ナオのこと
待ちに待ったたっくんからの電話。
夜、待ちに待った電話がかかってきた。
『もしもし、彩葉?』
「うん、たっくん?」
『ああ、無事着いたよ。荷物の搬入も終わって、やっと落ち着いたところ』
「そう、よかった。そっちはどんなところ?」
『いいところだよ。そうだなぁ、強いて言うなら田舎だな。凄くのどかで、近所の人達も皆いい人ばっかりだよ。景色もいいし、早速、読書にピッタリの場所も見つけたんだ。彩葉も一度遊びにおいでよ』
「うん、行きたい! いいところみたいで、よかったね。じゃあ、最初は皆で押しかけちゃおうかな。落ち着いた頃に行けるように、計画立ててみるね」
『ああ、待ってるよ』
心配性な私はたっくんから無事に着いたとの連絡が入るまで、何も手につかなかった。なのに電話の声を聞くとこんなに心躍るなんて、現金なものだ。
でも、凄く素敵なところみたいで安心した。読書にピッタリの場所……一度行ってみたいな。そこでいつもみたいに背中合わせで読書デートなんてできたら楽しいだろうな。
「あ、それから今日、ナオが『見晴らしの丘』に迎えに来てくれたよ。たっくんが頼んでくれたんだって?」
『うん、誰かさんが泣きベソかいてないか、見に行ってもらったんだ』
「残念でした。読書してたから、泣いてるヒマなんかなかったよ」
『うそだね。ナオから聞いたぞ、大泣きしてたって』
「えー、ナオったら、おしゃべりなんだから!」
『いや、報告だよ、報告』
「ちょっと、うるっとしただけだからね!」
『はいはい』
いつもと一緒、いつものやりとり。やっぱりたっくんと話していると楽しい。
それにしても相変わらず仲の良いたっくんとナオ。ちょっと聞いてみようかな。
「ふふっ、それよりさ、ナオ、好きな人がいるみたいなんだけど、誰だか教えてくれないんだよね。たっくん、知ってる?」
『うーん』
少し困ったようなたっくんの返事に、もしかして知っているのかと思った。親友なんだから、そんな話くらいするものなのかなって。
「知ってるの?」
『まぁ、本人から直接聞いた訳じゃないけど、うすうすはね』
「誰、誰? 教えて! ナオは、“告白するつもりはない、彼女の幸せそうな笑顔を、背中越しに見守るだけでいい”なんて言ってるけど、いっつも私達の世話焼いてくれてるから、お返しがしたいの。ナオにも私達みたいに、大好きな人と一緒の楽しい時間を過ごしてほしいの。私、協力するから教えて!」
『本人が話してないのに、俺の口からは言えないよ』
「えー、いつか絶対に聞きだしてやろうっと」
『……あんまりナオを困らせるなよ』
だって、本当にナオにはいつも感謝しているし、もっと自分のことを考えてほしいんだもの。
ふふふ、楽しみ。
お読み下さりありがとうございました。
次話「笑顔で頑張る」もよろしくお願いします!