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4.

今の気持ちでペンネームを付けてみたけど、夏場はちょっとイヤな感じかも。


 

「うーん、どうしましょうか…… 」


 はっ、御機嫌よう、皆さま。まだ名前が決まらない愛の天使です。


 思い出せない前世の名前は諦めて、新しい名前を付けて頂こうと女神様にお願いしたのですけれど。


「うーん、そうね。ザマァーナとかザマリナ、ザマリンダ? どれもあまり可愛くないわねぇ」

「なんですか、それは」

わたくしったら思わず女神様に突っ込んでしまいました。


「えー、だって愛称に近い方が良いでしょう? ()()()ちゃん? 」

「違います。そんなの愛称じゃありませんから。()()から離れてくださいまし」


 涙目で抗議したら、女神様も冗談が過ぎたと謝ってくださいました。女神さまったらあんまりですわ。もう。


 尊い方でも名付のセンスは別物らしいとわたくし学びました。そういう訳でまだ検討中です。

 いっそのこと、ソレイユ様のように自分で決めてしまおうかしら。


 先輩のソレイユ様の前世は育児放棄された子供で名前さえなく、ソレイユは好きだった花の名前からとったのだそうです。


「あの花はまっすぐ天に向かって堂々と咲いて、種も食べられるから…… 」  

 恥ずかしそうにそう教えてくださいました。


 天使になった頃はやせ細り小枝のような少女だったそうですけど、今は皆が羨む様な女性らしい姿態をお持ちの俗に言う女王様系美女ですのよ。    



 ちなみに、もう一人の親しい先輩、カレン様は人であった時と同じ名前を名乗っています。

 三度の人生経験があるそうなので、カレンは二度目の時の名前なのだとか。


 カレン様は三度も生まれ変わって同じ魂のお相手に恋をし、そのたびに裏切られて他の方に奪われてしまったのですけれど、その方たちも同じ魂だったそうです。なんでも、縁の糸が絡まり合っていたらしいです。


 そんな過去もある所為かお仕事でも男性に厳しいというか、無関心で放置する傾向がおありです。ご本人は無意識なようですが。



 あら、いけませんわ。つい脇道に逸れてしまいました。

 先ほどからわたくしが悩んでいたのは名前の事ではありません。もちろん名前も大事ですけれど今はお仕事の事でした。


 今、わたくしが気になっている縁があるのですけれど、そこに関わることができないか考えているのです。


 愛の天使は人の縁に関わる神命を承っています。ですが、人々の縁のすべてに首を突っ込む様な事はしません。


 女神様は魂の成長を妨げるような過干渉をお望みではないのです。

 善も悪も人としての在り様で、幸も不幸もあらゆる出来事は、その魂の経験と学びになるのだそうです。


 ですので、どの部門の天使たちも、下界への干渉には各々の誓約に関することに限るという制限を付けられています。


 わたくしも自分の「罪なき乙女を救う」という誓約にそって、働きかけをしてきました。

 ゲームやラノベの影響で恋愛に関する縁に偏りがちになったり、不慣れゆえの失敗もありましたけれど、何人もの罪なき乙女を救ってきたつもりです。


 ですが今回は、手助けできそうにありません。どうしたらいいのかしら…… 。



 それは二つの国の和平にかかわる事柄です。


 渦中の中心人物の一人目ヒロイン?はA国の大公家の令嬢です。自分に都合の良い事ばかり考える、頭の中にお花が咲いているタイプの人ですね。その花も天然モノではなく計画造園された花園です。恋を夢見るのではなく、たくらむ乙女です。


 この方同盟強化のため隣のB国に嫁ぐ予定なのですけれど……


 A国のとあるお屋敷。

「もう、冗談ではありませんわ。どうして、わたくしがこのような方に嫁がねばなりませんの? 」


「このような方などと、王弟殿下でいらっしゃいますよ。将軍職も務める武勇の誉れ高いお方ではありませんか」



「身分はいいのよ。だけど、その武勇というのがイヤなの。見てよ、この絵姿」

 ピンクブロンドの緩いウェーブヘアをイヤイヤと首を振って揺らし、手に持った姿絵を掲げると、琥珀色の瞳で侍女を睨む。


「まぁ、とても凛々しい殿方ですね。実物はさぞかしお身体も逞しい美丈夫でいらっしゃることでしょう」


「だから、わたくしはこんな筋肉の塊のような殿方なんて嫌なのよ。きっと頭の中は野蛮な考えでいっぱいに決まっていてよ。

 わたくしは、賢い方が好きなの。常に冷静沈着なようで実は情熱的。そんな方がわたくしだけを愛して下さるのがいいのですわ。

 見た目だって涼し気な美形が好きなの。この方みたいに暑苦しい容姿は好みません」


「あらあら、姫様はまだ幼いのですね。殿方の善し悪しは見た目ではわからないものですよ」


「とにかく嫌なの。嫁ぐにしても、せめて別の人にするわ。お従兄さま(王太子)に絶対何とかしてもらうんだから」


 どうやら、お相手の王弟殿下は好みのタイプではないようで不満を漏らしています。



 そしてもう一人ダブルヒロイン?になるのでしょうか、こちらはB国の平民生まれの少女であちらで女神教の聖女をしています。


 B国では古の盟約とやらで、女神様が直々に豊穣の祝福を授けた娘が存在します。その娘が神託によって指名され、聖女として神殿に迎えられるのだそうです。


 どんな清らかな乙女かと思えば、確かにいかにも清純そうな少女に見えますが中身はビッチさんでした。


 この方も政略的な縁組としてA国の王太子に嫁ぐことになりました。

 嫁交換ですか? どこの国も女性を品物のように扱うのは変わりませんのね。全く嘆かわしいですこと。


 聖女を他国に出してもいいのかですって? 

 国外に出ればその娘は聖女ではなくなりますが、次代が任命されるので大丈夫なのだそうですよ。



 その聖女は……

 神殿の聖女の部屋で天蓋付きベッドの上にうつ伏せ寝転がり、頬杖ついた少女がブツブツ呟いています。


「王太子妃ねぇ。という事は王妃になるのよね。響きは良いけど女王じゃないから好き勝手はできないわよね。

 なんか王妃様見てると結構忙しそうだし面倒くさそう。聖女も辞めなきゃなんないみたいだし。


 それに、いつも側にいる(おとこ)たちは連れて行けないわよね。 結婚して夫が一人きりなんて飽きたらどうするのかしら、愛人とか作ってもいいのかしら。うちの国の王妃様にはいないみたいだけど。

 大体、王様は側室とかいるのに王妃は駄目なんて不公平だわ。

 あー、やっぱり行くの止そうかな」


 なんとまあ、呆れたことに、彼女はわがまま放題できる自国を離れたくないようです。

 王妃になどならなくても今のままで十分楽しそうですものね。


 それに関してだけは、王妃教育を受けたことがあるわたくしも大いに納得です。無駄になってしまいましたけれど、アレは大変でしたもの。


 あら、つい恨み言が出てしまいました。お耳汚しで御免あそばせ。



 本人は乗り気ではないようですが、神殿や国の一部の人たちは寧ろ外に出したいみたいです。


 何しろ形ばかりのお勤めも真面目にやらず、見目の良い殿方を侍らし逆ハーレムつくるわ、貢がせて贅沢三昧するわで、神殿内の聖女の評判はがた落ちですもの。外ではうまく取り繕っているようですわね。


 それもそのはず、実はこの少女は成り代わりの偽者です。偶々迎えが来た時、本来聖女になる少女が不在で、似たような外見だったこの少女がちゃっかり成り代わったみたいです。偽聖女本人はそのことを都合よく忘れてしまってますけれど。


 じゃあ本物の聖女を救うべきかというと、その必要はないみたいです。そちらの少女は故郷で幸せに暮らしてますし、神殿でなくても聖女が国内にいれば祝福の恩恵はあるので無問題ですね。


 この際、聖女認定など辞めてしまえばいいのではないかしら?

 今度女神様に伺ってみましょう。



 それで他の方はですね。


 珍しく王子や王弟はそれなりにまともですし、その他の方々もそれほど困った方はいません。名演技の美少女にコロリと騙されるのは、殿方の本能なので仕方が無いのだと、わたくしも今では理解してますから想定内です。


 二人のヒロインの周りにいる女性たちは、引き立て役や悪役令嬢役をさせられそうになりますけど、皆さん上手く免れていますわ。

 ええ、女には女の本質が解りますものね。遠巻きにして、当たらず触らずのお付き合いをしているようです。賢い選択ですこと。



 ねぇ、わたくしが救うべき「罪なき乙女」がいませんでしょう?

 どうしましょうかねぇ…… 。




続きは夜中すぎ頃に投稿予定です。 いつも誤字報告等ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言]  カレン様の裏切り者との悪縁は、天使になった事でスッパリ切れたんでしょうか?幸あれ。  面白かったです。
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