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街の雑談 釣り堀の女主人

 ご苦労さん。これで最後だね。

 やっぱり、冒険者だけあってロープの扱いは手慣れたもんだ。

 悪いね、坊や。十握の旦那からの言付けを持ってきただけの相手にこんなことまで手伝ってもらって。

 お気になさらずに? なるほど、そうくるか。

 はは、旦那の秘蔵っ子は優秀だね。

 うちの連中なんざ初めに聞いた時には、なんでこんな七面倒しちめんどうなことをやらにゃならないんだって盛大にぶーたれたもんさ。

 ま、あいつらのいうことも一理ある。

 あたしだって相手が旦那でなければ翻意を促してたさ。

 蚊帳ごしに覗くみたいに視界に紗がかかってさ、全身がサウナにいるみたいに火照って、頭なんて働きやしない。あの時は頷くのが精一杯だっだよ。

 泥棒は簀巻きにして川に流すのが定法だなんて旦那がけったいなことをいいだすもんだから手間がかかってしょうがない。客商売の悲しいところで溺死させるわけにもいかないから──魚の餌にしてるなんて変な噂が流れたらそれこそ商売あがったりさ──そいつらの家族や、頼りになる身内がいないときは仕方がないからうちの者が下流で待ち構えていて拾う手はずになっている。面倒くさいったらありゃしない。最初はアーチーさんのところの若い衆が応援にきてくれたんで手際がよかったけど、今はうちの男手連中だけでやってるから目の回る忙しさ。腰を擦りながら恨めしげな目をするんでたまに酒手をやってる。ま、ダース単位でまぬけが川流れすりゃ、名物になる。ようやく恐怖イメージが定着したみたいで初週の三分の一くらいに落ち着いてきたかな。

 たぶん、旦那はこれを狙ってたのかもしれないね。

 新規事業はとかく軋轢を生むもんさ。

 畜養というんだっけ、安定供給するために捕まえた魚の一部を生け簀で飼うと聞いた時にはこれは揉めるぞって頭を抱えたもんさ。

 漁師のほうはアーチーさんが根回ししてくれたのと、板子一枚下は地獄っていうように水難事故で夫を無くしたあたしら寡婦かふと船に乗るにはまだ若い子を優先的に雇うってことで──雇い主が旦那だから既得権益とあぐらをかいてたら即座に追いされちまうけど──上得意客が買った魚を一時的に保管しているようなもんだって納得してくれたけど、こすっからい連中は違う。

 リスク無く魚が獲り放題だって浮かれてやがる。捕まえると、海のもんを勝手に私物化してるあたしらが悪いって、役人にご禁制の品がバレた密売人のオバハンもかくやの往生際の悪さで喰ってかかるからやかましいったらありゃしない。

 これだけでも手間なのに、ミニゲームの定番? だからとわけのわからない理由で旦那が釣り堀も始めるという。

 海がすぐそばにあるのにわざわざ場代を払う物好きなんかいるのかと皆で首を傾げたもんだが──蓋を開ければ大盛況ときた。

 よくよく考えればあたりまえの話さね。

 でっぷりと肥えた魚が確実に手にはいるとおもえば場代など端金さ。三匹までの制限がなければ近所の料理人は日参しただろうね。

 時折いる坊主の──手ぶらで帰るグループは密談目的だろうね。隅っこで小声で話していれば聞かれる心配はないし、人の目が暴発の抑止になる。誰がおもいついたかしらないが頭のいい人はいるもんだ。ただ、餌のミミズがはいった容器を嫌そうな顔で受けとるのは感じが悪いね。そこは、無理してでも笑わないと。

 さて、明日は朝が早いからこいつで切りあげるとするかね。

 残りは物置小屋にでも放りこんでおくとするか。身内と連絡がつかなかった──内済できなかった連中だから、どの道、しばらくは留置所で物騒な連中と面突きあわせて暮らすことになる。肩慣らしにちょうどいいってもんさ。

 明日は壁なしくんだりまで行くことになっているのさ。

 植林活動をすることになっている。

 これも旦那の意向でね。

 海は山が育てる。海に流れる川の成分が魚を育むっていうんだ。山が荒れてたら土壌の栄養が川にいかない。過去に旦那の郷里で、乱開発で木々を伐採したところ特産品の海老の漁獲量が減って困ったことがあったそうだよ。

 風が吹けば桶屋が儲かるみたいな話で、いまいち、わかりかねるが旦那がするっていうんだからこちらは従うだけさ。無理難題はいってこないし、怒鳴ることもない、金払いはよくて、なにより、目の保養になる。最高の雇い主さ。アーチーさんらに倣って、黒いものも旦那がいうなら白とおもうことにするよ。

 そうそう、わからないといえばひとつ気になることがある。

 旦那はあたしの名を呼ぶ時になぜか力むんだ。

 旦那のそばにいる坊やならなにか聞いてないかい?

 なんか、躊躇があるんだよね。

 エロイーゼなんてラウドじゃ六番目か七番目にありふれた女の名前でどこにも気兼ねする要素なんかないんだけど……やっぱり、あれかね、造形の女神とお月さんの寵愛を一身に受ける特別な人は感性が凡夫と違ってくるのかね。

 昔、その名の女に手酷く振られた──さすがにそれはないか。血をわけた姉妹でもない限り、旦那の誘いを袖にする者なんかいやしないから。

ま、息根とめるはあんなことになってしまいましたが、深層組の二次創作はきりのいいところまで書く予定です。

いけないことをしましたが──ファンを失望させはしましたが──傷つけてはいませんからね。自称日本で一番できのいいVの二次創作を途中で放棄するのはもったいないですし。ま、大家とのコラボが実はやらせでセバスチャンだったと露見したら即座に中止しますが。

よその媒体のことばかり書くのもどうかとおもいますので、なろうについてもお話ししましょう。

夜空に月がふたつあって異世界を実感するシーンありますよね。

あれ、当初はわたしも採用しようとおもってたんです。

やめたのは物理法則に反するからではありません。ベタで躊躇したというのは少しありますが。剣と魔法のファンタジーせかいですからね。巨大な衛星が肩をならべてたっていいわけで。なんなら生物という設定にしてもいい。やめたのは十握が理由です。お月さまに恋の鞘当てなどされたら地上の者にどんな影響があるか。どちらかが地上に落下するなどあったらジャンルが変わってしまいます。やはり、太陽と同じで天に二月なしが無難という結論にいたりました。

それでは次回にお会いしましょう。

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