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第88話 天使のお着替え

「じゃんじゃじゃ~ん♪ 早速着替えてみたよ~!」

「エイス君! どうかな!?」


 夕飯の支度のため台所に立つ俺の元に、二人の天使がやって来た。

 ルオさんが持って来てくれた『アルケール学園』の制服を前に、我慢が出来なかったらしい。早速着替えて見せに来てくれたのだ。

 何と言うかもう、ただただ可愛らしい――

 この街に来て『アルケール学園』に通う事にならなければ、この姿は見られなかったのだ。この素晴らしい偶然に感謝をし、天使たちの制服姿を目に焼き付けておこうと思う。


「ああ。二人ともよく似合っている。可愛いな、本当に可愛い――これだけでも騎士を辞めて旅行に出てきた価値がある」


 俺は料理の手を止めて、二人をそれぞれ片手ずつで抱き上げた。


「わ~い、気に入って貰えたぁ!」

「可愛いわよね、この制服!」


 二人ともご機嫌のようだ。

 やはりまだ小さくとも女性は女性。新しい服を褒められて気分の悪かろうはずもない。

 手に入れてすぐ我慢できずに着てしまうあたりはまだまだ子供そのもので、そういう行動もまた可愛らしい。


「パパー! 私も着替えたぞ~! 見て見て!」


 同じく学園の制服に着替えたリコも、椅子に座って食事を待つヨシュアに見せに行っていた。


「リコ、お前似合ってはいるけどボタンがずれてんぞ。ちゃんと着なきゃダメだぞ~」


 と言いながら、リコの制服のボタンを直していた。


「あらあら……リーリエちゃんとユーリエちゃんはしっかりしていて、羨ましいですね」


 同じく食事の支度中のステラさんが、そう微笑んでいた。


「えへへへぇ~♪」

「リーリエもボタン外れてたじゃない。あたしが直してあげたんだから」

「あ~! 言わなくてもいいのに! ユーリエのばか!」

「だって本当の事だもん!」


 と、俺の肩の上が賑やかだった。


「ふふふ、リコだけがうっかりさんじゃないという事ですね。安心しました」


 そんな皆の様子を眺め、既に帰宅していたアルディラさんは目を細めていた。


「いやあ小さい子がいてくれると、賑やかでええですじゃの~」

「済みません、騒がしくしてしまって」


 と、俺が頭を下げてもアルディラさんはにこにことしていた。


「ええんですじゃよ。ぱっと家の中が明るくなった気がしますでの~」

「と言いつつも、こいつらの喧しさにそのうち耐えかねて……こう、ブチっと来ないように祈ってますよ、三人いると三倍以上に騒がしくなるのが子供ってもんだ」


 冗談めかしてヨシュアが言う。


「ほっほっほっほ。アイリンがこちらに来てくれるまでは、一人寂しく暮らしておったですからの、それに比べれば天国のような……っゴホゴホ――ッ!」


 と、不意に咳き込むアルディラさん。


「あっ! 大丈夫ですかお婆様――すぐお水を……!」


 とアイリンは水を持ってアルディラさんの側に行き、甲斐甲斐しく背中を擦っていた。

 錬金術師としてはまだまだ新米なのだろうが、老齢のアルディラさんを心配して移住して来たという話だし、気立ての優しい孫娘である。


「ああ、大丈夫じゃアイリンや。ありがとうのぅ――」


 それを見た我が家の子供達は、俺の腕から下りるとアルディラさんに駆け寄っていた。


「大丈夫? お婆ちゃん」

「これで少しは楽になります――」


 治癒魔術の光を、アルディラさんの背中や喉元に翳す。


「おぉこれは治癒魔術――? 驚いた、二人とも治癒術師なんだねぇ……ああ、凄く楽になったよ。どうもありがとうねえ」

「二人ともありがとう、凄く助かったわ。小さいのに凄いわね」

「「どういたしましてっ!」」


 二人とも可愛らしい笑顔で返していた。

 治癒魔術で痛みを癒し、天使の笑顔で心を癒す。

 何と素晴らしい治癒術師なのだろう。我が家の娘達ながら、完璧ではないか。


「ふふふ――エイス殿が年をお取りになっても、この娘達がおれば安心ですのお」

「うんっ! わたし達、ずっとエイスくんと一緒に居るよ!」

「うんっ! そうよね! ずっと一緒だから!」


 嬉しい事を言ってくれる――無感動、無感情と言われる俺ですら微笑んでしまう程に。


「おーおー。アクスベルの軍神がデレデレしてますなあ」

「構わないさ。それだけこの子達が輝きに満ちているという事だからな――俺のような人間でも笑顔にしてしまうくらいにな」


 と、治癒魔術に興味を持ったらしいリコが二人に尋ねていた。


「ねえねえ、治癒魔術ってして貰うと気持ちいいのぉ? 私もやってー!」

「えぇ? でもどこも悪い所が無いと効かないよ?」

「うん。逆に体が治癒魔術に慣れちゃって、本当に怪我した時に効き目が悪くなったりするかも知らないから――何も無いならやめた方がいいわ」

「えー? じゃあ怪我すればいい? よし、ちょっと指を切って――」

「こらやめろ、リコ。自分で怪我するなんて駄目だぞ」

「そうよ。ママ達はリコが怪我するのなんて見たくないわ。治してもらえるとしてもね」

「う~ん。じゃあ、ほんとに怪我したら治してね?」

「うん!」

「わかった!」


 何はともあれ――今日は合格通知も来たし、お祝いだ。

 豪華な料理を作って、元気よく学校に行ってもらえるようにしてあげねば。


 『浮遊城ミリシア』を見て、また旅立つまでの短い間だが――

 学園に通う事が、この子達のいい思い出になってくれればいい。

 俺はそんな風に思いながら、再び台所に戻ることにした。

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