人が眠ったそのあとに
「ようやく眠ったか」
スインが寝室の扉を閉めて動く影ふたつ。
「そうですね。トビーさん」
「寝床を改良してもらえてよかったですね、デイジーさん」
犬二匹が月明かりのもとで話し合う。
「呼び捨てでいいですよ、新参者なんで」
「そうか?」
「人間の世界と一緒にされても困ります」
ペットの世界では先にいた動物が上の立場になる。
下が上に合わせているため、人間の常識で考えると痛い目にあう。
「デイジーがそういうならそれで行くが……」
トビーは人間とそれなりに長く暮らしている
(今後仲良くやるなら折れるのも正解だよな)
楽しそうに話すデイジーを見て、トビーは合わせることにした。
「にしても、人間って忙しそうですね。日中は外にいますし」
もう少し遊んでほしいといわんばかりにデイジーはトビーに話す。
「夜は寝るものだからな」
夜空を見るためにトビーはテラスに移動して、答える。
「昼間に使っている脳を休められるのが睡眠というし」
デイジーもトビーに近寄っていく。
「覚えたことをしっかり記憶するためにも寝たほうが良いと聞く」
「よく知ってますね」
「前にご主人が教えてくれてな。足あっためていた時だったかな」
頭をなでながら教えてくれたことをトビーは思い返す。
「あれもなんか意味あるんですかね?」
「よく眠れると言っていた」
「へぇ~、人間は大変なんですね。あたしらだいたい昼間寝てますし」
「暇だからな。暇な時は寝るに限る」
「もう少し家にいても欲しいですよね」
「まったくだ」
「隣の家とかはまだあかりついてるし、遊んでほしいです」
テラスから見える外の家を見てデイジーがつぶやく。
「たまに家にいる時があるからその時に遊んでもらおう」
「おもちゃとか噛みまくってもいいですかね」
「ああ。俺も結構壊した覚えがある」
トビーは昔のことをデイジーに話す。
ヤスミットも今よりもさらに小さかった頃にここに来たとも。
「そうなんですか。トビーさんはどんな遊びが好きなんです?」
デイジーは軽く頷くと、話題を変える。
「あたしはボールが好きですね~」
「パズルみたいなのも良いぞ。たまに食べ物入れてあるし」
「本当ですか?」
デイジーは瞳を輝かせてトビーに答えた。