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背中合わせの恋   作者: 藤乃 澄乃
第1章 背中合わせの恋
5/17

苛立ち

突然そんなこと言われても……。動揺をかくせない私。

 2人残されて、お互いに少し気まずさが漂う。


 暫くの沈黙のあと、たっくんが口を開いた。

「今まで黙ってて……ごめん」

「ひどいよ。私だけ知らなかったの? ナオが言ってくれなかったら、どうなってたの?」

 

 急な話を聞いた後で2人きりになって、戸惑いと怒りが入り交じったような……動揺が隠せない。たっくんも辛いって解っているはずなのに、でも、でもどうしても……言わずにはいられなかった。


 困らせるつもりはなかったのだけど、ただどうすればいいのか解らなくて。

 辛くて哀しいやり場のない気持ちを、たっくんにぶつけてしまったのだ。


彩葉いろはと離れることになるなんて、とても言いだせなかった」

「言わずに行くつもりだったの?」

「いいや、行く前にはちゃんと話そうと思ってた。今日言おう、今日こそはって。でも、彩葉の顔を見てると、つい言いそびれて……」

「突然聞く方が辛いよ!」

「そうだな。俺、彩葉と離ればなれになるなんて考えたくなくて……。

 本当にごめん」


 気持ちは解る……けど。

「……仕方ないよ。気持ち解る。私だってたっくんの立場だったら、とても自分から言いだせない。ナオに感謝だね」

「うん」

「ナオはいっつも私達のこと、大事に思ってくれてるよね」

「……そうだな」


「たっくんは?」

「え?」

「たっくんはどう? 私のこと、どう思ってるの?」

「どうって、大切に想ってるよ」

「大切だから言いだせないっていうの? そんなのおかしい! 夏休みに入ったら引っ越すだなんて、あと1週間だよ! そんなに急に言われても」


「彩葉……」

 困った様子のたっくんに、私は言葉を続けた。


「もう、どうしていいか……。もっともっと話したかった。もっともっと一緒にいたかった。1ヶ月も前に解ってたんだったら、もっと違う時間も過ごせたのに。次いつ会えるかも解らないんだよ」

「離れてたって、冬休みにはちゃんと会いに来るから」

「そんな先のこと知らないし!」

「電話もする、メールも。いつも想ってるから、そんなに怒らないで……」

「怒ってないし、もういい!」

「彩葉!」


 もう、涙が零れそうなのを我慢できなくて、わざと悪態ついて困らせた。私が屋上から走って教室に戻った後も、たっくんはなかなか戻ってこなかった。



お読み下さりありがとうございました。


次話「夕焼け」もよろしくお願いします!

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