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川木くんのドライコーヒー

作者: 白雪ぐみ

私は今日も純喫茶レモンに入った。私の目当ては純喫茶レモンのパフェ……ではなく、店員の川木怜くん。怜くんは私と同じ北高の生徒で超絶イケメン。イケメンと言うより、もはや崇められている。それは、もちろん川木くんの顔が整いすぎているっていうのもあるけど……

「すみませーん。いちごパフェ…」

「帰れ。」

「…………」

その対応がとってもドライだからだ。



至福の時間だ。放課後に夕陽が差す喫茶店でイチゴパフェを食べるのは。川木くんの冷たい目線に刺されながらだけど。

「お前、次は絶対来るなよ?」

「じゃあ、学校に言っちゃおうかなぁ〜。」

「…………クソが……」

北高はバイト禁止なのでそれを口実に私は純喫茶レモンに通っている。美味しいコーヒーとイケメンを見ながら過ごすと心が浄化されていく。日々の授業(そんなに真面目じゃないけど)、人間関係(そんなに悩みないけど)。とにかく、特に用も無い私は純喫茶レモンに通うようになった。

「川木くんはさ、何でこんなところでバイトしてるの?もっと割りの良いバイトあるでしょ?」

「ここは山の上にあるから常連しか来ないからな。」

川木くんは簡潔に応える。

「ていうか何でバイトしてるの?」

「小遣い稼ぎ。」

一秒未満くらいで返してくる。口の筋肉どうゆう反射神経してるの?

「おい、川木!しゃべってないで働け!」

「マスター、お客さんいないじゃないですか?」

「皿拭くとか、ナプキンつめるとかあるだろ!」

「はい、さっきしました。」

「………それだったら机拭くとか… .」

「しました。」

「………それじゃあ…」

「在庫の整理、コーヒー豆の補充、窓拭き、表の清掃、終わりました。」

「……っ…じゃあ....」

「マスターのためにコーヒー淹れときました。」

「その子の接客「はい、分かりました。」しろ!!」

やっぱり、応答が速すぎる。マスターが言い終わらない内に返答してるし。

「お前、名前は?」

「えっ!!私!!」

「お前しかいないだろ。いつもガラガラなんだし。」

「もしかして、私に興味あるの?」

「バカ。ただ.....学校で見ない顔だなと思って。」

「佐藤薫だよ。クラスは2年6組。」

「そんじゃあ反対の校舎か.........」 

あれ川木くんから話しかけてきたのって初めてじゃない?今まであしらわれてきたのに、川木くんから話しかけてくれた!!

「どうした?ニヤニヤして。気持ち悪い。」

「いやぁ〜、川木くんから初めて話しかけられてたなーって。」

「別に、自分のために確認したかっただけだ。」

川木くんって表情が無か不快しかないから、感情が読み取りにくい。まあ、嘘をつくのは嫌いそうだから、全部本当のことだと思うけど。

「川木、今日はお客さん少ないから早めに閉めるぞ。」

「いや、いつも少ないじゃないですか。」

「うるせぇー!!つべこべ言わず働け!!」

ちょっと........私まだ食べてますけど.....。客の前で店じまいの話する?さっさと帰れって言われてるみたい。

私はパフェをかきこみ、ささっと会計を済ませた。

「全く......嬢ちゃんだけだよ。平日に来るのは。嬢ちゃんが毎日来なければ、早く帰れるのに。」

えぇ〜、このマスター商売する気あるのかな?何でこの店潰れないんだろう?早く帰ろうっと。私は純喫茶レモンを出て、山を下り始める。辺りはすっかり夕陽に包まれている。

「佐藤!!」

「はいっ!!」 

遠くから誰かに呼ばれた。私の名前で........。川木くん?川木くんが私の名前を言った?

「明日も来たいんだったら、来てもいいぞ!!」

確かに川木くんが私の名前を呼んでくれた。川木くんが私の名前を呼んでくれた!!川木くんが名前で呼んでくれた!!

「うん!!明日も絶対来るよ!!」



その時、川木くんが微笑んだように見えたのはきっと気のせいだろう。




コメントしてくれるんだ。ありがとう。

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