慶事
短めですが、更新しました。
何を言うのだろう。
従兄との祝言を前に身を眩ませろ、とは。
それに、どうやって?
確かに裳着を済ませた翌々日に祝言など聞いたこともない話である。
たしかに十四歳で嫁ぐことは貴族社会ではあることだ。
しかし、不用意に急いでいるように思える。
急いでいるのは従兄ではなく、その父君、叔父上斗練様であり、あろうことか、裳着の次の日にこの母と祝言を挙げる予定になっている。
何でも、「義姉上を一生お守りしますから。」とか言ったらしいが、この点に関しては、甚だ不満である。
私はこの叔父があまり好きではない。
正室の叔母上の身体が弱いことを言い訳に三人もの側室を娶り、さらには、未亡人の母をも手に入れようとしている。
叔父上は、父の継母の連れ子であり、血の繋がりがない。
しかし、イラの領主は世襲制であるが、成人男子に限る。
嫡男麗安は、まだ十歳。
なので、叔父が家督を継いだのだ。
正室の叔母上が前の年に身罷って喪が明けるなり、慶事を連発すると言い出した。
裳着の儀→母との祝言→息子の祝言
明日は、慶事を前に弟の療養所移動も重なり、城中てんやわんやの忙しさになっている。
先程の城の慌しさはそのせいであろう。
話を元に戻そう。
あくまでも母上の眸は真剣で、溢れんばかりの涙を湛えていた。
懐中から小さな袋を取り出すと、私の掌にその中身を開け放った。