やっぱり」


「何が?」


「あの時、和真は何も持って無かったよ」


「はあ?」


「だから手に携帯は持って無かったの!」


「まさか?」


 やっと分かったか。


「じゃあ、この写真って?」


「分からない、誰か...和真の近くに居た奴が撮ったに違いないわ」


「それって....」


「許せない」


 この写真を撮った奴と今日の男がグルかは分からない。

 だが、和真と私の復縁を邪魔をする気なのは間違いない。


 例え様の無い怒りに身体の震えが止まらなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >親友だったから言うけど 「だった」……過去形 まあ、さすがに愛想が尽きたのかね 無理もないけど
[気になる点] 親友だったから言うけど これみそですわな。 流石に愛想が尽きたか。 [一言] まあ彼女、一応は彼の事、好きだったと。 でも酒癖悪すぎるのと、復縁望むなら、素直に打ち明けて、友人に頼む…
[良い点] 元カノも課長もなかなか狂ってますけど、なんというか、凄くコメディタッチで、元カノの逆ギレも笑えてくる軽快さが素敵ですねぇ! 課長のおかげで主人公くんが護られる(?)安心感的なものもあって、…
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