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夜郎自大(やろうじだい)

夜郎自大 自分の力量を知らずにいばること。また、そのさま。 大辞泉より

「なあ、人を殺ったことはあるか?」

 ピグムが訊く。

「ねえけど――それが、どうした?」

 キクルが訊き返す。

「ほら、これからはいるダンジョンだけどさ。アンデッドや幽霊がメインだっていうじゃねえか。近くで殺されたのが引き寄せられるってことがあるらしい。さすがに知ってる顔だったらとおもうとよ」

「よくいうぜ、てめえが遠慮しなきゃならねえ相手なんざいねえくせに」

 キクルが新調した剣をためつすがめつしながら軽口を叩いた。

「さんざか煮え湯を飲まされた街金の連中をぶった斬れるなら願ったりかなったりじゃねえか」

 てめえじゃ話にならねえや、とピグムが唇を尖らせる。

「ポウル、おまえに殺しの経験は?」

「んなもんねえよ」

 キクルがひらひらと手を振る。

「こいつは蟻を踏むのも遠慮する甘ちゃんさ。腕っぷしだけならそこらのガキといい勝負だ。おれらの後ろでちまちま魔法をかけてる奴にそんな度胸あるとおもうか? いいから、水でも飲んで落ち着けや。こんなクソ試験だってただじゃねえだから、楽しめよ」

「まさか、てめえに説教喰らう日がくるとはな」

 ピグムが坊主頭を掻いた。肩に白いものが降りかかる。

 周囲の緊張が伝播したらしい。

 そこここで所在なく動きまわる者や、目が血走っている者、なにかを呟く者を見かける。山間から届く心地よい風は彼らの熱気を冷ますには不充分であった。

「それより見ろよ」

 ニキビ跡の残る相貌に嘲りが浮かぶ。

「みじめだぜ、あのおっさん。いい年こいてこんなレベルの試験を受けなくちゃならないときた。おおかた食い詰めて冒険者になった口だろう。面白そうだからちょっとからかってくるか」

 キクルの視線の先にいる男は帽子を目深にかぶってサングラスにコート着用と判別しづらい姿であったが三人よりは年上のようである。

 その男はひとりであった。

 集団から外れて岩場に腰をおろして所在なく空を見ている。

 だから、キクルは目をつけた。

 もし、仲間がいたらこすっからいキクルのこと、反撃を怖れてちょっかいは控えていたはずだ。

「そういうのはやめたほうが――」

「てめえは黙ってろ」

 正論は大声に潰された。

「おい、くだらねえことで揉めて失格になったら、今晩は横になって寝なきゃならねえくらい尻を蹴飛ばしてやるからな」

 性状的にキクルよりのピグムもさすがに大事の前の小事とポウルの肩を持つ。

「ただの暇つぶしさ」

 軽やかな足どりで全身黒ずくめの男に向かうキクルを見てポウルは嗟嘆する。

「そんなことしたってなんの得にもならないのに」

「放っとけ。あいつは一度いいだしたら聞かない口だ。適当にからかったらもどってくるだろう」

「黒い人、怒らないかな?」

「そりゃ、腹立つだろうさ。九九が六の段でつかえる低脳におちょくられるんだぜ。だが、黒野郎だって莫迦のために銀貨一枚を捨てるのは癪だろう。意趣返しするならダンジョンでだが、あいにくキクルは頭の出来に反比例して腕がたつ」

 アンデッドになるのは黒野郎のほうさ、とピグムはせせら笑う。

 ポウルは肩をすくめた。

いやはや、向こう側の生意気な坊やの会話は物騒ですねえ。

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