よく寝るための一工夫
スインは階段付近にある押入れを開け、中からフットバスを取り出す。
(自動加熱式だから、水を入れてっと)
フットバスに水を入れ、スイッチを入れるスイン。
椅子とタオルを準備すると、その足で別の部屋へ向かう。
書斎の扉を開け読みかけの本とスタンドを取り、また扉を閉める。
「今日は満月か」
スインがふと空を見ると、月が輝いていた。
晴れ渡る夜空に輝く月が、スインを照らす。
しばらく夜空を眺め、スインはまた廊下を歩く。
フットバスを置いた部屋に戻るとお湯が沸いていた。
スインはスタンドのプラグをコンセントにさし、明かりをつける。
(紙の本の本も良いものだよね)
スインは椅子に座り、フットバスに足を入れる。
そして、本を開きページをめくる。
(スマホやタブレットの画面は寝る前に見ると逆効果だから)
しおりの挟んであるページに到達すると、しおりを手に取り本を読んでいく。
仕事のこと、コミュニケーション、自己啓発、覚えることは多くある。
(ゆっくりとひとつずつやっていこう)
相手がいるときは相手に合わせ、自分ひとりの時はゆっくりする。
それはスインが親から教わったことだった。
(ヤスミットも大きくなったら教えておこうか)
部屋に飾ってある家族の写真を見るスイン。
少し前に撮った写真から見てもヤスミットは少し大きくなっているのを感じた。
(ヤスミットも親になったら、こういうことを考えるのかな)
スインは自分の両親のことを思い出す。
(今度機会があれば、家に帰ってみようかな)
足が温まるにつれ、全身も暖かくなってきた。
(そろそろ終わろうか)
足湯を終え、足をタオルでふき取る。
フットバスの水をバケツに移し、軽く清掃する。
その後、タオルを洗濯かごに入れ、バケツをベランダ近くにもっていく。
(水は明日庭の花にまこう)
明日の準備をして、スインは寝室に向かう。
そろりと扉を開ける。
ヤスミットもコネルももう眠っていた。
ゆっくりとスインも布団の中に入り、枕に小声で話しかけた。
(明日は六時に起きられますように)
枕に話すとその時間に起きられると、昔母親から教わった。
(目覚ましも六時にセットしてあるとはいえ、念には念を、だよね)
目覚まし時計を見るといい時間になっている。
スインは深呼吸をして、ゆっくりと瞳を閉じた。