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背中合わせの恋   作者: 藤乃 澄乃
第2章 たそがれどき
14/17

静かな時間

ドキドキしているのは坂道を上って来たから?

 さあ、『見晴らしの丘』に着いた。辺りを見渡し、大きく深呼吸をする。でも、ドキドキが収まらない。それが、坂道を上ってきたせいなのか、愛しい人との対面を間近に控えているせいなのか。



 私は、いつもの場所にそっと腰を下ろし、持ってきた本を開いた。

 もうすぐ会える、もうすぐ会える。そう思うと、なかなかページが進まない。でも、それさえも楽しく感じてしまうほどだった。


 どれほどの時間が経ったのだろう、時計を見ようとしたその時に、名前を呼ぶ声に胸が躍った。



彩葉いろは!』

「あ、たっくん!」

『ごめん、遅くなって』

「こうして会えたんだから、時間なんて関係ないよ。たっくん、バイクは?」

『坂の下に置いてきたんだ』

「そっか」


『さあ、本を読もう。スマホ越しじゃなく、背中合わせで。話はそのあとで』




 もっといっぱい話したいことがあったのに、もうそんなことはどうでもいい。何も話さなくても、ただ一緒にこうしていられるだけでよかった。

 背中合わせに座り、お互い好きな本を読みふける。お互いの存在を感じ合いながら、静かに流れゆく優しい時間。

 ただ一緒にこうしていられるだけでよかった。

 すぐ傍に大切な人がいるという安心感。ただそれだけで。




 あなたの背中にもたれ

 ずっとこうしているのが好き

 優しく微笑むあなたの顔を

 思い浮かべるのが好き


 潤んだ瞳の奥

 何が

 何が見えますか?




 ああ、瞳からあなたへの想いが溢れてくる。

「せっかく会えたのにね」

『どうしたの?』

「この本泣ける」

 私は上を向いて、たっくんの背中に頭をもたれかけさせた。

 どうしても零れる涙。



『彩葉、ずっと会いたかったよ』

「私もずっと会いたかった」

『大好きだ』

「私も大好き」

『幸せにね』

「幸せだよ、たっくんとまたこうして会えて」

『そうか』

「そうだよ」


『今まで……ありがとな。彩葉、大好きだ。元気出して、頑張れよ』

「え……」


 たっくん、どうしたの? と振り返ろうとした時、別の方向から名前を呼ばれ振り向いた。

 そこには……。



お読み下さりありがとうございました。


次話「見晴らしの丘で」もよろしくお願いします!

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