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1頁目 旅の始まり

1ヶ月後とか言ったけど我慢できなかったので投稿です

前作、月下の魔王城と少し繋がりがあります。

見なくても楽しめるようになっておりますが見るともっと楽しいかも!

どちらもご覧下さい。

それではどうぞ!

ここはなんでもない森の奥にある小さな村。

川が流れ、木造の家が多くある。

自然と一体化したこの場所。

そんな場所で起こる、小さな出来事。

これは、1人の旅路の始まりである。





『今世紀最大の一大事だ〜!』


そうやって村の人達は叫んで回る。


「うるさいなぁ。」


腰くらいまである黒くて長い髪を後ろで纏めて結う。

胸に包帯をぐるぐる巻きにして背中あたりで縛る。

いつもの適当なズボンを履いた。

手作りの刀差しを左側の腰に付けて刀を差し込む。

日光の眩しさを感じながら扉のない家を出る。

外を見ると子供は走り大騒ぎ、大人は色んな家を回ってゾロゾロと出てくる様子だった。

そんな騒ぐことでもないでしょうに。

まあでも、そうなのかも?

小さな村の人間が1人、旅に出てっちゃうんだからね。

そんなに気にしてないけどよく考えたらそう。


(ゆずりは)!本当に出てっちゃうの!?」


1人の村の子供が言う。

割と悲しそうな顔で。

この子は結構遊んであげたからなぁ。


「おうさ!師匠に技を広めてこい!なんて言われたからね。」


私は刀使い。

私の村はずーっと昔から刀を使う村。

なんでかは知らないけどそういう歴史がある。

刀を使う人のことを刀使いと呼んでて、あたしはそれになった。

理由は面白そうだったからだけど、気付いたら師匠も追い越してた。


「でもあんたの片腕の技なんて、誰も使わないんじゃないかい?」


そ、あたしは隻腕。

左腕がない。

とある事故で、無くした。

何とか生きたのは奇跡。

それでも私は刀を習って、自己流の技を会得した。

それで師匠も叩きのめした!

片腕で免許皆伝、そんなの聞いたことない!

なんて村の皆は言うけれど、師匠の技は本物だったよ?

でもおじいちゃんだからね。

動きは遅いは反応は鈍いわで、そんなに苦じゃなかった。


「安心しな!普通の技もばっちし頭にはいってんのさ!天才だろーう?」

「姉ちゃんすげええ!!!さっすがだぜ!俺も姉ちゃんみたいに強くなるから!」

「うんうん、頑張んなさいな!その為にはしっかり食べるんだぞ?そんな細い腕じゃ刀は振れない!」

「わかった!」


子供達みんなに好かれちゃってまあ…。

さて、そろそろ行きますかね〜。


「楪。」


ぽんと背中を叩かれて勢いよく振り返ってしまう。


「っと…なんだあんたか。びっくりするじゃん。どうしたの?」


幼馴染の刀使い。

一緒に研鑽してきた仲間で、ずっとすごしてきた友達。

腕前は…あたしの方がずっと強いけど。


「頑張れよ。俺も追いつくから。」

「精々頑張んな〜?免許皆伝のあたしが言ってやるよ。10年速い!なんてね?待ってるよ!」

「へ、片腕に負けてらんねぇからな!行ってこい!」


強く背中を押し込まれて思わず数歩歩く。


「…へへ、行ってきます!」

「「行ってらっしゃーーーい!!!!!」」


皆の声が聞こえてくる。

なんだか胸の底がじんわりと暖かい。

胸に手を当て、深呼吸。

師匠に言われた場所に向かう。





村の離れにある、訓練場。

木がちょうどそこにはなく、ちょっとした隙間の場所。

小屋が近くにあり、川の流れる音が聞こえる。

技を磨くための手作りのかかし。

無造作に置かれた木刀。

そしてその近くに、一人の老人が立っていた。


「ジジ…んんっ!師匠ー!」

「おお、来たか、ゆず。」


何故でか師匠はゆずと略して呼ぶ。

柑橘系じゃないんだから。


「話って何?」

「ああ。ワシは衰えたつもりはないんじゃが、ああも簡単にやられてしまった。免許皆伝などと言ったがこの村で初めてじゃ。師匠を倒すなんて芸当は。」

「そりゃ〜どうも。」


筋肉はかなりある老人。

着物ではあるが、半裸で腹筋などが顕になっている。


「村に伝わっていたことが1つある。もし、師を超えるような者が現れたとしたら、この場所に行け。という書き記しがのう。」

「へ〜そんなのがあったんだ。何かあるの?」

「分からぬな。誰も行ったことがない。ワシも気になるわい。ゆくぞ。」


そう言って森の奥へと足を進める。

老いを感じない程早い足取り。

あたしより速いんじゃないか?

少しして、どうやら着いたらしい。


「ここのようじゃ。」

「家?誰かいるの?」


小さい家があった。

…いや、家って言うより倉庫?小屋?


「分からぬ。何も分からぬが、とりあえず入るぞ。御先祖様の事じゃ、何かあるに違いない。」

「刀とかかな?…錆びてそ〜。」


扉を開けて入る。

妙に嫌な空気。

あまりここに居たくないよく分からない感覚。

そして。


「わお、本当に刀。……でも折れてるね。」


根元からポッキリと折れてしまった刀があった。


「言伝がある。……持つべきものが持てと。どうじゃ?持っていくか?」


そう言われて手にしてみる。

…不思議ととてーーーも嫌な気分になる。

それでいて身に馴染む感覚。

これだったら誰でも倒せそうな感じが、刀身ないのに。


「……んや、いいかな。きっと私より凄い人が持つべきだよ。そもそも折れてるから使えないし、私はもう刀持ってるしね。使い古しだけど、こっちの方が馴染むよ。」

「そうかいそうかい、じゃあワシが貰うわい。ワシもゆうて強い訳じゃし。」

「ちゃっかりしてるなぁ師匠は。」

「…まあよい。行くなら速く行くと良い。人間の時と言うのは案外短い。」

「ん、じゃあ行ってくるね!」

「帰ってはくるのか?」

「未定〜。もしかしたら帰ってくるよ。」

「村1番のワシの弟子。朽木楪よ。…これを受け取れ。」


何かを投げられる。

受け取ろうとして手を伸ばした。


「わふっ。…なにこれ、羽織?」


白くて、桜の刺繍があって。

…楪の葉もある。

ちょっと特徴的だから刺繍しやすかったんだろうなぁ。


「作った。村の意志を背負って行ってくれ。お前の旅の無事を祈っている。行ってこい。」


その声を聞き終えて後ろをむく。

ご丁寧に羽織れるように紐が着けてある。

それを首に通した。

着心地がいい。

…そういえば師匠が私のちゃんと私の名前を呼ぶの久しぶりだな。

あっちが新しい道。

戻るなら今。

ま、戻る理由なんてないけどね。

私は新しいものがみたい。

こんななーんにもないド田舎みたいな所だし。


空を見上げた。

雲ひとつない快晴。

少し暑さを感じる夏手前。

私の旅はここから。

さぁ、行こうか!




〜森〜


「とはいったものの〜。」


さて、どこを目指そうか?

当然何も決まってなかったわけ。

村をぬけた先にあるちょっと大きめな街には適度に行ってたし。

…気になってたところ行ってみるか〜。

遠くを見つめる。

そこにあるのはすんごく大きな木。

ずーーーーっと昔からあるのに誰も気にしてなかった。

あるが当たり前の巨大な気。

それなりの高さの丘の上にある。

丘の高さより大きな木。

皆はそれを()()()()()()

()()()って呼んでいた。

あのそばには近付こうとしても近付けないんだ〜って皆は言ってたけど。

よし!

第1目標はあそこ!

感覚的な距離もそこまで遠くはない。

行ってみよう!

旅は道ずれ、道はアバズレ〜!





〜世界樹への道〜


「んむんむ。…このお団子おいし〜!」


いつもの遠出する街によってお団子を3本ほど購入。

小腹がすいていたので仕方がない。


「…にしてもおっきいねー。」


首が痛くなるくらい見上げないと1番上が見えない。

というか見えてない。

それくらい大きい。

どのくらいあるんだろう…。

そもそもなんであんなにおっきいんだろう。

ま、どうでもいいけどね〜。


「ふう、美味しかった。」


残った串をズボンのポケットに入れて刀を手に持ち、肩で担ぐ。

手持ち無沙汰が嫌。

いつもこんな感じで刀を担いで歩いてる。

街ですら。

ちょっとかっこいいしね。









ずーっと歩いて1時間ほど。

どうやら頂上が近いらしい。

木の幹が見える。

別に近付けたし、純粋に迷子にさせない為の決まり文句だろうね。

少し急な坂、力を入れて転ばないように登っていき、平面な土地にたどり着いた。


「…おっきーい、すごーい。」


さすがに圧巻された。

真下だと見上げても空が見えない。

何年たったらこんなに大きくなるんだい…。

そんなことを考えていたら、声をかけられた。


「こんにちは。人間かしら。」


白い髪を二つに束ねたツインテール。

ゴシックな装いで、早歩きでこちらに来る少女。

…翼が生えている。

人間じゃない?

そしてその隣にいる、その子より背丈の少し大きいお姉さんのような女の子。

ロングヘアーで、クリーム色の髪。

そしてこれまたすごく綺麗で蝶々のような大きい羽。

まるで妖精。


「ん、ああ!そうだね!…ってあんたらもそうじゃないのかい?」


人間じゃない人達なんて見たことない。

噂には魔族ってのが存在するらしいけどあの街にも村にもいなかった。

…先祖が魔族だって話は聞いたことあるけど。

そんなの昔話の一環だと思ってた。

本当にいたんだ。


「私はミナリ。なぜここに来たのかしら?」

「んー、分からないけど何か体の思うがままに来たのよね〜。」


行く道なんて当てずっぽう。

その方が楽しい。


「…名前、聞いてもいい?」

「名前?あたしの名前は楪。朽木楪って言うんだ。そっちのお姉ちゃんは?」

「ふふ、お姉ちゃんは私じゃなくてこっちなの。ずっと待ってたよ。私は月の女神にして、精霊王イルミナ。よろしくね?」

「……へ?」


月の女神?

精霊王?

急に話がぶっ飛んできた!

そうそう、旅はこんな感じで面白くなくっちゃ!

…それはそれとして。


「何それ?」

「すごいやつ、って思ってくれればいいよ。」


優しい声で語り掛けてくる。


「そう、ずっと待って……っあ……。」


急にふらっと倒れてしまう。


「ほら、そうやって走って無理して。もう年なんだから。」


それがわかっていたように、すぐさま後ろに手を伸ばして受け止める。

歳って…師匠より何十歳も若いのに。

それにこの子がお姉ちゃんがこっちって言ってたし…。

外の世界は広いなぁ。


「アステリア。ちょっとお願い。」

「はい。」


ミナリと名乗った人物を運んでいく。

ふよふよ〜っと空中に浮いて。

次々と現れる新しい人達。

…人じゃなさそうだけど。

なんか体が宝石で出来てる。

とっても綺麗。


「貴方をずっと待ってたの。」

「待ってた?生憎約束はしてなくて、別人じゃないかい?」

「うううん。貴方。」


キッパリと言い切る。


「あたしを待ってた。…じゃあ何か用があるのかい?」

「うん。…これ。」


そう言ってどこからともなく剣を持ち出す。

白くて花の模様が刻まれた騎士様が使うようなすごく高価な剣。


「この剣の持ち主を探して欲しいの。」

「…あんたらで探せばいいんじゃないかい?」

「私はここを守らなきゃいけないの。だから、貴方を待っていた。」

「そ、そうかい。」


ぐっと剣を持った手を差し出された。

なんとなしに持ってみた。

重さはちょうど良くて、振り回しやすそう。

ただ、剣は使えないなぁ。

できないことは無いけど刀の方が身に染みてる。


『聞こえますか。見知らぬ誰か。』

「うわあっ!?なになに!?誰!?」

「やっぱり聞こえるんだね。私達にはその剣の声が聞こえなかったの。」


普通剣の声なんて聞こえないと思うけどっ!?


『私はルドベキア。主を思い出せない惨めな剣。私の声が聞こえる者は久しぶりです。』

「は、はぁ。そうですか。」

『お願いが1つ。私の持ち主を探して欲しいのです。』

「持ち主を…。どんな?」

『思い出せませんが、道を示すことは出来ます。』

「な、なるほどね…。」

「どんな会話がされてるのか分からないけど、どう?」

「まあ…言ってることは分かるね。」

「引き受けてくれる?」


真剣な眼差しでこちらを見てくる。

そんな大事なことなのかね。

私には荷が重いかもねぇそんな大事なこと。

と、そう思った矢先。


()()()()()()()()()やること。」

「ん…。確かに!妖精さんにはお見通しってヤツ?目標のない旅もアレだし、しょうがないし…受けた!」


そう言うと心底安堵したような顔をされた。


「良かった。本当にありがとう。嬉しい。」

「だっけっど〜。…剣は使えないのよね〜。」

『でしたら。刀になりましょうか。』

「出来るの!?」

『出来ますが…どうしましょうか。』

「するする〜!新しい刀欲しかったんだ〜!」

『では…想いに馳せてください。貴方の思いを、聞かせてください。』

「…難しいこと言うね。」


思いに馳せるかぁ。

今まで色んなことがあったなぁ。

腕なくなっちゃって、でも厳し〜い修行も乗り越えて。

師匠も倒して免許皆伝。

そういえば修行の時に飢え死にしそうだったのは本気でヤバかったな〜。

てか、この羽織、あたし用なくせに両腕の袖があるの不謹慎過ぎない?

私だからいいけど…。

っと、受け継いでいけってことかな?

それなら納得ー。

そんなこんな昔話とさっきのことに耽っていた。

剣が光り出す。


「うおっと?」

『承認。イメージ固定。形状変質。』


眩しくて目を瞑った。

ちょっと手元を見たら見た目が徐々に変わっていくのがわかった。


『形状固定。言語パターン制定。思考変更。…こんな感じかな?あーあー!』


唐突な変わりようにびっくりする。

声がおしとやかな貴族みたいな声だったのに急に元気ちゃんになっちゃった。


『あれ?想像と違かった?』

「違うというか……そういう喋りもできるんだね?」

『あたしちゃんは持ち主によって変わるのさ〜!前の前の持ち主の時は男の声してたもんあたしちゃん。』


本当につらつらと喋り出す。

確かにこっちの方がいいかも!


『続けるよ!前所有者の契約、一時破棄、保存。仮契約、開始。あたしちゃんに名前をつけてくれる?』

「名前かぁ〜。」


何か名前になるものはないかと周りを見渡す。

笑顔で見守っていたイルミナ…だったかな?に目が止まる。

月みたいな子。

月みたいな

つきみたい

つきみ…。


「あんたちゃんの名前は〜月見!!」

『あんたちゃんは違うくない?まあいいや!承認、イメージ固定。…私は…あたしちゃんは!貴方の道標となる刀。華刀月見!』


再び手元を見た。

私が持っていた刀と同じ位の重さになっていて、持ち手も同じく普通の刀の2倍の長さの持ち手。

私がいっちばん使いやすい形になってる。

元々持っていた刀を刀差しから抜いて入れ替える。

抜刀して、刀身を見た。


「綺麗。」


刀身は白く輝いている。

こりゃー使いやすそうな刀だね。

初めて持ったのにすごく手に馴染む。


『どう?刀のあたしちゃんは?』

「良い!凄くいい!最高!」

『いえーい!あたしちゃん達最高のパートナー?』

「もっちろん!」


タイミングを見兼ねてイルミナが話しかけてきた。


「どう?やってくれる?」

「ああ!こんなもん貰っちゃったんだ、恩は返すさ!…だからこの私の刀、預けておくよ!やる事やったあと、帰ってくるから待ってな!」

「わかったよ。それで、本当に申し訳ないんだけどもう1つあるの。これは出来たらでいいんだけど。」

「なんだい?」

「この子、アステリアって言うんだけど。連れて行って欲しいな。」


さっきの宝石の子…かな?


「イルミナ様っ。それは。」


困ったような顔で引き止める。


「外の世界、見たかったんでしょ?…それにもう数ヶ月しか生きられないなら、せめて楽しもう?」

「待ちな、病人は連れてけない、私は死後まで見ないよ。」

「それなら大丈夫…ではないけど。この子精霊だから。言い方は悪いけど、死ぬ時は邪魔にならないはず。外の世界を見せてあげたいの。」


私と同じ、外を知らない子かぁ。

それでもなぁ〜。


「楪、貴方はこの後いく場所とか分かるの?」

「うぐっ。」

「じゃあ、アステリアを連れていけば安心だよ。この世界のどこのことも知ってる。本だけは読んでたから。」

「……道案内は欲しい!連れていこう!旅は道ずれ私はアバズレ世は情け!行こう行こう!絶対楽しいよ!」

「そ、そんな急に…いいんですか。」

「うん、私のことは気にしないで。精一杯楽しんできて。」

「…はい。お言葉に甘えて、お世話になります。楪様。私は星の精霊アステリア。貴方の旅のお力添えになります。よろしく…お願いします。」

「星!いいねいいね!よろしくアステリア!お別れすませちゃって!私は少し降りたところで待ってるよ!善は急げだからね!」






「イルミナ様、いいんですか。」

「もちろんだよ。思い出、作るんだよ?」

「…はい!」

「………聞き忘れてたけどミナリは?」

「……お眠りになりました。」

「そっか、わかった。後は大丈夫。行ってらっしゃい、アステリア。私達の分まで楽しんできてね?」

「行ってきます!」


素早く宙を浮きながら行ってしまう。


「そこまでは見えた。…いい未来。楽しく過ごすんだよ。止まっちゃった私達の分。…それにしては短すぎるけど、それで十分。……いや、もう私だけか。」








〜世界樹の帰り道〜

不思議なこともあるもんだね……?

ちょっと坂を下ったと思ったらもう既に一番下まで降りてた…。

どんな魔法を使ったってんだい…?

精霊さんならそういうのも本当に使えたり?


「お待たせしました楪様。」

「様はやめてよ〜。もっと砕けた感じで!」

「と言いますと…。」

「様付けはダメ!…リハちゃん!とか読んでくれない?」

「り…リリ…リハち…リハさん。」


多分すごいいい子なんだろうね。

ギリギリさん付けしちゃってる。

というか、すっっっごい綺麗な子。

あのイルミナってこと同じ色で髪もキラキラしてて。

身体の宝石はもっと輝いてる。

右半身が完全に宝石で体も宝石で服を作ってるみたい。

胸が隠されてて、お腹は所々まだらになってる。

足はニーソみたいな感じ。

左腕は全くない。

羽なんかもう宝石の羽で芸術品って感じ!


「そういえば、病気ってなんなの?辛くないの?」

「はい、見ての通り、()()()。体が宝石になってしまう病です。」

「それ病気だったんだ。痛い感じ?」

「いえ、気だるさも、痛みもありません。ですが結晶は日に日に私を蝕み増えていきます。自分で削り取ったりしますが止まりません。そしていずれは私が先に力尽きて消えてしまうということです。それにおおよそ数ヶ月。」

「そういう事か…。わかった。肝に銘じておくよ。綺麗なのに、悲しいね。」

「…はい、お気遣い感謝します。」


ニコっと、笑いながらお辞儀をされた。

こんな綺麗な子…うーん!


「最高っ!」


何を隠そうあたしは面食い!

男であれ女であれ顔がいい子は最高だね!


「は、はい!?」

『げーリハっち面食い?ヤババじゃん。』

「ツキミはツキミであたしより砕けてるじゃないかい。」

「あぁ、ツキミ様のことでしたか。」

「あ、そうか聞こえてないのか。」

「はい、申し訳ありませんが聞こえないのです。」

「ほんとに?」

「はい。」

『ほんとだよ!アステリアー!綺麗だよ!』


反応もせず、聞こえてないようだった。


『同じこと言ってみ?』

「アステリアは綺麗で最高だよって話してたの。」

「はいぃっ!?えと…その…。」


照れ顔がまた可愛いのです。

心做しか身体の宝石がより光ってる気がする。


「てか急に喋るねツキミ。」

『ごめん、喋っちゃった。基本喋んないよあたしちゃん。話がこんがらがるからね。…でもこの性格になっちゃったからわりと歯止め聞かないかも、歯ないけど。』

「やかましわ!…と、聞こえないんだったね。…それじゃ………どこいく?」

「ツキミさんが知ってるというお話だとお聞きしたのですが。」

『おおとそうだった。んーと……あっちっ!』


そう叫んだ後、ツキミが光りだした。

光が刺した方向は行っている道の少し東。


「そちらですと…都市イェソドのある方角。物流の多い基盤の街とも言われていますね。」

「そこにいるのかい?」

『…ごめん、私が示せるのは道筋だけ。何処にいるかは分からない。』

「とりあえず行けってことだね?」

『そ!頼める?』

「もちろんだよ!そっちの方が旅っぽいしね!」

「徒歩だと5時間。馬車だと2時間ほどです。近くの街で馬車を拾った方が良いと思います。」


少し思い出すような素振りをして提案してくれた。

本当に色んなことを知ってるんだ。

私とは大違い。

ノープラン女ですよーだ。


「じゃ、そうしようか!アステリアは何かしたいとかある?」

「わ、私は…海が見てみたいです。あ、後回しでいいですよ。ツキミ様がいつか海のある方角を指し示してくれた時に思い出してくれれば…。」


ちょっと遠慮している。

今すぐ行ってあげてもいいけど…確かにここからだと遠い。

私も村の川をそって海に行こうとしたけど確か1週間くらいかかったんだよなあ。

何ヶ月かしか生きていられないらしいし早めに行ってあげなくちゃね。


「分かった!よーし!旅、開始だぁ〜!」

「はい!」

『お〜!』




()くして朽木楪の旅は始まった。

当てずっぽうで無計画の彼女の旅。

その旅はきっと希望に満ち溢れ、時に苦難を呼ぶだろう。

だが、彼女なら苦なくすごし、難敵を打ち破るだろう。

彼女のその性格は周りを明るくし、共に過ごすもの達をも明るくするのだから。

隻腕の刀使い、楪の旅はきっと長く長く続くのだろう。

それが例え、どんな道であっても━━━━━━━━

以下キャラ崩壊、完全に本編とは別の世界観が繰り広げられます

見たくない方はここで引くんだぜ





━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「いらっしゃいませー!コンビニ ホーローキへようこそ!新人アルバイトの朽木楪でーす!」

『店内アナウンスのツキミちゃんだよ〜!』

「ここでは作品内の詳しい説明?や軽いキャラ紹介をするよ!まずはあたし!朽木楪!」

『サラシ巻いた片腕刀剣士!黒髪ポニテのサバサバ系女子!!』

「男勝りといってくれないかい?」

『好きな食べ物は?』

「お団子!3色のヤツ!嫌いなのは特にないねー。」

『なんで服着てないの?』

「こっちの方がかっこよくない?」

『だそうでーす。』

(入店音が流れ出す)

「いらっしゃいませー!お名前はっ!?」

「えっなんですか、ここコンビニじゃないんですか。」

「コンビニです!お名前は?」

「あ、はい…アステリアです。」

『リアっちだ〜!』

「ええっなんですかここ。」

「そういうところです!気にしないでください!お品物を早く持ってきてください!好きなものですよ!」

「ええ〜…ないんですけど…私種族が精霊なのでご飯は食べなくて。」

『そうそう、石食ってんだよね?』

「食べてません!」

「宝石食ってんの!?お高い女ですわね〜」

「だから食べてません!雑誌を買いに来たんです…。」

『と、本を読むのが趣味なリアっちですねー。』

「そもそもなんでアナウンスがめっちゃ喋ってくるんですか。」

「そういう場所です!諦めてくださいお客様!お会計は458円でーす。ちょうどお預かりしまーす!レシートは?」

「そこはちゃんとやるんですね…いります。」

「はーい、ご来店ありがとうございました〜またお越しくださいませ〜。」

「もう来ませんよ。」

「いや、次からアルバイトだよ?」

「ええ〜!?」

『次回もよろしくゥ!』

「定時なんでタイムカード切りますね〜お先に失礼しまーすお疲れ様でした〜!」

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