悪役令嬢は双子の妹に婚約者の王太子を奪われ、無実の罪をきせられ婚約破棄され辺境に送られた、辺境に向かう馬車のなかでなぜかしてやったりと微笑んだ。
「ユーリア・イブリン、お前を妹のリリスを虐めて階段から突き落とした罪により婚約破棄をする!」
「……」
私は目の前にいる婚約者の王太子殿下の宣言を冷めた気持ちで聞いていました。
階段から突き落としてはいませんが、でもやったと認定されて、隣にいる妹が笑っているのに反論はするつもりはありません。
「何を笑っている!」
「いえ笑ってはおりませんわ」
「お前を断罪する。辺境送りとする!}
「はいわかりました」
ああやっと終わりましたわと思うとすっきりしました。
しかし階段から突き落とすとはべたな嘘ですわねえ。私はではごきげんようと一礼をして彼らに背を向けました。
妹はさようならと笑って手を振りました。はあ疲れましたわ……これからどうしましょう。
「ユーリア様、どうしてあんな茶番をしたのですか?」
「はい茶番とは?」
護衛騎士のラスタバンがあきれたようにこちらを見ています。
王太子妃の護衛騎士であった彼は地位を辞して私についてきたのですわ。ものすごく物好きですわ。
「……あなたがあの茶番をたくらんだのでしょう?」
「え? 私は婚約破棄されて、断罪されて辺境送りですのよ? 損しかしませんわ」
馬車の中ではあとため息をつくラスタバン、どうしたって真実はわからないはずですわよ。
「妹さんと話しているのを聞いてしまったのですよ。どうやって殿下に婚約を破棄させようかって」
「あらあら。盗み聞きですか」
「たまたまです!」
はあ、ラスタバンに聞かれていたのは気が付きませんでしたわ。私は、確かに妹と話し合いとやらをしました。殿下のあの束縛が嫌だったのです。
ねちっこいというか……妹はそういうタイプは嫌いじゃないというから譲ろうと思ったのです、円満に行く方法があれしかないかなと思いまして。
「まあ、あれから逃れたかったのですわ」
「殿下はまあ重いというか……」
「いや、もう疲れましたわ。殿方と話すことも禁止されて、あなたも辞めさせろっていわれて、挙句の果てに僕しか見るなとか、はあ……でも私とあの子は双子ですし、私の顔が気に入っているようでしたから、まああの子でもいけるかなと」
妹と私は双子です。同じ顔、同じ声、同じ体つき、たまたま殿下が一目ぼれとしたのが私だったらしいですが、でもねえ。結構見分けがついてませんでしたわよ……あの方。
ラスタバンでさえ見分けていたというのに。
「やっと気楽になれましたわ、妹はああいうタイプ好きだと言ってましたし、幸せになれるでしょう。うふふふ、幸せにね」
「あれと……」
「まあ無理でしょうね」
やっとあのくそうるさい殿下と、いつもお姉さまばかりずるーいと私のものをとる妹と離れられましたわ。あれを押し付けられてめでたしですわ。
されたことのほとんどは妹には話しませんでしたわ、一日中引っ付かれてどこにいくもの一緒で監視されて、一か月とか……寝所も一緒は嫌だと言ったら、鎖で手と手をつながれて離れた場所で寝たりとか。ずっと鎖でつながれっぱなしで、お風呂なども……。後は男と少しでも話をしようなら何を話していたとねちっこく聞かれたり、監視の魔法をかけられて、いつどこで何をしていたとか克明にノートに書かれていたとか。
父からの贈り物でさえ男からの贈り物だと捨てられたり、殿下の贈り物を身に着けていないといつも怒られましたし、ドレスを着るのを忘れていたら、着ていたドレスを脱がされて無理やり着せられましたのよ。あの人の重いというか拘束とやらの一部でしたが。嫉妬深すぎました。
絶対あの組み合わせはうまくいきませんわよ。うふふ、いつ泣きべそをあの子はかくでしょうねえ。
多少、嫉妬深く、少し重いくらいの男性が好きなのは知ってますが、重すぎるのですわよ殿下は!
ラスタバンが頭を抱え込むのを見て、あなたと引き離されるのは嫌でしたのよと私は思って、辺境もまあ過ごしやすいですわよと彼に笑いかけたのでありました。
お読みくださりありがとうございました。
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