変わらぬ日々(2 教室)
変わらぬ日々。
こんな毎日がずっと続けばいいのにな……。
つき合い始めてからもう1年経つけど、ずっと変わらず、彼は優しくて、本当に優しい。私がワガママを言ったりしても、怒ったりしないで、「うん、うん」って聞いてくれる。
私よりも20㎝も身長が高いけど、それ以外は至って普通。
私は、身長161㎝で細くもなく太くもなく……といったところか。肩より少し長い黒髪は、たっくんのお気に入り。マイペースで、勉強はまぁ、そこそこはできるけど、それ以外は至って普通。
2人とも読書が好きで、学校の帰り道、よく街を見下ろせる『見晴らしの丘』で、読書デートなんかを楽しんでいた。
「ねえねえ、今日も帰り、見晴らしの丘に行く?」
「ああ、いいよ。今日は何の本読むんだ?」
「ふふふ、今日は純愛もの」
「へーえ、俺は推理小説」
「読み終わったら、またいつものように感想言い合いっこしようね」
「おう」
学校に着くと、たっくんとはクラスは同じだけれども、お互いに同性の友人を優先している。
たっくんは、ほとんどはちょっと堅物なところもあるけど、結構イケメンで面倒見のいい“ナオ”こと岡崎直斗くんと、大ざっぱでサバサバしているわりに、少々照れ屋の“大将”こと大山将大くんと、3人で連んでいる。
私は、親友でしっかり者の“サキ”こと池本咲ちゃんといつも一緒。
たまには5人で遊びに行ったりもする。
私達は勢いよくドアを開け、みんなのところに行った。
「おはよう」
「おはよう」
「あ、おはよう、彩葉。ねえねえ、今日は1時間目、自習らしいよ」
サキはいつも朝からテンション高めだ。
「やった、じゃ、何する?」
「何って、自習なんだから勉強に決まってるだろ」
「ナオは真面目だなぁ。自習だぜ、トランプとか?」
相変わらずの言葉にたっくんは笑いながら答えた。
「お前は不真面目すぎるよ大将。俺は本でも読もうかな」
「タクは相変わらず本の虫だね。じゃあ、彩葉も勿論読書だね」
「そうだね。サキも読書すればいいのに。楽しいよ」
「彩葉は読書のどこが好きなの?」
「自分じゃない人の、色んな人の人生を追体験できる感じ」
「ふーん、私なんか、自分の日常で精一杯だから、人の人生までとても体験できないわ」
サキの言葉にみんな笑ったけど、私はいたって真面目に思っている。
自分の人生は自分だけのもの。そして他人の人生はまたその人だけのもの。
でも本の中では、その中の誰かになりきって、その人の人生を追体験できるのだ。そんな素敵なことがあるだろうか。
相変わらずの楽しいひととき。いい友人に恵まれて、高校生活も毎日が楽しい。
ここだけの話、大将とサキのこと、本人達以外はみーんな知ってる。両想いだって。はやく告白しちゃえばいいのに、ああ見えて大将は案外にビビリかも?
ナオは、女子に興味あるんだか無いんだか、人の相談にばっか乗って、自分のことはあまり語らない。誰か好きな人はいるのかな? 応援しちゃうのにな。そのうち、たっくんと2人で聞き出してやろうっと。
お読み下さりありがとうございました。
次話「見晴らしの丘」もよろしくお願いします。