5頁目 2つ目の街 ビナー
気候がとても過ごしやすい。
暖かい風は風情を感じさせ、揺れる拠点は生活感を。
各々が自由に過ごすこの場はとてもいい。
あたしもその自由にあやかり、うつらうつらと風の暖かさで微睡んでいた。
生きている物であれば、誰だって空は見たことがあるだろう。
太陽が出ている間は青く広がる空はと白い雲。
月が出ている間は暗闇の空、それに見合う月と星。
何となく、空を見上げながら時間が過ぎるのを待とうとしていた。
道はある程度は整備された森の中。
伸びた枝が空と一緒に映る。
と、その時である。
「ニャッっ?」
と、猫のような鳴き声と共に木の枝がバキッと折れて、落ちてきた。
「楪危ないっ!」
鈴蘭の声。
微睡んでいても、あたしはあたし。
こんなの切ってちょちょいのちょい…って誰か一緒に落ちてる!?
「おおおおっ!?」
ギリギリで抜刀を抑えてそれを避けた。
生憎受け止めようにも腕が1本たりないもんで。
「ふぎゃっ。」
かなり大きな音でどしんと響いた。
「大丈夫かいあんた!?」
そこに居たのは商人のような装いの獣人の女。
白いケープコートではあるが、フード付き。
フードから出ている耳はピンク色で、多分髪もピンク。
コートは腹部の辺りで2つに分かれていてひらひらした印象。
へそが見えていて下半身はショートパンツに膝下までのロングブーツ、尻尾はうねうねと動いている。
背丈はかなり小さめで子供のようにも見える。
だが、背丈より数倍大きなカバンを背負っている。
「失礼、旅の方々。ご迷惑をお掛けした。……ニャ。」
第一声、とても丁寧な謝礼だが、その声はとても子供ではなく大人びた低めの。
…なんというかお姉さん的な声だった。
「なんだなんだ?」
ちょっとした騒ぎで皆がよってきた。
「む、軽く自己紹介をば。ペルナ・ソシル・ヴァイン。商人だぞ。」
軽くえへんと見栄を張るように腰に手を当ててアピール。
「わお〜可愛いねぇ〜猫の獣人?」
「触るのは別料金だ。」
「がめつい!」
「商人か。この辺じゃ珍しいな。どこの商人じゃ。」
「情報もお金を取るぞ…と言いたいところだが、初回サービスだ。生まれはゲブラーだが、商人の道を進んで15年。あらゆる所を回り回る流浪の商人。それがこのペルナだぞ。…ニャ。」
定期的に取ってつけたような語尾を連発する。
加えて自分は猫だぞと手招きのポーズ。
15年…一体今は何歳…?
「おお、いいじゃねぇか。うちこねぇか?ギルドやってんだけどよ、俺らも世界中回ってんだ。」
「ふむ、移動費が浮く。乗った。」
「はやっ、ちょっとマスター!?ペルナさんも…!もうちょっと考えてから…!」
ペルナ…って言ったかな?
確かにと言いたそうな顔をして少しの間考えている。
数秒後、指を3つ立てた。
「これでどうだ?ただ、国に着いたらペルナは自由行動だ。その条件なら飲むぞ。」
「儲けの2割こっちに寄越してくれるか?」
「うーむ。最初のうちは勝手が分からないからな…。」
また数秒考える。
なにか考える素振りをして今度は指を5本立てた。
「それならこう。もしくは最初だけ分け前を1割でどうだ。」
「うちは貧乏でな、後者で頼むわ。」
「契約成立だな。…ニャ。」
「ちょっと待ってってば。いくら払うつもりなの!?」
「3000ポトスじゃが?」
あたし換算なら1ヶ月の食費くらいだね。
正直儲けとかその辺の話はあたしには分からない。
やっぱり、ギルドもお金はかかるものなんだねぇ。
あたしにはやりくり出来なさそうだよ。
「…そんな余裕あるの?」
「商人がうちに来ることを考えたら儲けじゃろ。」
「安心しろ、悪人以外なら全員ちゃんと適正価格他で売るぞ。」
背中から横幅3mはあろうカバンをどしんと床に下ろした。
びっくりするくらい床が揺れる。
「き、決めるのが早すぎる…。仲間ってもうちょっと段階を踏むものじゃないの?」
「そんなことねぇぞ。俺は人員が増えてラッキー。そこの商人も足と金が手に入ってラッキーだろ。」
「そうだ。この世で信じるのはこういう金だけだ。覚えておくんだぞ小娘。」
「こ、小娘…。私一応18なんだけど。」
「ん?小娘だろう。ペルナは22歳だ。」
「ゲエエエエエッ!?こんなちっちぇのにか!?」
ネモが声を荒らげて驚く。
あたしよりも2歳上だった。
なんだろうね、人間って以外の種族は割と見た目の年齢が合致してないことが多くない?
「そこの爺さん以外を見るとペルナが年長と見た。敬え敬え。ニャ。…それはそれとして、商人ってとこを見せないとな。」
何やらがさごそとカバンを漁っている。
大きすぎるカバンでは探ると言うより潜るだ。
なにか1つ見つけるのにも苦労しそうだねぇ。
商人って言ってたけど売る時はどうするんだろう。
全部中身出すのかな?
「商人ペルナの猫印。欲しいものを言ってみろ。きっと出てくるぞ。」
「最強をくれ!!」
真っ先に出てきたのはヴェン。
期待の眼差しでペルナを見る。
「ふむ、具体性がないが…ペルナの思うこの中での最強はこれだな。竜殺し。」
と言って出したのは瓶に入った酒。
一見するとなんてことの無いものだが…。
「大酒飲みでもすぐぶっ倒れると評判の最強の酒だ。名前の通り竜がこれを飲んで死んだという噂もある。」
「……怖すぎだろ…しかも俺半竜人だぞ!…!」
「ほう、じゃあ半分死ぬな。」
そもそもあんたは未成年だ。
「今度は俺だ!そん中でいっちばん重いものあるか?」
「うむ、ちょっと待て。」
と、カバンによじ登って中身を探る。
……今思ったけど、これ運んでたの…?
あたしでも持てるかどうか分からないね…。
その上筋肉があるわけでもなさそうなのに。
「このどデカい剣が1番重いな。」
と言いながら両手で持つような大剣を片手で持ち、検品のような作業をしている。
「貸してみてくれ。」
「持てるか?」
「あんたで持てるんだ。俺が持てねぇわけな…イィッ!?」
「獣人など人の血が混ざった種族は基本的に身体能力の差が段違いです。ヴェンさんは違いますが。…ですのできっとネモさんでも持つのはお辛いでしょうね。」
「………。」
ネモのフォローを直ぐにするアステリアと、かなり悔しそうで辛そうな顔をするネモ。
あたしはヴェンが少しいじけた顔をしたのを見逃さなかった。
「ネモ。あたしも持ってみていいかい?」
「お、おう…ッ。」
声も掠れるくらいには限界のネモから、剣を受け取る。
「んッ……と。」
大きさはあたしより少し小さいくらいで、人間が持つことを想定されてないだろうと言った感じの剣。
どうにかあたしでもギリギリ持てるレベル。
「いやいや待てよ!なんでお前が片手で持てるんだ!人間じゃねぇのか!?」
「自分でも驚きだね。返すよ。」
「うむ、楪と言ったな?お前、なかなかやる。欲しいものは?」
「ないよー。」
「…物欲のない人は嫌いだぞ。儲けられないからな。」
と少し不機嫌にさせてしまったようだ。
いやほんとにないんだけどなぁ。
「悪い悪い、包帯が欲しいね。あたしには必需品でさ。」
「包帯、あるぞ。売れ残ったらくれてやろう。ニャ。」
ちらっと見せて直ぐにカバンに戻した。
「オイラも混ぜてくれよぅ!ガラクタ!ガラクタはねぇか!?ムヒョヒョ!」
「金にならないものは持ってないぞ…。」
「チェっ…なんだよ〜。俺はそういう要らねぇものですげーの作るのが趣味なんだよ〜。頼むぜ〜?」
残念そうに持ち場に帰っていくジャン。
ジャンはいつも自分の持ち場で色々作っている。
この前聞いた時は爆弾だとか、機械?って言うのだとか。
熱心に説明されたけどよく分からなくってとんずらした。
「うーむ、顧客に答えられないのは残念だ。ただカバンの中は有限なんだ。許してくれニャー。」
さっきからだけど声色は全く媚びていないのに行動は媚びている。
猫の真似なんかして、真面目なんだか不真面目なんだか。
…一応猫だから間違ってはいないの…か?
「そこのデッカイの。なんかないのか?」
「クイモノ。」
拠点を引っ張りながら低い声で地ならしのように喋る。
「たっくさんあるぞ。保存の効くものしかないが。」
「…。」
小さく頷いて、そのまま動く。
「私、矢尻が欲しいかも。」
ライラがそうつぶやく。
弓を使うからね。
弦とか、矢尻とかは必需品。
壊れたら直さなきゃ行けないし、矢なんていちいち回収してられない。
「矢尻か、あるにはあるが数は少ない。次から多めに補充しよう。」
「本当?ありがとう!」
「次はお前だぞ、しろいの。」
「白いの…鈴蘭だよ。…あの、お金払ったら触らせてくれるの…?さっき言ってたけど…。」
「……本当にペルナに興味があるのか?」
「うぁ…えっと…。」
薄々気付いていたけど、鈴蘭って可愛いものが好きなんだ。
前にアステリアの蝶にも興味を示してた。
…この商人も可愛い判定に入るんだねぇ。
あたしも好きだけど!
「う…うーむ。……きっとこれから長い付き合いだ。金は冗談だ。…まあ、少しだけならいいぞ。」
ちょっとだけ嫌そうにフードをとった。
顔があらわになる。
顔つきはどちらかと言うと大人びている方ではあるが身長のおかげでやはり幼く見える。
猫の耳は動いていて可愛らしい。
髪型はショートカットだと思っていたが、ポニーテール。
後ろで結んでいたのをフードで隠していたようだ。
こうして見ると猫の獣人だとはっきり分かる。
ベースは人だから腕とか足とかは猫みたいになってない。
猫耳と尻尾だけかな?
「じ、じゃあ…失礼して…。」
そっと、ゆっくり耳に触れる。
「ふわふわしてるっ…すごい…!」
「む…むぅ…。」
なんだか満更でもない模様。
「わっ…動いた…痛くない?」
「大丈夫だ…ぞ。」
なんか行けないことしてるみたいだ。
私も触りたーい。
「うぐ……ぅ…。」
…目を閉じちゃった。
嫌なのかな?
「本で見たことがあります。猫という生き物は嬉しい時に喉をごろごろと鳴らして喜ぶのだとか…。鈴蘭さん1ついいことを教えて差し上げましょう!喉元を撫でてみてください。」
ペルナは本当の猫じゃないけど…。
「なっ…ちょっと。」
「喉元…こう?」
「んにゃああっ……。」
「うわっ、だんだん下にっ。」
力が抜けたのか、本能なのかは知らないけど寝転がってしまった。
鈴蘭の支えも会って膝枕みたいに。
猫の獣人もそうなんだ、へー。
「ッ…かわいいっ…。」
思わず笑顔の鈴蘭。
猫は人を癒す。
「ええ〜っ!何それ鈴蘭!もうそんなに仲良くなったの!?」
「えっと…触らせて欲しいって言ったら…こう。」
家で飼われてる猫みたいだ。
「わ〜耳可愛い〜!ふさふさだ!すごいすごい!」
「ごろごろ……。」
「あっ、鳴った!喉…?」
「獣人となっても本能には抗えないみたいですね。」
「…アステリアも馴染んだね?」
「あっ……すいません、つい。」
「へへ〜あたしも触るぞ〜!」
「フシャーッ!」
「うわぁああっ!?」
唐突に飛びかかってくる。
回避は出来たけど流石獣人、かなり速い。
なにかの逆鱗に触れたのか分からないけど引っ掻かれるところだったなぁ。
「…はっ。………。」
四つん這いのペルナ。
自分の体を確認してゆっくりと立つ。
「…こっ…これは非常に良くない……良くない…ぞ…。こんなのを知ってしまっては…。」
「アレ?あたし本能的に拒否された?」
「むっ、見るに引っ掻こうとしたようだな。すまない。どうやらお前は本能的に危険だと言っているのかもしれない……本能は危険だ…キケン……。」
残念、あたしそんなに危険人物かな?
…かも。
自分で言うのもなんだけど見境ないしね…。
「…それで、だ。ペルナがここについて行くと言ったのはもう1つ理由があるぞ。そこの宝石のお嬢だ。」
「私ですか?」
アステリアに指をさして徐々に近づいていった。
「うむ…もしかして本物の精霊か。」
「そうです。星の精霊、アステリアと申します。」
「実の所そこはどうでよくてな。その体、結晶病か?」
ジロジロと舐めまわすようにアステリアを見つめ続ける。
やっぱり珍しいから?
猫は輝くものが好き〜とかあったっけ?
「はい。それがどうかしましたか?」
「うむ、無礼を承知で言うが高く売れそうだ!分けてくれないか?」
「……えぇと。この結晶は確かに趣向品としてみたらとても綺麗かも知れません。ですが、お金になるような使い方をして欲しくないのです。申し訳ありません。」
あたしも言われたなーそれ。
こういうところしっかりしてると言うか…。
いや、精霊ってそういうもんなのかな。
「むむ、残念だ。確かにインフレは好ましくない。」
「いんふれ?」
「簡単に言うと物価が高くなってしまうことですよ。」
「なるほど!いやぁ、難しい言葉はよくわかんないや。」
「アステリア、お前何日持つんだ?ペルナは知ってるぞ。」
「ご存知なのですね。だいたい半年です。」
「……そうか。悔いのないように。…ニャ。」
少しだけ、気遣うような表情を見せてフードを被り直した。
みんなが集まる中央に立って、再び喋りだした。
「改めて名乗ろう。ペルナ・ソシル・ヴァイン。名前はソシルだ。」
「あれっペルナじゃないの?」
鈴蘭の至極真っ当な意見。
自分でペルナと言っていた。
「ああ、ペルナではない。ただペルナの方が好きだ。それでいいだろう?」
「ま、なんでもいいわい。毎日飯付き、あんたの場合は国に着いたらどっか行くんだろ?」
「そうだな、どこでも客が待っているニャ。」
「滞在時間は長くて1ヶ月だが問題は無いか?」
「構わない。ちょうどいいくらいだ。」
「決まりじゃ。空いてるところなら好きに使ってくれ。…参ったな。そろそろ拡張しねぇと。」
なんだが大所帯になってきた。
あたし達も入ってすぐだと思ったけど直ぐにまた新しい加入者。
ギルドってのはこう言うものなのかね?
なにはともあれ、賑やかになるとはとてもいい。
旅は賑やかで上等。
「…ふむふむ。…ふーむ。」
「なんじゃ。」
マスターの方向を見ている。
「酒、これ全部お前のか。」
「わしのってわけじゃねーけどよ。飲むのはほとんどわしじゃな。ガッハッハッ!!」
「良い品ばかりだ。」
「あんた酒は飲めんのか?」
「嗜む程度にはな。ただペルナには酒よりもマタタビというものがある。」
「……猫だからか。どいつもこいつも飲まねぇな!」
マタタビ……さっきみたいに野生を取り戻してそうだ。
「そろそろ昼時か。蓮!休憩だー!止めていいぞォー。」
徐々に減速し、泊まる瞬間にガタンと大きく揺れる。
いやほんと、お疲れ様だよ。
〜川沿い〜
川の流れる音。
座禅を組み、刀を握る。
地面に突き刺してそのまま維持。
自然をこの体で感じる。
全て受け止める。
瞑想ってやつだ。
明鏡止水って言葉がある。
悪いこと考えてなくて、とっても綺麗な心のこと。
厳密に言うと違うけどだいたいそんな感じ。
あたしは刀を習う上で、これを肝に銘じろって師匠に言われた。
ガキん時はわかんなかったけど、今はしっかりと分かってる。
私はこの明鏡止水を完成させられていない。
私が思うに師匠だってそうだ。
邪念を捨てて、清らかな心持ちを。
無理だ、そんなこと。
刀を持つこと自体悪どい。
私はそう思った。
だから私は自分なりに考えた。
そうしてたどり着いたのが、悪いことを悪いと思わないこと。
それなら邪念だって生まれない。
刀使いって、そういうもの。
「お、楪!何してんだ?」
現れたのはヴェン。
軽い足取りであたしの隣まで来る。
「修業の一環…かな?」
「へー!なんかすげーな!どんな効果あるんだ?」
「言っとくけど、ヴェンには全く意味が無いよ〜?」
「なんだよ、じゃあいいや。」
ガッカリした顔で川に向かっていった。
水をすくって、顔を洗っている。
明鏡止水と純粋。
あたしは同じもんだって思ってる。
だから、ヴェンはこんなのやんなくていい。
瞑想をするのはいつだって既に大人になって汚れを知った奴らしか居ないから。
何も知らないってのは、1番いいんじゃないかな。
…そんなことはないか。
「ふぅ〜っ!」
「ヴェン、ちょっと来な?」
「なんだ?」
立ち上がって、刀を向ける。
「うおっ、なんだよ!?」
体を仰け反らせて、刀を避ける。
「もし、ここであたしに斬られちゃったらどうする?」
「どうするもこうするも、俺は最強だからそのままぶっ倒してやるぜ?」
「ははっ!それは頼もしいや。あたしはもう少しここにいるよ、行く時になってもいなかったら呼んで?ここにいるから。」
あたしは刀使いになってから今に至るまで。
なんのために刀を振るうのか。
ずっと分からないままだ。
守る人も居ない、競う人も全てあたしに叶わない。
斬りたい人も居なければ、戦いたいって訳でもない。
師匠は言ってた、刀を振るう理由が無ければ持つなって。
嘘ついて刀を振るって、いつの間にか師すら超えていた。
それを師匠にうちあけたら、こう言ってた。
『お前は天才だ。それ以上もそれ以下もない。ただ、刀の師として言う。お前の刀はいつかきっと、何もわからなくなり、どうでもよくなってしまう。』
何がわからなくなるのか、まだ私は知らない、知りえない。
でも、何となく言ってることが分かる。
『飽き』って、事なのかなって。
まだ分からないよ?
でも多分そうなんだろうなーって。
「…。」
刀を抜いて、構える。
川に向かって、刀を振るう。
1回、2回、3回。
変わらぬ鍛錬。
……本気で構える。
体制を低く、自分の持ちうる限りの速さで、力で、技術で。
振り下ろす刹那、甲高い音がする。
音の壁。
次に、衝撃。
地面が割れるんじゃないかってくらいの衝撃波。
冗談無し、川が割れた。
「どうだか。ほんとに人間じゃないのかも。」
『あたしちゃんが思うには〜』
「おーっと、ネタばらしは御免だよ。最後まで取っておかなくちゃ。」
『ネタばらしじゃないよう!』
…あたしはこの力を持ってしてする事が、人探し。
いや、ある意味お似合いなのかもね。
人を殺すよりはマシだ。
あたしがきっと人を斬った時、多分何かが変わると思う。
きっとその時、師匠の言葉の真実が分かる気がする。
『あたしちゃんはそんなこと思わないけどね〜。』
「あらら、そうかい?」
『だって、楪の言ってること全部本当ならさ?』
「うん。」
『何を斬ったって何も思わないんじゃない?』
「……適わないねぇ〜。」
〜拠点〜
「おせぇぞー。何してたんだ?」
「瞑想してたのさ!」
「ほぉ、随分と鍛錬を怠らねぇな。わしなんかもうやりたかねーぞ。」
老体じゃ鍛錬もしんどいのかね?
あたしはやらないと叱られるーっ!
って言って誰がいる訳でもないのにやっちゃうから。
「マスターくらいになったらきっといやでも染み付いてるんじゃない?」
「さあな。蓮、あと2時間くらい頼むぞ。」
「ユレル。キヲツケテ。」
その声で一気にガタンと揺れ、進み始めた。
「いやしかし、今更だが移動するギルドとはまた珍しいな。……ニャ。」
「わしはこういうのが好きなんだ。いいだろ?」
「うむ、浪漫というやつだな?分かるぞ。ペルナも様々な顧客のニーズに寄り添ってきたからな。」
「
まともなこと言ってるようで何も関係ないよね、今のペルナ。
猫みたいに自由ってこと?
…ま、そういうことにしておくか!
暫く揺られていると、森から抜け出した。
この拠点の弱点は山を通れないこと。
少しでも斜面があったらもうおしまいらしい。
スピードつけてドンガラガッシャーン、流石の蓮でも無理だったとの事!
1回やらかしてるんだね…ご愁傷様。
人通りも多くなってきた。
イェソドはとにかく出店とか多かったけど、こっちはどうだろう?
「アステリア、ビナーってどんなのがあるか知ってる?」
「本だけの知識ですので…マスターに聞かれてはどうでしょう。」
「うるせェ〜。本の知識の方がまだマシだぞ。」
「らしいけど!」
「は、はい。では僭越ながら…。」
「私も聞きたい。私たち、ビナーは初めて。」
「あれ、そうなの?」
「オイラと蓮とマスターは1度来たぜ!その後にこの3人を拾ったんだ!ゲブラーだったか?」
確かに戒めの国…だっけ?
なんだか物騒だけど。
「ですね。私とネモはゲブラー生まれです。」
ライラとネモはゲブラーなんだ…。
アレ、あたしの住んでるとこって国的には何処に分類されるんだろう……。
「む、ペルナと同じだな。どこかで会ってるかもしれない。」
「鈴蘭は?」
「私はホド生まれ。色々あってゲブラーに住んでた。育ったのはゲブラーだって言える。」
「ホドは栄光の国と呼ばれていて、大昔、国同士の戦争で勝った国です。王国などを除けば、最も人口が多く、最も栄えた国です!…と、話を戻しましょうか。」
王国は私でも聞いたことがある、マルクトっていう、全部の国を統べてる国!
国の王様!
大王国マルクト!
「ビナーは最大級の書斎、ギルド本部が主な名物です。個人のギルドも沢山あり、どこかにいけば欲しい情報がすぐに手に入るとまで言われているほどの国の情報網。技術や魔法の研究も主にビナーで行われていますね。」
「おーお…よく覚えてるね。」
「読んだ本は全て暗記していますので、お任せ下さい。」
サラッとすごいこと言ったよ。
精霊って全員記憶力凄いのかな?
「特徴としては出店などがほとんどないということですね。国で運営している市場などで国民の皆さんは食料、衣類などを購入しているそうです。その変わり、個人のギルド、酒場などはかなり多く、イェソドと違い夜の方が栄えるらしいです!」
「へ〜。酒飲みが沢山ってこと!」
「おう!酒飲みにはたまんねー場所だぜ〜?酒の名産地でもあるからな!わしはそれしか知らねぇ。」
マスターって人は…。
酒以外に趣味ないのか!
「農業、漁業、は一切行っておらず、他国からの輸入のみ。その代わり他国に技術を提供します。それがビナー…と。確かに国の歴史の本に書いてありました。」
「ふーん。……ん。」
通行人とは違う何かの気配。
走って向かってきてる。
「蓮、ちょっとだけ速度緩めて。前に何かいる。」
「本当?私も前に出る。警戒態勢。」
鈴蘭の指揮で皆が武器を取り始める。
「ペルナは力持ちだが戦いはからっきしだ。自分を守ることしか出来ない、頼んだぞ。」
「わかった。ペルナ、ジャン、アステリアさんはライラの近くに。私は前線を。」
「いざという時は私も力を貸します。」
「わかったぞ。」
「了解だぜっ。頼むぞお前ら〜!」
2人は戦闘要因ではない。
動かす拠点となるとこうなるのもしょうがないのかねー?
「んーーー……。ああ〜。盗賊だ。あれは…魔法使いもいる。あたし対魔法は試したことがないんだよ。ちょっと不安だ。」
「おいおい冗談きついぜ。あんたの速さなら一瞬じゃろ。」
「そんなもんかね?」
「普通魔法使いは魔法しか使わん。懐は無防備じゃ。」
マスターのアドバイス。
なるほどね、前衛は後ろに任せて私は突撃でもしようかな?
「まって、楪。行こうとしてない?」
「うん。不味かったかい?」
「……いや…楪なら多分問題は無いんだろうけど…。一応私は皆を守る役目だからさ…。」
「人数は7人、前衛5、後衛2。後ろが魔法使いだから前はみんなに任せるよ。」
「…楪さんの強さが加わるとこういう時、少し狂うなぁ。」
「おい俺は!?俺は何をすりゃいいんだ?」
ヴェンは目をキラキラさせてきた。
「楽しむもんじゃないからね?とりあえず向かってきた奴らをコテンパンにしてやりな!」
「分かったぜ!」
見えてきた、だがその瞬間にこちらの姿も見えたのか隠れてしまった。
「…本当にいる?」
「今隠れた。人数は分からないけど左右。魔法使う奴はきっとさゆうどちらにもいるだろうね。」
「それなら俺に任せろや。そろそろ腕が鈍ってたんだ。」
そう言って十字槍をブンブン振り回す。
作りは洋風よりのもの。
初めてネモを見た時は絶対素手で戦うと思ったな。
「蓮は大丈夫かい?」
「ココ、マモル。」
確かに、あたしらにとっては一番大事だ!
さて、いつ襲われるか分からない。
あたし気配読みとかすっごい得意なんだ。
森で過ごしてたからって言うのが大きい。
できるだけ音が聞こえやすい位置に立つ。
刀を腰に携えて、目を瞑り音を聞く。
必ず、音がする。
歩く時、武器を構える時、飛び出す時。
それをまず聞き逃さないこと。
……上…?
「……ッ!ごめんマスターっ上!ソッチ頼むよっ!」
「おうよ。」
分かってたような相槌。
聞こえたのは木の上あたりからの音。
「いくz「とぉぉおおおおおうっ!」
「ぐほおおおお!?」
上からの奇襲する予定だったんだろうけど、わかったので先手で飛び膝蹴り。
「悪ぃなあんちゃん達、犯罪者には加減できねーぜ。」
爺さんとは思えないほどの身のこなしで宙に浮くように高く飛び、反対にいた盗賊もたたき落とした。
「クソっ!構わねぇ!たたみかけろ!」
予想通り左右分かれて攻めて来た。
私が見えてるので4人、反対に3人かな?
「皆、作戦通りに!」
「おう!」
「了解!」
「了解だー!いくぜえええっ!」
気づかれないように裏を取る。
いつだって刀使いは意地汚く勝利を掴み取るもんさ!
使わないで勝てるならそれに越したことはない…っと!
「やあ!魔法使いさん、こんにちは。」
「なっ!?」
いかにも魔法使いのような服装、杖、オマケに本も持ってる。
ま、今この瞬間どっちもおもちゃになっちゃったわけだけど。
「そんなに両手が塞がっちゃあたしをどうにも出来ないね?」
「きさまっ!」
「おっと〜動かない方がいいよ?首が飛ぶかもしれないね。」
首元で刀をちらつかせる。
大体の人はこうやって死をチラつかせれば大人しくなる。
「ぐ……。」
「ま、寝ててもらうけど…ねっ!」
「ぐぉっ!?」
鞘で首の後ろを思いっきり叩いた。
そのまま前に倒れてしまう。
痛さで悶えてるのか、動けなくなったのか。
別にこれは気絶してもしなくてもダウンするのは変わらない。
前を見るとわちゃわちゃしてたので、とりあえず1人に目掛けて飛び蹴り。
「とうっ!」
「ぐほお!?」
「ナイスだぜ楪!」
親指を立てて褒めたてるヴェン。
「お易い御用、そっちは?」
「マスターが本気出して全員叩きのめした。いつにもなく容赦なかったぞ。」
ネモが既に武器を構えずに座り込んでいた。
奥を覗いてみると縄で縛られた盗賊たち。
「は、速いねぇ…。」
「当たり前じゃろ、どんな盗賊でも突き出しゃ金になる。ギルドにとっちゃあ餌だ。」
「くそっ、あんたらギルドかよっ。なんでこんな移動の仕方を…!」
「ええ?文句あんのか?まだワシとやり足りねぇって?」
「ひぃっ!」
と、意外と楽に片付いた。
意外にあたしより強いやつってそうそういないのかね〜。
あたし自身まだ上達の余地があると思ってるんだけど。
「よし、蓮。進めていいぞ。」
捕まえた盗賊を拠点に乗せて動き出した。
このままビナーに持っていくのかな。
「ふむ、盗賊さんたちよ。」
「な、なんだよっ。」
おもむろにペルナが話しかける。
「時に、ペルナの商品に興味はないか?特別価格で売ってやろう。」
「誰が買うかっ!クソ!」
「む、そうか…残念だ。」
敵でさえ物を売る意思。
これが商人なのか?
……絶対違う気がするけど。
そうしてしばらくした後。
空を見上げると太陽がちょうど真上にある頃。
国の全貌が見えてきた。
「お〜。あれがビナーかい?」
「そうですね。記憶と合致します。」
入口らしき所、守るような国境の壁は設置されておらず、国全体が漠然と見える。
特に大きい建物はここからじゃ見当たらない。
整備されている、と言った印象を受ける。
イェソドはレンガ造りが基本だった。
ビナーは木造と石造が基本になってるっぽい。
『あたしちゃんビビッときてます!この中にあたしちゃんの元の持ち主のなにかに繋がるなにかがどこかにあるとビビッときてますよぉっ!』
「それビビッと来てないんじゃないかい?」
『ふふ、バレたか…!』
しっかし、国が違うだけで建物すら違うのはすごいな〜。
それから数分経って入口付近。
入国審査って奴かな。
「次。」
門付近にいた兵士が声をかける。
「ギルド、Gardensだ。」
「確認します。」
見てみると、書類やらなんやらを確認している。
「実在を確認しました。証明印を。」
「ほれ。」
差し出された紙になにかの押し印をするマスター。
「一致しますね、どうぞ。」
あっけなく審査は終わり、中に入る。
「へー。そんな簡単でいいんだね。」
「ギルドを作って、尚且つ無名ギルドだと楽なんだわ。大手になっちまうと何十倍も確認作業があるぞ。偽物とかも現れやがるからな。無名のとこの印なんて誰も知らねぇだろ?」
「大変そうだねぇ。ちなみにどこに行くんだい?」
「おう、ビナーには本拠点がある。そこに行く。」
「えっ、マスター。初耳なんだけど。」
鈴蘭が割り込んで話す。
ネモやライラもちらっと見ている。
反応からみて2人も初耳か。
「そりゃな。蓮とジャンにしか言ってねぇ。言う必要もなかった。別にいいだろ。」
「まあそうだけど…。広い?」
「普通だな。」
「普通……ね。」
頭を抱える仕草をする鈴蘭。
見ていたらこっちによってきて耳打ちする。
「マスターの普通、絶対普通じゃないから。気をつけて。狭いかもだし、広いかも。」
「あっはは……そうなんだ。」
石造りの道を進む。
拠点の上に乗っていても、いつもの土などの感覚とは違うのがはっきりと分かる。
言われていた通り出店などはなく通行人も少なめ。
まあ、ここが運送用の通路だからっていうのもあるかも。
当然この拠点は普通の道は通れないからね。
この辺は大体が民家かな?
市場のような印象は受けない。
十字の通路に出て、左を曲がった。
「こっからが娯楽通路だぜ。酒場が多い。そんで1番奥が書斎。その近くにワシらの本拠点だ。」
「楽しみです!」
「娯楽だかなんだか知らないけどよ…最強になれる場所はあんのか?」
「ないじゃろ。」
「ちぇっ、つまんねーなー。」
不貞腐れて自分のスペースで寝転がった。
ヴェンは口を開いたらいつもそれだ。
「む、ペルナ気付いたぞ。もしかしなくても許可を取らないと商売が出来ないニャ?」
「知らねーな。そんときゃそんときだろ。自由にやりゃいい。なんか言われたらワシが何とかしてやる。」
「頼もしいな爺さん。ペルニャは拠点とやらに着いたら一旦お別れニャ。」
「……ニャが増えてる。」
ぼそっと一言鈴蘭。
ペルナも楽しみなのかな?
「アステリアは何か知らないかい?」
「国の条例までは…すみません。」
「いや、気にしないでいいよ。マスターが何とかしてくれる!!」
「おいおい、確かに言いはしたがなんでもワシ任せにするなよ。これでも老体だぞ。」
「はーい。」
「ゆ、楪さん…。」
そして数分、拠点に揺られて本拠点に到着……。
「え、コレ?」
「うわーお、こりゃひでーな。数ヶ月放っておいただけでこれかよ。」
「……手入れとか誰にも頼んでなかったんだね。はあ…。」
鈴蘭がため息をつくのも分かる。
普通にボロ屋。
蜘蛛の巣がついてそうって偏見で思えるくらい。
まあ、あたしからみたら普通に住めるけど。
ずっと住むって考えたらいつか崩れるんじゃないかって心配にはなるね。
「ま、任せとけ。こういうのはオイラの出番だ。こういうのも想定して倉庫に木材入れといたんだ。」
「お前ら、荷物もって降りろー。この拠点一旦しまうからな。」
「うっす。」
「ネモ師匠!俺は荷物がないぞ!何を持てばいい?」
「わかんね、別にいらねぇんじゃねぇの?」
「そ、そういう時は荷物持ちをやらせるのが普通にじゃねーのか!」
「知らん知らん、俺も対して無いんだよ。」
「そ、そうか…。」
何してんだか。
「中、見ていいかい?」
「ん、いいけど奥まで入るなよ。」
「わかった。」
そうして、扉を開けてみると…。
「なんだこりゃ、床がないじゃないかい。」
床が土。
これじゃ満足に寝れやしない…。
「この拠点、元々この床なんだよ。ほら見てろ。」
と、指を刺された先。
さっきまでいた拠点の床を蓮が4つに割っていた!
…ように見えただけで、元々4つの部品がくっついてたみたい。
全然切れ目見えなかった。
これもジャンの技術なのかね?
「…でも、入らなくないかい?」
「そこの横のデケェ扉があるだろ?そっから。」
「あ〜。なるほどね。ちなみになんの部屋?」
「蓮の部屋だ。もっとでかくしてやりたかったんだが、寝る隙間さえあればいいって。馬小屋みてぇになっちまった。」
「謙虚だよねぇ蓮って。」
マスターと話していると、本拠点の修理をジャンが始めていた。
とんてんかんとん金槌を振っている。
他のみんなも手伝っているようだ。
そこにこちらへ向かってペルナが来た。
「いいことを思いついた。夜に酒場兼何でも屋になるのはどうだろうか。」
「却下だ。めんどくせぇ。」
「むぅ、しょうがない。」
と、残念そうな顔をして修復の輪に加わった。
商売は夜にするのかな?
「おーい、楪ぁ!悪ぃけどこの木材。線の部分で切ってくんねぇか?」
2階部分にいるジャンからお声がけ。
「投げて渡していいよー!」
「だ、大丈夫かよ…。いくぞー?」
私目掛けて落ちてくる木材を、スパッと!
「ヴェン!」
と、取りに行くのも面倒なので取らせる。
「おおっと!…急だぜ楪。ほらよージャーン!」
「待て待てぇー!オイラは力持ちじゃねぇんだよっ!2階に上がってきてくれ!」
「わかったぜ。」
蓮がのそのそ出てきた。
「ユカ、ツケタ。」
「ありがとな蓮。お前らー。中入っていいぞー。」
ではお邪魔して。
まあ、床が一緒なら何も変わりはしない気がするけどね。
次回に続く
以降例のヤツ
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「ビニ!」
「コンビニです。登場キャラクターの好きな物や解説をする後書きコーナーです。楪とアステリアと、天の声のツキミさんでお送りします。」
『まっじめ〜!』
「でも今回客来ないらしいよ?」
「え?蓮さんが来るって…」
「入れんでしょ。」
「……あまりの正論に言い返す言葉もありません。」
『好きな物は肉らしいよ!ああ見えて16歳らしいから子供っぽいね。』
「嘘っ!?そんなに若いの?」
「ゴミ回収にきたぜ〜。」
「ジャンも客じゃないんだ…。」
「オイラは好きなもんねぇーからな。なんでも好きだからこの店崩壊しちまうぞ。そんなことよりもオイラはがらくたいじりと爆発が好きなんだよっ!だからゴミ収集だぜ。」
「私でもその辺の知識は詳しくないです。ジャンさんの固有の分野ですね。」
「まあでもこの世界観ならジャンの発明品も普通に実用化されてそうだけどね。」
「言わないでください。」
『現にあたしちゃんマイク使ってるしね〜。』
「マイクだったんですか……ってほんとうにどうやって喋ってるんですか。普段は聞こえすらしないのに。」
『あたしちゃんがゲストの回で、よろしくぅー!』
「ちゃんちゃん。」
「オイラの要素なくないか?まあいいけどよぉ。」
「今回はここまで〜あじゃした〜。」
『喋る剣とか刀だって珍しくない!ディム〇ーース!!』
「殺劇舞〇剣!またのご来店を!」
「私精霊ですけど別にマクスウ〇ルから生まれてないですからね。お疲れ様です。」
「あ、アステリアがノった。」




