#42 ユキさんの覚悟
「セツナちゃん、久しぶり! 元気にしてた?」
「ううう ユキちゃん・・・」
セツナさんは震える声でユキさんに答えるように呟くと、崩れ落ちるようにその場に座り、そのまま地面に頭を擦り付けた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、ううう」
ユキさんはそんなセツナさんを見てため息を吐くと、セツナさんに近づきしゃがんで「せっかく強がって普通にしようとしたのに、台無しじゃない。 そんなんじゃお話出来ないよ? ほら顔上げてよ。久しぶりの再会なんだから顔見せてよ」と声を掛けた。
「ううう、ごめんなさい」
私も近寄りしゃがんで「ここじゃゆっくりお話し出来ませんし、お家の中に入りましょ?」と声を掛けると、セツナさんは地面から頭を上げ
「うん・・・もう大丈夫、いきなりごめんなさい。 ユキちゃん、お家に上がって」
「うん、お邪魔するね」
家に入るとセツナさんとユキさんはセツナさんの部屋に移動して、私はお茶の用意をしに台所へ行った。
台所ではセージくんがお茶とおしぼりを3人分用意してくれてて『俺は同席しないでおくから、キヨカ、ねーちゃんのこと頼む』と頭を下げてきた。
「うん、行ってくるね」と返事をして、お盆に乗せたお茶とおしぼりを持ってセツナさんの部屋へ向かった。
ノックをして部屋に入ると、テーブルを挟んで向き合う様に座っていたので、ユキさん、セツナさんの順番にお茶とおしぼりを置いて、私は自分の分のお茶をお盆に乗せたまま入口近くに腰を降ろした。
「部屋、昔と随分変っちゃったね。 4年も経つものね」
「うん・・・色々処分しちゃったから」
「それで? せーくんからはセツナちゃんが私に会いたがってるって聞いてるけど」
「うん・・・ユキちゃんに迷惑かけたこと、ずっと謝りたくて・・・でも会う勇気が無くて、ずっと怖くて・・・でも・・・」
「うん」
「でも、会わないままだと、いつまで経っても謝ること出来ないし、それにせーくんとキヨカちゃんが背中押してくれて・・・」
「そっか」
「ユキちゃん、4年前、迷惑かけてすみませんでした。 謝って済むことじゃないのは分かってます」
セツナさんはそう言って、再び頭を下げて謝罪した。
ユキさんはセツナさんの謝罪を聞いたあと返事をせずにお茶を一口飲むと
「先週せーくんから連絡があってからさ、ずっと考えてるんだよね。 私はセツナちゃんと会ってどうすればいいのかな? 怒ればいいのかな? 悲しめばいいのかな? 再会を喜べばいいのかな? いくら考えても答えが出てこないのよね」
セツナさんは頭を下げたまま黙ってユキさんの話を聞いていた。
「だってさ、何も分かんないままセツナちゃん退学しちゃって生徒会は解散しちゃうし。 4年の間、怒ったり悲しんだり色々あったけど、結局のところ未だに何が起きてたのか分かんないままだから戸惑っちゃうんだよね」
「だから全部話してよ。 セツナちゃんがやらかしたこと全部」
「うん・・・」
「あとセツナちゃん、今日私と会うのに覚悟を決めてたんでしょ? だったら卑屈になるのは止めてよ。 泣けるのも暗くなるのも仕方無いけど、もっと背筋伸ばして私を見てよ。 私も今日セツナちゃんと会うのに覚悟決めて来てるし、セツナちゃんから目を逸らさないから、ね? セツナちゃんもそうしてよ」




