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12頁目 救い救われ、道を往く

「戻ったよ。」

「腹を決めた顔をしているな。」

「とりあえず、刀の腕だけでも戻さなくちゃと思って。今のあたしは前と比べてかなり弱くなってる。」


ラル、ウルゴア、残華が教会内に佇んでいる。


「……と、その前に確認したいことがあるんだけど……ねえウルゴア。」

「なんでしょうか?」

「……エリカはちゃんとあそこにいる?」

「いるも何も、自分で出ることすら出来ないと思いますが。」

「……確認した方がいい。」


少し青ざめたような表情で地下室への扉を勢いよく開ける。


「いないのか?」

「……さっきも話したけど、あたしには恐らく人格が3つあった。いつもみんなに見せていた、()()()が消えた。」

「それがどう関係している?」

「勘でしかないけど、何かあると思った。」


当たらないで欲しい勘だったが、結果はすぐに分かった。

大急ぎで階段を駆け上る音が聞こえる。

それで何が起きたかは理解出来てしまう。


「セリカがいません……ッ!」

「……どういうことだ。あそこから出る方法はあの階段を登るしかないぞ?」

「……微量ですが魔法を行使した痕跡がありました。エリカのではない別人の。」

「このタイミングで動く奴らなんて幽霊野郎しか居ない。すぐに調査を始めろ。」


ウルゴアはその言葉を聞くやいなや血気迫る表情で外へ飛び出した。

……あんな表情初めて見た。

いや、当然か。

他でもない妹なんだから。


「イレンがいないと効率が下がるな。私も出るべきか。」

「……ごめん。」


誰がなんと言おうと、彼を殺したのはあたし。

償う必要もある。


「手伝えることはある?」

「別に気負うな、アイツはアイツでいつか死ぬべきクソ野郎だからな。それに。」

「でも。」


謝罪をしようとしたところで誰かの足音がする。


「おや!心配をしてくれたので?ありがたいなぁ。」

「えっ。」

「このクソは基本魔法を使えないが一つだけ地獄みたいな魔法を使える。乗り移りだ。」


確かにあの時あった顔じゃない。

少し体も小さくて顔付きも少し違う。

というか性別が違う。

茶髪は同じだけど、短かったのが長いポニーテールになってる。


「酷いなぁ。っと。話は今聞いた。既に信者達に探させてるからラルは自分のしたいことをすればいいよ。僕は何をすればいい?」

「さっさとどっか行け。」


ぞんざいな扱いだな、と思いながら話を聞いていると残華が傍に来た。


「……アレはなんだ?見ているだけで悪寒がする。」


残華もあたしと同様感じ取ったらしい。

……なんというか、この人の雰囲気は掴みどころがない。

そんななのに1度触れてしまったら底なし沼に入るみたいに彼に魅入ってしまいそうな。


「分かる。」

「ムカついたら殺していい。」

「あはは、酷いや。ともかく僕も探してあげなきゃ。先行くね。」


ニコニコとした表情のままなのが異質さを物語る。


「……私が出なくて良いなら、少し情報をまとめたい。他に持ってる情報はないのか、楪。」

「定かじゃないけど、ラル達が言う神的存在のことについて。」

「聞こう。」


あたしが持っている、解決しなければならないこと、情報を全て話した。

剣の持ち主、誰かの欠片集め、精霊王のこと。

状況証拠から、確実に神的存在が居る可能性が高くてあたしのやることにも密接に絡み合ってるということ。


「────────なるほど。」


ラルはしばらく考え抜く。


「……ラルの方もいい加減聞きたいな。相当なこと企んでるでしょ?」

「別にそうでも無い。神の存在を信じるものを殺すだけだ。」

「相当だよ?」

「……言い方が悪いか。全ての人間が神を信じなくなればいい。ウルゴアを人神にし、イレンの力で既存の全信者の鞍替えを行う。頑固な馬鹿どもは私が消す。ただそれだけだ。」


……確かに、それならみんなが言うような見えない神を信じることはなくなる。

他人に押付けてまでしなければならないことなのかな?

そこまで神に恨みがある……?



「納得いかない顔をしている。」

「うん、あんまり理解出来てない。……そこまでするような理由があるんだよね?」

「……お前には真実を話すべきか。」


遠い目で、教会の壊れた石像を見つめる。













人は誰だって悪魔になれる。

それも簡単に。

私はそれを知っている。

逆に天使にもなれる。

子供の頃の私は、無愛想で冷たかったけど。

正当なシスターであろうとしていた。


「やーい!悪魔悪魔!近寄るなー!」

「ッ……!」


ただ、私は典型的ないじめられっ子だった。

左右違う色の目、差別するのにはもってこいの理由。

子供ながらに私は考えていた。

本当にくだらないのは見て見ぬふりをする周りのヤツらだ。

やめろと手を差し伸べることも出来るはず。

あるいは、輪になって私を叩くことも。

だが、多くの人間はどちらもしない。

正義にも悪にもなれない。

私はそいつらの方が嫌いだった。

ガキの頃なんて逆らうほどの力もない。

武器を使わない限りは勝ち目すらない。

両親も協会関係者、私は教会で育てられてきた。

ただ、神を信じきって盲目的になり全てを赦せとふざけたことを抜かす。

そんなある日、救いの手が現れた。

それがウルゴア。

紛うことなき、私にとっての神だった。

ウルゴアは嫌だと言うだろうが、私にとっては神に違いない。


「ウルゴアです!よろしくお願いしますね。」

「……ああ。」


教会に突如現れたまさに天使のような彼女。

最初は社交辞令だけだった。

ウルゴアと関係を持った発端はなんて事ない子供のイタズラ。

私の持ち物が盗まれたことがあった。

犯人はよく私をいじめるガキだったが、それを目撃したウルゴアは引き止め真正面から叱った。

いじめの標的が私からウルゴアに移ったのだが、決して折れず立ち向かっていた。

その姿が有るだけで、私は救われていた。

……まだ、エリカを失っていない頃の話だ。

私達は順当に成長し、ウルゴアは圧倒的な力を身につけた。

アイツは元からああだったが、私はこの辺りのタイミングで銃を手に入れた。

酷いものだ、私に課せられる仕事は殺しばかりだった。

それでも私は、天使であろうとしていた。

誰かが喜べるのであれば、それでいいと思っていた。

まだ神を信じていた。

どうか、どうか従うことしか出来ない私を赦してくれと。

懇願にも近い祈りだった。






そして長い月日が経ち、年齢も18歳を越えようとする頃。

教会で原因不明の爆発が起きる。

恐らくは何らかの魔力行使が起きていた。

それも異常なレベルの者だ、一般の魔法はおろか、当時の一流の魔術師でも出来ないほどのだ。

教会内は酷い惨状になる。

信者が沢山死んで、建物が崩れ、それに巻き添えになって圧死する。

爆発による火災で息が出来ずに死ぬ、そのまま燃えて死ぬ。

地獄がそこにはあった。

神を慕う神聖な場所でだ。

まだ真っ当な思考を残していた私は生存者の救助を必死になって行う。

教会内随一の優等生、ウルゴアもそうなのだろうと心のどこかで考えていた。

今まで聞いたことの無い叫ぶ様な彼女の声を聞くまでは。


「エリカぁっ!!!!返事して!!エリカぁっ!!!!何処にいるの!!?」


火傷にも臆せず、瓦礫を必死になって持ち上げたり、火の中に入っていく彼女を見た。


「ウルゴアッ!それ以上先は危険だッ!いくらお前でもッ……!」

「うるさいッ!!!私のッ……私の大切な妹なんだよ!?……見捨てるわけにはッ……!!!」


彼女から乱暴な言葉を聞くのは初めてだった。

家族を失うのは誰だって悲しいことだと理解はしていた。


「……知り合いを失いたくは無い。私も探す、急ぐぞ。」


それから数分、()()は見つかった。

全身大火傷、祈りの途中だった為か、木材の破片が手と手同士で貫通してくっついている。

綺麗だった羽も焼け焦げ、意識が朦朧としている。


「ウルゴアッ!見つけたッ、急いで運べッ。」

「ッ……!」


即座に大きな翼を広げてこちらに来る。

俄然、表情は苦しいままだ。

なんなら更に酷い顔をしていた。


「ッ……教会が崩れそうだ。時間が無い。応急処置より逃げる方が先だ。」

「エリカッ……無事でいてッ……。アイリスも捕まって!」


差し伸べられた手を掴んで、その場から離脱する。

……素人目で見てもエリカは助からないように見えた。

呼吸もほぼしていない。

損傷も激しく、出血も酷い。

一縷の望みにかけて医者の元へ。

付近で騒ぎを聞き負傷者の手当をする医師団の拠点が出来ていたため、そこへ向かった。


「……っ致命傷すぎます。最前は尽くしますが……。」

「嫌ぁ……エリカぁ……!」


私はそれを眺めることしか出来なかった。

治癒魔法にも限界はある。

ただ、いつもの様に神に願うことしか出来なかった。


「……ッ。」


まだ救える人がいるかもしれない。

そう思ってすぐに走り出す。

周囲の状況を私は再認識した。

……これが。

これが神に祈りを捧げていた罪なき者達の末路なのか?


「ふざけるなよ。……何が神だ。」


死にゆく人、泣き叫ぶ人。

本当に神がいるのなら、助けてくれよ。


「クソッ……クソクソッ……!!何のために私はッ……。」


知ってるだろう、私とウルゴアが使う()()

本来は神の声を聞く為に使う魔法だ。

神の意志を反映した擬似的な神を作り出し、そこから声を聞く。

言ってしまえばある種の造られた神。

シスターなら誰でも使える。

私はこれを悪用した。

その神を自分に移す。

実在しない造られた神とはいえ、信仰の力でこの魔法はその辺の魔法とは違うものになっていた。


「神権行使。」


ウルゴアならば、負荷なくこれを出来ただろう。

それほどウルゴア自身の器も大きいという話。

ただ、私には大きすぎた。


「今救わずして何が神だッ!どうなってもいいッ!皆を救えッ!!!」


私の声と共に雪のような小さな塊が舞い始める。

それが人肌に触れると、みるみる傷が癒える。

私の体には本当に天使の翼のようなものが生えていた。


「はァッ……はァッ……!」


……代償はあった。

小さな雪で治癒され消えた苦痛が私に流れ込む。

この姿は見せまいと、途切れそうな意識を何とか繋ぎながら近くの茂みに隠れる。

実際に体は損傷していない。

本当に受けたかのような幻痛が襲いかかってくる。

熱い、苦しい、重い、痛い。

いつまでも消えないソレと戦い続けた。

きっと一日中は唸っていた。

ようやっと収まり、慣れてきた頃。


「……アイリス!?やっと見つけたッ……!」


ウルゴアがそこにいた。

知ってる人が来たからなのか急に痛みが無くなる。


「きっと、アイリスが何かしたんですよね?……エリカはかろうじて生き延びました。……生き延びただけではありますが。」


深い安心に包まれる。


「酷い汗、一体何をしたんですか?」

「……。」


全て話そうとして、ひとつ気付いた。

……私は神の真似事をした。

人を救って、きっと慕われたのだろう。

だが、それでも苦痛が多すぎる。

耐えられるわけが無い。

私は根っからの聖人などでは無い。

擬似的なものではあるが神と同じ立場になった。

()()()()

こんなに辛いこと、したくないに決まっている。

怒りを向ける先を失った。

神には、義務しかないのだろう。


「神は、誰も救えない。」

「……え?」


神を救うのは誰だ。

神によくやったと言ってやれる人間はどこにいる。

本当に心から感謝されたとて、この苦痛が消えるわけじゃない。

誰が、()()()()()()()()


「誰も救えない神なんて必要ない。私が殺してやる(救ってやる)。」


私は空に銃を放つ。


「神権行使、霊気具現。神がいるなら私は要らず、善を持って善を為せ。罪を晒し、(わたし)の声を聞け。」


神権を使い、神の声を聞く魔法を消失させた。


「……聞こえない。私達を見捨てたってことですか?」


私なら見捨てる。

だって、辛いものは辛い。

苦しいものは苦しい。


「私達を裏切ったってことですか。」


そうだ、裏切った。

紛れもない事実。


「ッ……!!!!」


……でも、知らないことは罪では無い。

そう思っても仕方ない。

神はきっと生まれながら、人を救うという宿命しか存在しない。

誰も、誰も悪くないんだ。

ならば、変えよう。

私が世界を変えよう。

誰も、苦しまない世界を。

神なんて必要なくなる世界を。












「改めて自己紹介しよう、レヴォルト・アイリス・ラル。私も偽神だ。」


美しく立派な白翼が現れた。

……本当なんだ。


「その話をしてくれたってことは。」

「少ない可能性だがな。」


私が探してる剣の持ち主がその本物の神なのだろうか。

薄い線で繋がったくらいで、ほぼこじつけにも近い。

ただ、話は似ている。

憤怒、拒絶、虚無、失意。

きっとラルも感じているはずだ。


「……それってさ、ウルゴアは知ってるの?」

「伝えていない。最初にあった時も知っているだろう。無知は罪では無い。」


盲目の信徒には親切になって接してたっけ。


「当然神になる気は無い。私ら神頼みなんてする悪魔共を消すだけだ。もう、人は自分の力で進めるはずなんだ。」

「なんとも難しい話だ。刀の事しか考えてない此方にはまだ早いな。」


残華は残華でマイペースだ。

昔のあたしもそうしてただろうけど。


「私としても神に近しい存在については気になる。全面的に協力する。」

「わかったよ。……じゃああたし達はどうしよっか。」

「……その前に、ウルゴアには言うなよ。」

「もちろん。」











「━━━━━━━━━━知っています、最初から全て。だから、私は貴方の傍にいる。……救ってくれたのは紛れもない貴方だから。」

















「……見えないなぁ。……ちょっと不謹慎だけど、今のこの気持ちが懐かしくて嬉しいな。」


輝く月がいる。

ただ、空を眺めている。


「もう、私の周りには誰もいなくなっちゃった。」


すやすやと眠る白い少女を横目に、ずぅーっと空を眺めている。

やはりどこか幼さが残るのは、精霊王。


「……でも。今の私がこの状態なら、最悪の事態が起きた時は流石に助けに行っても大丈夫でしょ?」


虚空に向かって語りかけると、返事したかのように大きな突風が起こる。


「不安要素はまだある。楪のことはもちろんだけど彼女なら乗り越えてくれる。本命は……龍が残した宝物。あの子の『失意』はもうそろそろ。それに、私も知らないあと1つが……。」








「さ、ここでくたばっては居られんぞ。直ぐに其方を叩きに叩きまくって失った分を取り戻さねばな!」

「あはは……お手柔らかにお願いしたいなぁ。」


数日経って、体の怪我も治った頃。

あたしを構成していたものが欠けて、刀を使った動きすら危うくなってる。

なんたって動いてたのは仮面のあたしか虚無のあたし。

体は蝕むことになるけど最悪の時は虚無の力を借りるとして、それ以外は自分がやらなきゃ行けない。

前のように虚無の力を使ってちゃ目的を果たす前に私がもたない。


「安心しろ、お前は天才だ。動きくらいは体が勝手に覚えてるはずだ。」

「そう……かな?」

「軽く稽古をしよう。懐かしいだろう、木刀だ。」


同じ長さの木刀が2つ。

子供の頃以来かな、真剣じゃないのを持つのは。


「軽くチャンバラごっこと行こう。」


残華も珍しく、普通の構え。

すぐに張り詰めた空気感になる。

相手の動きを見て、静止。

ぐんと重く体に重圧がかかる。


「せぇっ!!」


先に動いたのはあたし。

どれだけやれるかの意味合いも込めてる。

本当に体が覚えてるかどうか。


「ふッ。」


綺麗に一刀目の袈裟斬りが弾かれる。

あたしの型もベースは真っ当な流派を元にしてる。

互いに根底にある型に沿った動き。

一つ一つの技をにしっかりとした解答が用意されている。

当然だが、付け入る隙がない。

だから予想外を作る必要がある。

圧倒的な怪力、もしくはテンポを遅らせる。

はたまた合理的では無い動き。

様々な方法で相手の防御を崩す必要があるが、あたしが得意なのはいつだって速さだった。


「そこッ!」


一旦距離を離れて急加速。

わざと相手に受けを取らせる。

上からの斬撃を食らわせるが、そっちは囮。

刀を滑らせ本命を準備。

懐に潜り込んで、逆袈裟。


「ぬうッ!?」


うん、やっぱり残華は守りに関しては圧倒的に私の上を行く。

この不意打ちを防がれちゃったら苦しい。


「まだまだッ!」


剣戟が響くが、一つ一つ全てが軽い。

絶対に当てるべき斬撃を見定める。

どこなら当たる?

どのタイミングなら当たる?


「はああああッ……!」


全てが伏線、斬って斬って斬りまくって。

それら全てを受け流される。


「ここッ!」


小さな体の癖して建物みたいにドシッとした重心は、ほんの僅かだが、ズレたのを感じ取った。

それを見逃さず突き。


「だろうなッ!」


今回は上を行かれた。

私の行動が先読みされてたみたい。

重心はズレたのではなく、移動した。

前に倒れ込むように回避して、突いた木刀を弾き飛ばされる。


「ッ!」


一応見てから、相手の視線の前に立つように距離を取る。

あたしの強みは刀に留まらない!

ここから……ッ。


「まてまてッ!チャンバラごっこと言っただろう!?……全く、変わらないな。相変わらずの負けず嫌いだ。」

「あはは……ごめんつい。」


勢い余って転んだ。

そのまま座って話を聞く。


「いやしかし、心配することもなかったな。動きは衰えていない。心がついて行くのを待つだけだ。」


しつこく子供の頃から教えらてた考えの一つ。

心、技、体が伴っていないと直ぐに崩れてしまう。

心がなければ、直ぐに崩れて、技がなければ負ける。

体がなければ当然ダメ。


「うん、少しずつ取り戻していくつもり。」

「あと何十本やろうか?」

「リハビリだからね!?」


お互いに木刀を構えたその瞬間、突如轟音が響く。

爆発音にも似たようなそれはおそらくそう遠くは無い位置。


「……なんだ?変な感じ。」

「魔法……では無いよな?」


『はーい田舎のバカ共こんにちはー!どうやら厄介なやつが弱っているらしいね!すぐ殺します!』


ちぐはぐで気持ち悪い音。

不快感だけが伝わってくる。


「あー……。生き損ないさんか。」

「なんだそれは?」

「危なそうな奴!実態がないからどうしようもなくてさ。」


『いやいや、こちらからも攻撃は出来ないから!ま、という訳でプレゼントだよ。』


大きな足音が聞こえてくる。

規則的に地面が大きく揺れていた。

……そんな手品みたいなこともできるのか。


「……おぉ!龍か!」


現れたのは巨大なドラゴン。

地に足つけてどしどし歩いてきた。

オマケにこっちみてるときた。

確実にこっちを狙ってくるだろうけど……。


「感心してる場合じゃなく!どうかな、ドラゴンって刀通る!?」

「鱗のない部分を……いやまずデカすぎる!何をしてもかすり傷じゃないのかこれは!」


お互いわちゃわちゃと慌てる。

そうしているうちにドラゴンの尻尾が迫ってきた。


「残華!」

(あい)!」


タイミングを合わせて同じ場所を斬る。


「手応え無し。」

「でも斬れてるっぽい!」


ドラゴンはダメージを負ってるような動きをする。

血も出なければ斬った感覚もないけど。


『全然弱ってないじゃん!嘘つかれた!ヤダヤダヤダ!』

「本物よりは弱いみたいだね。どんどん行こう。」


あたしは速さを活かしてドラゴンに登って上の方。

残華は地上でどっしりずばっと。


「これでは案山子だな。」


2人で刻みに刻んで、あっという間にドラゴンは煙になって消えてしまった。


『場所が悪いなぁ。教会の近くでやるもんじゃねぇ。本調子出ませんわ。』


「やーい!バカアホマヌケ!弱ったあたしを仕留められない貧弱!」

『まあいい、本物はまた取っておくべきだしな。……ちょっかいかけただけだ。次は殺す。』


ずっと不快感が無くなっていつもの感覚に戻る。

アイツが存在するだけで感覚が気持ち悪くなる。

……ウルゴアが言うには死者の怨念が詰まってるらしい。


「突然来て突然消えたな。」

「なーんか面倒なのに絡まれちゃってね。」

「む、調子を取り戻してきたか?」

「そう?刀持ってたらやっぱ元気になるのかも。」


正直、落ち着く感じはする。

刀を握っている時だけは自分を客観視できる。

なんだかんだで好きなんだな、刀。


「先程、やつが()()などと言ってなかったか?」

「本物の龍かー、キツイなー。刀が通るかどうかさえ怪しい。」

「今考えても仕方あるまい。」

「……どうする?流石に疲れちゃった。」

「休息は必要だろう。一旦やめにしよう。」


2人で再び教会内に入っていく。

当然だが、誰もいない。

自分的には復帰の目処は見えてきている。

万全な状態でみんなの所に戻るためには何をするべきか考えよう。

……間違いなく、必要なのは精神。

そもそもあたしの目的も完遂してないし。

ほんと、やることは山積みだけど。


「……あ。」

「どうした?」

「いや、ふとさ。故郷に帰ってみようかなって。」


師匠のいる故郷。

遠くはあるけど、明日あたりにウルゴアに頼めば連れて行ってくれそう。

……それに、やっぱり必要だと思う。

こういう時に師匠の言葉を聞いて、初心に帰ってみる。


「良いな。此方も同行していいか?気になるぞ。」

「ウルゴアに頭下げなきゃね。」


予定は決まった。

ウルゴアもエリカを探すため動き回ってる。

迷惑はかけるけどあたしにも必要なことだ。

……何も無い。

今まではそう論じてきた。

確かに今もそうだ、何も無い。

無い。けど。

これからは違う。

ここからあたしは、何かかがあるあたしへ変わっていく必要がある。

結果的に探して探して本当に何も無かったとしても。

歩いて来た道は、それなりに綺麗だったと言えるようになりたい。

あたしが、あたしであるために。

まだ有る。

私には時間がある、未来がある。

━━━━━仲間がある。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

鍛錬 沢山

実践なし


また新たに筆をとる。

これもまた、自分が自分であるためのものだと思う。

今みたら、ちょっと恥ずかしいのかもしれないけど。

少し経った後、この手記を見て笑い飛ばせるくらいには。

やることは多いけど、ひとつひとつ解決していこう。

受けたお願いをごめんと切り捨てるのは良くないしね。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

……1年も空いたらしいです。

本当にすいません。

何を書けばいいのか分からなくなってしまってました。

あと別ゲー2時間食われてました。

……こんな事言うのもなんですけどあまり期待はしないでください。

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