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第90話 はじめての教室

「アイリンお姉ちゃんがどうしてここにいるの?」


 と、リーリエは当然の疑問をアイリンにぶつけた。


「ええ――実はお婆様やルオ学園長に言われて、ここで先生達のお手伝いをする事になったの。私も今日初めてここに来たのよ」

「ふうん――じゃあお姉ちゃんは先生じゃないの?」

「あはは、まさか。私なんかが先生なんて、とてもとても――授業に必要なものを運んだりとか、皆の宿題を集めたりとか、そういうちょっとした事のお手伝いよ。皆が授業を受けているのが見られるから、私も勉強になるだろうって」

「なるほどつまりあれだね――雑用! うちのパパがよくやってるお仕事だ!」


 リコがふむふむと頷いている。


「ええまあ――そうね……でも仕方ないの、私に出来るのってその位だし――」


 と、ちょっとアイリンはしゅんとしてしまう。


「大丈夫! 雑用しかできなくてもパパもママも私も生きてるよ! びんぼーだけどね!」


 リコに全く悪気は無いのだ。その無邪気さが分かり、アイリンはすぐに気を取り直す事が出来た。


「ふふ、そうね――私も頑張るわね」

「ねえねえ。でもリコちゃんのおとーさんって、騎士さんなんじゃないの?」

「元だよ、元。私が知ってる限りお仕事は雑用しかしてないよ。ずーっとあっち行ったりこっちい行ったりして、雑用してるの。ママもそうだよ」

「つまり、ずーっとあちこち旅を続けてるって事?」

「うんそうだよ、ユーリエ。私が覚えてる限りはずっとそう」

「そうなんだ。あたし達より旅してるのが長いのね」

「色んな所に行けて楽しそうだね!」

「でもねえ、どこかの街に行ってもまたすぐ出て行ってたから、友達もあんまりできなかったし、学校も通った事無かったの」

「あ、あたし達と一緒ね」

「お揃いだね!」

「そう! だから思っきし楽しんでやるぞー!」

「「「おー!」」」


 と声を揃える三人と、それを微笑ましく見ていたアイリンだったが、ここは職員室だった。


「――コホン。ここは職員室だから、あまり大声で騒がないように。アイリン、君がちゃんと見ておくように」


 やって来たルオ学園長に、そうお小言を貰う羽目になってしまった。


「あ、済みません学園長――」

「「「ごめんなさーい」」」


 リーリエ達が声を揃えると、ルオは少し笑顔を浮かべる。


「では君達の教室の先生を――」


 と、ルオ学園長が言おうとする側から、見た事のあるおじさんが割り込んで来た。


「やあまた会ったね君達! アルケール学園にようこそ!」

「あ、ゴーレムのおじさんだ!」


 エイスの元にやって来てゴーレムを破壊されて喜んでいたおじさん達の中でも、最も元気がよくてちょっと変わった感じの人だったと、リーリエは記憶していた。


「イゴールさんよ、リーリエ」


 ユーリエはこの人の話が興味深かったので、ちゃんと名前まで憶えていた。


「イゴール先生、後は頼みますよ。アイリンは前から欲しいと言われていた助手ですので、ご自由にお使いください」

「おお君が助手になってくれるのか! では早速新型ゴーレムの資材を――」

「――授業に関係する事にだけ使って下さい!」

「ちぃっ。アイリン君ならばゴーレム作りを手伝わせた方が役に立つものを……既に何度も手伝ってもらっておるからな」

「ええ。あなた方が彼女を便利使いしようとし過ぎるのもあり、こうして正式に給金の出る役目を割り当てたわけです」

「むぅ……!? しかし、アイリン君が勉強になるからと――」

「ええ。私は別に、嫌々やっていたわけでは――」

「だがこの間の依頼(クエスト)の結果を見ても、あまり勉強は捗っていない様子――」

「あう……」


 痛い所を突かれたアイリンが呻き声を上げる。


「なので、少し環境を変えて見るのもいいだろうという事だ。子供達に混ざって、基礎から錬金術を学んでみるのもいい」

「そ、そうですね――私、早く一人前の錬金術師になって、お婆様を安心させてあげたいです!」

「その意気だ」


 と、ルオ学園長は頷く。


「ようし、では諸君! 早速教室に行くぞ」

「分かりました」

「「「はーい」」」


 と、イゴール先生に先導されて、リーリエ達は教室に向かった。

 その道すがら、先生が学園について説明してくれる。


「この学園は、年齢や習熟度に応じて三段階の教室が用意されている。君達に入って貰うのは一番小さな子達が集まっている所だよ。初歩的な所から学んで行くから、何も難しい事は無い。錬金術というものに親しんで行ってくれ。もちろん普通の勉強や運動をする授業もあるからね」

「はい! 運動なら得意です!」

「同じく!」


 リーリエとリコが運動という言葉に反応していた。

 確かに二人とも運動神経がよくて、足も速いのだった。


「運動は苦手だけど、勉強なら――」


 ユーリエはその二人とは真逆、運動は苦手である。


「うんうん。みんなそれぞれに得意なものを持っているのはいい事だよ。先生は運動も勉強も苦手だったが、ゴーレムが好きで好きで、いつの間にかこうなっていたからね」


 と、子供達に接しているイゴールの姿はアイリンにとって少々驚きである。

 ゴーレムに関する事の場合はあんな狂気じみた感じであるのに、学校では至極まともだからだ。

 まあこちらの姿を副業と言って憚らなかったが――


「さぁ、ここが教室だ。では入ろう――!」


 と、大きな教室の扉を開けようと、手を掛ける。

 リーリエもユーリエもリコも、そしてアイリンも、少々ドキドキして来た。

 この扉の中からは、未知の世界なのだ――

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