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最高の世界へようこそ!!

―――俺は猫が好きだ。


きっかけは田舎の祖父母の家だった。


車を10分以上走らせないとコンビニすらないようなド田舎の、舗装もされていない急な角度の山道を登っていった先に祖父母は住んでいた。


当然そんな場所だから周りに狸や蛇など野生動物もたくさんいた。

でも、野生動物だから警戒心は強いし気性が荒いしで、仲良く触れ合えるような環境じゃなかった。


そんな中、祖父母の家で飼われていた黒猫は人懐っこくて、祖父母家に遊びに行くたびにすり寄ってきては甘えるようなかわいい猫だった。


周りの野生動物をみては遊べないかなぁと思っている中、寄ってくる可愛い猫に、惹かれないわけがなかった。


そうして小さい頃から猫に惹かれながら成長していった俺は、社会人になっても猫への愛が止むことは無かった。

ただペット可の家なんてなかなか見つからなかったため、会社の帰りに猫カフェにより、休日はカメラを持っていろいろな場所へ猫探しに出かけるという、もはや猫オタクといっても過言ではないような生活をしていた。



そんなある日―――


「はぁぁぁぁぁ、可愛かったなぁ。

あの三毛さんはこの辺のボスなのかなぁ…周りに沢山猫引き連れて…可愛いなぁァァァ!!!」


そんな事を呟きながら家路についていると、横の道路に猫が出てきて、道に落ちてたビニール袋にじゃれつき始めた。


「おっ、初めて見る猫だ…綺麗な白だ。

可愛いなぁ…」


ふと目に入ってきた猫に心奪われていると、前の方から猛スピードでトラックが来るのが見えた。


「ちょっ、おーーーい!

危ないぞー!こっちこーーい!」


猫に声をかけると、一度こっちを向きはしたが、気にせずまたじゃれ付き始めた。


同時にトラックの方にも手を降っていたけど、スマホを見てるようで全然こっちに気づく様子はない。


「こんだけニュースやっててまだ脇見運転するような奴いんのかよっ!!」


まだ猫が離れる様子もトラックが止まる様子もない。

周りを見ても、田舎だからか人の姿は見えない。


どうしようか悩んでいる間にもどんどんトラックは近づいてくる。


「あぁ~もう!」


意を決して道路に出て後ろから猫をすくい上げるように抱き上げ、反対に抜けようとすると、それまで白猫が遊んでいたビニール袋が足に引っかかり、躓いてしまった。


「えっ、ちょっ、このタイミングはまずいって!?」


テンパってる間に猫は逃げ、トラックが目の前に迫ってきた。


「あぁ、まぁ、最期に猫助けられたし、いいかなぁ。」


そんなことを思っていると、気付いたら意識がなくなっていた。








猫助けられてよかったなぁ…でもあそこでビニール袋が絡まるとか運ないなぁ…

「助かったにゃん。

いやぁ…まさかこんな事になるとはにゃ…」


ん…??

なんか声が聞こえたような…てかここどこだ、病院?

にしては照明とか壁とか天井がないし…

というかそもそもトラックに引かれて生きてたのか…?


「あ、こっちにゃ、こっち」


声のした方を向いてみると、白髪色白スレンダーな猫耳猫しっぽ美人がこっちを向いていた。


「おぉ、助けた猫みたいな猫コスの美人だ…」


「みたい、というか私にゃんだけど…てかコスって…」


「あぁ、それは失礼を………うん?

私…?」


「そうにゃんだよ、あの白猫私にゃのよね。

正確に言うと私だったというか…」


その後、よくよく話を聞いていくと、

この猫耳美人さんはまた別の世界の神様の一人でプラーティ様と言うらしい。

プラーティ様たちは自分達の世界の発展のために他の世界を見学したいと思っていて、それを地球の神様に告げたら、動物の体を借りて、特別な能力(いわゆる神通力みたいなものらしい)を使わないなら良いと言われ、何人かの神様で色んな国を見ることになり、日本を担当していたのがプラーティ様らしい。

そしてそろそろ帰ろうかと体を借りていた猫に体を返そうかとしていた所で風に舞っていたビニール袋が目に入り、プラーティ様の精神が軽く残っていた体が猫の本能に抗えずじゃれ付きに行ってしまったらしい。

で、そんな状態の猫を俺が助けてその後トラックに跳ねられて死亡、と…


「まぁ、あの猫助けられたなら良かったかなぁ」


「いにゃ~ホント感謝してるニャ。

私が体を借りたせいでっていうのも嫌だしにゃあ。」


とりあえずあの猫のこととかプラーティ様のことは分かった。


「だけど、そもそもなぜ俺のところに…?」


「それなんだけどにゃあ…

地球神に”あなたのせいで亡くなった子なんだからあなたが面倒見てね!”って言われたんだよ…

で、じゃあ、もう今流行ってるらしい異世界転移で良いかにゃって…」


「はぁ…そういや最近よく聞く気がするけど、異世界転移ってなんなんでしょう…?」


「はぁ!?

異世界転生知らないにゃ!?

あんだけ色んなとこに乗ってたし書いてたし同年代くらいの子が話してたんだにゃ!?

あんたオタクってやつでしょ!?分かんにゃいの!?」


「まぁオタクって言っても猫専門だし…そもそも猫主人公の本とかゲームは買うけど猫以外はあんまり…」


「えっ、ちょ、ちょっと待ってにゃ

確認してみるにゃ」


プラーティ様がそう言うと、不思議と自分が生まれてからあの猫を助けるまでの人生が頭の中に浮かんできた。


小さい頃祖父母家に行った時、唯一寄ってきた猫に惹かれたこと。

その後も何かに付けて猫に会いに行くようになったり、野良猫を探し歩いたり…いろんな事したなぁ…。


「あぁ、こういうキッカケで…

へぇ、可愛い…えっ、ちょ、そこまで…

うわぁ、そんなことも…あ、でもちゃんと勉強はするんだ…

へぇ、こんなとこに…

と、とりあえず君が猫のこと9割、生きるのに必要なこと1割みたいな感じで生きてきてたのは分かったニャ。」


あぁ、そう言われるとそうかもなぁ、たしかに猫以外はどうでもいいとさえ思ってたかも。


「じゃあとりあえずこれからの説明をするとにゃ、異世界転移は言葉のごとく異世界、地球とかある世界から私達の世界へ転移…移動してもらうんにゃけど、あなたの体はトラックに跳ねられてグチャってしてるから、新しく作るにゃ。

ここまではいい?」


なるほど、つまり違う世界、新しい肉体とはいえもう一回人生をやり直せるようなものか。

「えぇ、そこまでは分かりました。」


「で、私達の世界なんだけど、君たちの世界で言うファンタジーで…街とか村の外に魔物…モンスター…うーんなんて言ったらわかりやすいかにゃ~、まぁ怪物とか妖怪とかそのへんの奴らがいっぱいいるにゃ。

だからそういうのに対抗するために、日常生活に剣とか魔法とかそういうのが根付いているんだニャ。

この辺も大丈夫にゃ?」


「えぇ、大体想像は付きます。」

つまり小さい頃に呼んだ昔話とか童話とかの話が日常になってるとかそんなとこだろう、ちょっと楽しみではあるな。


「にゃ。

で、ここからが大事ニャンだけど、そういう世界に転移させるにあたって、地球の神から”まさか私の世界の子をすぐ死なすなんて…しないよね?”って言われてるんだにゃあ…

だから新しく作るあなたの体にチート…猫育てるゲームやってたときに調べてたようなのニャ。

それをつけてあげようとしてたんだけど、なんか”これがしたい!”とかないかにゃ?」


「それなら猫と話せたり猫になつかれたり猫を探せたりする能力がほしいかな」

チートさせてくれるっていうんだったらそりゃゲームしてる時も現実でも何度も思ってた。

猫と話せたら良いなぁとか、どんな猫にも好かれたりすれば幸せだなぁとか、どのへんに猫ちゃんがいるかわかれば良いなぁとか、そんな願いを叶えてくれると嬉しい。


「にゃっはっは~そんなことだろうと思ったにゃ~

ただ猫に限定するとなると新しくスキルを発生させなきゃいけないから面倒だにゃ、

《言語理解》、《魅力-対動物》、《周辺探知》の3つを挙げるにゃ。


あと死なれても困るから《全耐性》と《生命力増強》を。

それと死なないって言ってもやられるがままじゃ可哀想だから《精神力増強》と《自由魔法》と《総武術》かにゃ。


それぞれ私達の世界に来たら、使い方が頭に浮かぶようにしとくにゃ。

あとなんかないかにゃ。」


「ちょっと待ってくれ」

えーっと、聞いた感じからすると、猫の言葉を理解できて、猫から魅力的になって、周りの猫を探せる…?

それ以外はまぁ疲れにくいとか、怪我がすぐ治るとかだろう。


「あぁ、多分大丈夫だ。」


「にゃ、良かったにゃ。

じゃあ今から体を作って、魂を定着させるからもう寝てていいにゃ。

起きたら私達の世界にいるはずにゃ。」



「そうか、分かった。

ありがとう、色々と。」

「んにゃ~まぁこういうのが私の仕事だからにゃ。

じゃ、眠らせるにゃ~~」


そう言うと、プラーティが腕をふるような仕草をした。

すると、一瞬で周囲が真っ暗になり、俺の意識もフッと沈んでいった。



んん...なんか体にもふもふしたのが触っているような...猫か!?


「猫ちゃ...うわぁ!」


体に触っていたのは、自分の5倍にもなりそうな大きさのタイガーだった...

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