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第61話 協力体制

 二人も連れて飛ぶのは重いが、リーリエは必死に魔術を操り高く舞い上がった。

 それまでの戦いによって半壊気味の宿屋が、眼下に見下ろせるようになる。


「二人とも、大丈夫!?」


 リーリエは手を繋いで一緒に飛ぶネルフィとレティシアに呼び掛けた。

 二人とも光の魔術で眩んだ目が元に戻ってきたようで、何度も瞬きをしながら瞳を開ける。


「やるわね、リーリエちゃん! いい機転だわ!」

「助けに来たつもりが、助けられたようね――」

「ねえ二人とも、もう喧嘩しないでね!?」


 とリーリエに言われ、二人は顔を見合わせる。


「そもそもあんたが、うちの冒険者を叩きのめすからだわ。敵にしか見えなかったわよ!」

「中に踏み込んだら問答無用で襲われたんだ。仕方がないだろう、誰の指示だ!?」

「あー……」

「お前か!?」

「こっちも色々あって非常事態だったのよ! そうね。リーリエちゃんを守るって目的は一緒みたいね、それは認めるわ。ここは協力しましょう」

「……まあいい――この場はそうせざるを得ないだろう」

「よかった……! じゃあ、どこかに降りるね! 怪我を治すから――」


 ネルフィとレティシアに治癒魔術をかけてあげないと――と思う。

 リーリエが着地点を探す間、ネルフィとレティシアがこの後どうしようかと話をしていた。


「エイス先輩はどこに行かれたのだ? リーリエちゃんを先輩の元に連れて行ってあげたいのだが」

「ユーリエちゃんと一緒に依頼(クエスト)に出ているわ。翠玉竜(エメラルドドラゴン)が出たって」

「それは恐らく偽情報だ。リジェール達は、エイス先輩を欺いて連れ出すことに成功したと言っていた」

「えええっ!? でも依頼(クエスト)を依頼してきたのはマグナス侯爵の配下の騎士よ!?」

「それが奴等に協力しているようだ」

「……ったく迷惑ね! 悪知恵が働く奴等だわ!」


 マグナス侯爵が自領で兵を動かす事は、自領なのだから別に何の問題もない。

 アクスベルの貴族が犯罪者を捕えるあるいは討ち取るというような名目で協力を求めてきたのなら、侯爵も特に悪気も無く受け入れても仕方がないだろう。

 元々アクスベルとスウェンジーは友好国であるし、そこに贈り物の一つでもつけば、助力を得るのは容易い。


「奴等はリーリエちゃんを人質にし、エイス先輩を倒すつもりだ。先輩を倒したという箔がつけば、次の白竜牙騎士団長や筆頭聖騎士を取れると思っている」

「なるほど……手柄欲しさの暴走ってわけね」

「ああ。だが、個人的な逆恨みが最も大きいかもしれないがな――しかし先輩が今どこにいるか、詳しい場所は分からないのか?」

「そうね。翠玉竜(エメラルドドラゴン)を探して移動してるでしょうね。あんたの話の通りなら、いないわけだけど――」

「こちらから探しに向かうべきか――」

「……何とか上手くあんたの所の奴だけ撒いて、こっちの奴を捕まえたいけど――」


 ネルフィとしては白羽の矢を打ち込んで生贄を奪いに来るあの異形達の巣を突き止め、殲滅したい。

 そうしないと、このレイクヴィルの街はいつまでもその脅威に晒される事になる。


「待ちやがれッ!」

「逃がしはせんぞッ!」


 後方から、声がした。

 振り向くと、そこにはリジェールとフリットの姿がある。

 彼等もフリットが自由と風の神スカイラの守護紋(エンブレム)を持っていたのだ。

 リジェールを伴い、空まで追跡してきたのだ。


「追いつかれちゃう!」


 飛ぶ速度は、あちらの方が早かった。

 こちらは三人、向こうは二人。

 まだ子供のリーリエと、仮にもアクスベルの青竜牙騎士団長のフリットでは、さすがにリーリエに分が悪い。


「撃ち落としてやるぜっ!」


 フリットの掌からうねる様な突風が生み出され、リーリエ達の動きを捉える。

 自由と風の神スカイラの風の魔術が、フリットの得意とするところである。


「うわわわっ!? ダメ、落ちちゃう!」


 風により飛行の制御が効かなくなり、リーリエは慌てた。


「大丈夫よ!」


 と、三人を球体の形状をした防御結界が包む。

 ネルフィによる境界と盾の神デューセルの魔術だ。

 結界に包まれることにより、リーリエの飛行の制御も安定する。


「降りて、迎撃しましょう! 空中戦はこちらに不利だ!」

「そうね、やるしかないわね――!」

「うん、分った降りるね!」


 ちょうど足元には、エスタ湖に面した市場の中央にある広場が見える。

 夜中で人はいないし、場所も広い。

 先程のように建物を壊してしまう事も無いだろう。

 結界に包まれたリーリエ達は高度を下げて行き――

 ある地点で、ガクンと横に引っ張られた。

 地上から何かが伸びて来て、結界に巻き付いたのだ。


「きゃっ!?」

「何!?」

「あれだ、下に先程の奴等がいる!」


 水神様の従者の格好をした異形の集団だった。

 十近い集団が一斉に腕を長く伸ばし、球体状の結界に巻き付けたのだ。

 そしてそのまま、引きずって行こうと一斉に走っている。

 異様に統率されており、動作がぴったり揃っている。

 その様子が不気味な凄みを感じさせる。


「「「うわああああっ!?」」」


 リーリエ達はそのまま引きずられ、広場ではなく市場の裏手の湖岸に投げ飛ばされて落ちた。

 地面に叩きつけられる衝撃は、結界が殆ど吸収してくれたが――


「ごめんなさい、結局どっちにも追いつかれちゃった――!」

「大丈夫よ。おかげでちょっと休めたし、リーリエちゃんは必ず私が守ってあげるわ!」

「私も同じくだ! そのためにここに来たのだから……!」


 それに、これだけ時間を稼げればフェリドも追いついて来るだろう。

 リーリエが稼いでくれた時間は、決して無駄ではない。

 レティシアとネルフィは、その場で迎撃態勢を取った。


「怪我、治すね!」


 リーリエは急いでネルフィが負った怪我を治癒魔術で治し始める。

 ネルフィの方が負傷が重い。

 敵が追い付いてくるまで僅かな時間だが、しないよりした方がいい。


「しかしエイスさんも人の子ね――リーリエちゃんがこんな事になっているのに戻ってこないんだもの」

「それで構わない。それは、私などでも力になれる事があるということなのだから」

「ふん――いい女ぶっても無駄よ」

「はぁ? 何を言っている?」

「あんた、エイスさんの副官として一緒にいたのに置いて行かれたんでしょ? もうフられたようなもんね! 望みナシ!」

「う――うるさい! 貴様などに言われる筋合いはないっ! 貴様こそ以前の合同任務の時は先輩に色目を使おうとして、相手にされていなかっただろう!」

「あんたが邪魔するから、ちゃんとエイスさんと話せなかったんでしょ! でも私達、この街で運命的な再会を遂げたわ! もう打ち解けたし、私達上手くやって行けると思うの!」


 それを聞きながら、よくこの場でそんなことを言い合っていられるなあ、とリーリエは思った。

 動揺や怖がっている様子が微塵も無いのは凄いが――

 と、湖岸にリジェールやフリット、異形達が姿を見せる。追いついて来た。


「二人ともそこまで! 来たよおっ!」


 リーリエは二人の口喧嘩を制止した。


「来たわね――あんたと決着をつける前に、まずはあいつらを潰すわよ。いいわねレティシア!」

「ふん。あのまま続ければ私の勝ちだ。もう一度やっても結果は変わらないが、いいだろうネルフィリア!」

「口の減らない奴!」

「お互い様だ!」


 睨み合ってはいるが、協力する気はあるようだ。

 自分達の保護者であり親代わりのエイスが綺麗なお姉さん達にモテるのは鼻が高いが――

 好きな人が重なると、人間はああしていがみ合うものなのだろうか?

 ではもし自分がユーリエと同じ人を好きになってしまったら、仲が悪くなってしまうのか?

 それは嫌だなあ、と素直に思った。

 まだ恋など経験した事はないので、よくは分からないが――

面白い(面白そう)と感じて頂けたら、ブクマ・評価等で応援頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

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