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手合わせ

流石だな。


ライナスと剣を交えて、素直にそう思った。


鋭い太刀筋、正確な突き、軽快な足さばき。

どれをとっても凄い。


・・・常勝の男だもんな、お前は。


目の前で模造剣を構える男を見つめ、アッテンボローは手元の剣を構え直す。


試合形式の手合わせが始まって、既に五分以上経っている。

が、試合は拮抗していて、今も尚、決着がつかないまま、激しい打ち合いが続いていた。


「・・・はっ・・・」


集中を要する激しい試合内容に、流石に肩が軽く上下する。


だが、これまで常に感じていた煩わしい気負いはない。

そのせいだろうか、体が凄く軽く感じた。


「アッテン。お前、腕あげたな」


汗を拭いもせず、ライナスが呟く。

その口元には微笑が浮かび、何故だかとても嬉しそうだ。


「・・・お前もな」


アッテンボローは腰を低く落とし、地面を蹴ってライナスの懐に飛び込む。

すかさず下から剣を振り上げるが、上段から抑え込まれる。


それを斜め下に流して、横から打ちかかると、返す剣ではじかれる。


「はっ、相変わらず、腹が立つほどの反射神経だな」

「そりゃどーも」


憎まれ口を叩くも、お互い妙に楽しそうだ。


手合わせは夕刻から始まったが、既に日は落ち、辺りは暗くなっている。

各所に設置された松明の灯りだけが、二人を照らしている。


「あー、駄目だ。決着つかないや」


はぁはぁ、と肩で息をしながら、ライナスはばたりと地面に横になる。

アッテンボローも膝を地面につき、呼吸が激しく乱れている。


「・・・どのくらい経った・・・?」

「んー、分かんね。・・・一時間くらい?」

「・・・引き分け、か・・・」

「そだな」


仰向けに寝転がり、もうすでに真っ暗になった空を見上げ、ライナスが笑う。

それにつられて、珍しくアッテンボローも笑みを浮かべている。


「・・・なぁ、ライナス。一つ聞いていいか」

「んー?」

「お前、本当にシュリエラ嬢のこと、何とも思ってないのか」

「そうだな、何とも思ってなくはないぞ。あの子、強気で可愛いもんな。あんな妹がいたら面白いだろうなって、思ったりするけど」

「・・・そうか。本当に俺の考えすぎだったんだな」


苦笑を漏らすアッテンボローに、ライナスはきょとんとした目を向ける。


「? 何の話だ?」

「いや・・・」


ライナスは、思わず零れた笑みを噛み殺して誤魔化したアッテンを胡散臭そうに見て、あ、と声を上げる。


「お前な、シュリエラ嬢に告白するんだったら、リュークザインに気をつけろよ」

「リュークザイン? ・・・ライプニヒの現当主か」

「そ。シュリエラ嬢の兄ちゃんだ。あの人、何だかんだ言って家族を大事にしてるから、怒らすとややこしい事になるからな」


ライナスの言葉に、ふむ、と頷いて。


「・・・まだ会ったことがないが、肝に命じとくよ」

「ああ。せいぜい頑張れよ。オレとしては、お前みたいな男だったら安心だけどな」

「・・・お前は」

「ん?」


一瞬、躊躇ったが、アッテンは言葉を継いだ。


「お前は恋人とか、結婚とか、考えないのか?」


その質問は意外だったようで、ライナスは目を丸くしている。


「あー、まぁ、恋人? ・・・はいたらいいな、とは思う時もあるけど。結婚は考えてないかな。ほら、オレ三男だし、爵位も領地もないしね」

「・・・」

「騎士が性に合ってるから、一生独身で騎士やれたらいいなって思ってる」

「・・・そうか」

「従妹との婚約を勧められたこともあったけどさ、なんか、その子も妹にしか思えないんだよねー」


あはは、と明るく笑う。


「殿下やケインみたいな一生の恋ってのにも憧れるけど、そんなのって、そうそうある訳じゃないじゃん? まぁ、幸い、オレは跡継ぎでもないしさ。どうするかは気長に考えるよ」

「そうか」


なんか、コイツらしい。


気負わない考え方に、素直にそう感心した。


「そろそろ寮に戻るか」

「ああ」


暫く夜空を眺めた後、ようやく立ち上がって、鍛錬場を後にした。

寮に戻るまでの道、二人がしたのは他愛もない話ばかりで。


それこそ、好きな食べ物とか、お気に入りの食堂とか、行きつけの道具屋とか。


でも最後に部屋の前で別れる時。

ライナスはアッテンボローの肩を、ぽん、と叩いて。


「お前のは、一生に一度の恋だといいな」


ライナスは、いつもの、あの眩しいばかりの明るい笑顔で、アッテンボローにそう言った。

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