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つかの間の安堵

 煙は冒険者の野営によるものではなかった。

 煙突からたちのぼるそれをふたりは呆けた面で眺めている。

 無理もない。熟練の冒険者とて刹那の油断が死に繋がる森のなかに忽然と住宅が──それも、ラウドの平均的な物件より瀟洒しょうしゃなそれが──あらわれるなど誰が想像できよう。

「こりゃ、どういうことだ?」

 剣持ちがうわずった声をあげる。

「夢でも見てるんじゃ──」

「安心しろ。おまえは目を開けたまま寝言がいえるほど器用じゃねえよ」

 槍持ちが顎を擦る。

「おおかた、変わり者の魔女でも住んでるだろう」

「実験用ってとこか」

 元いた世界の花火工場と同じでこちらも物騒な代物は周囲に被害がおよばぬ場所に保管が決まりになっている。ラウドだと人口密度の低い北側─壁なしか、魔窟であるすずらん通りのどちらかが定番だが、同業者と隣近所の環境を嫌って革新的なり禁忌に触れる研究は外に構えた工房で行う魔術師が少なからずいる。

「こんなところまでデカい石を運んでくるとはご苦労なこった」

「それをいうならレンガだろ」

 意見の相違にふたりは顔を見合わせる。

「──認識阻害か?」

「さて」

 考えたって仕方がねえさ、と槍持ちが肩をすくめる。

「おれたちに引き返すという選択はねえんだ。腹くくって行くぞ」

「だな」

「それと、最悪、言葉尻ひとつで首が飛ぶかもしれねえ。くれぐれも相手の神経を逆撫でしかねない言葉は──」

「よいしょはされる身になって丁寧にしろってこったろ」

 いわれなくてもわかってる、と剣持ちが話を遮る。

「悲しいかな、重ねて悲しいかな、そいつは親分とクソ客で骨身に染みてる」

「杞憂だったな」

 魔法職は総じて偏屈である。恒常的に強いストレスにさらされる結果だ。詠唱という補助があろうと、威力が較べものにならない拙いものであろうと、脆弱な人の身で神の奇跡を再現するとなれば精神的負荷はいかばかりか。埃のかぶった羊皮紙やエメラルドの碑文と面つき合わせて一層の高みを目指さんとする学究肌であればなおさらだ。

 学究肌は元いた世界の三流ツッコミ芸人のようにいい間違えにシビアだ。

 魔女ウィッチ魔術師メイガス妖術師ソーサラー、門外漢からしたらどれも同じ魔法使いだが、彼らは強いこだわりを持つ。

「ここが支部ロッジだか支部コヴンで頭のネジがぶっ飛んだ連中のたまり場でねえことを願うぜ」

 左右を色とりどりの花に囲まれた石畳を進むと──度数の強い酒と安宿のロビーでストッキングをなおす女にありつければ世はこともなしの野盗風情にしるよしもないが右側は狂い咲きである。桔梗ききょう竜胆りんどうなど半年早い秋の花々とくればこれがいかに奇異なことか──槍持ちが天使をかたどったノッカーを叩いた。

 誰何すいかはすぐにあった。

 それは股間を直撃した。

 妖艶な声であった。

深層に触れた祟りでしょうか、お尻に違和感がある。

痔の怖さは従井ノラくんで熟知しているので、ただちに薬局に行って軟膏を買ってきました。情けない話ですが、初手から座薬にする勇気はでませんでした。

薬を塗りながら、体を冷やさないように気をつけて──身に覚えがあるのでこれが原因かも──台湾らーめんなどの辛いものは封印して、健康に気を使う日々です。

他人に尻の穴を見られて喜ぶ趣味はないのでなんとかこれで治ってほしいものです。と、いうか、大敵の酒とは無縁なんだからお願いしますよ。

みなさんもこれを他山の石とすることなくご自愛ください。

場所が場所だけに気づいた時はマジでびびり散らかしました。

あんな経験はしないにこしたことはない。

それでは、また、次回にお会いしましょう。

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しょうが湯を飲みながら。

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