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第49話 捜索

 翠玉竜(エメラルドドラゴン)捜索のために街を出た俺達は、カルロ殿の先導でそれが目撃されたという場所に向かった。

 現場は街を出て数時間ほど行った所にある山間の盆地だった。

 平地を囲む小山は緑が豊かで、身を隠すものも多い。

 しかし、翠玉竜(エメラルドドラゴン)が身を潜めるには手狭なような気がする。


「このあたりで、翠玉竜(エメラルドドラゴン)が目撃されたとの事なのですが――」


 カルロ殿がそう言って、辺りを見回す。


「妙ですね」

「え? ど、どうしましたエイス殿!?」

翠玉竜(エメラルドドラゴン)の成体はかなりの巨体です。ここに現れたのなら、この付近の草木に当たって、ある程度倒されたり擦れたりしていると思うのですが……綺麗過ぎますね」

「あ……! え、ええそうですね……! きっと、成体ではないのではないですか?」

「それはそれで妙ですね」

「え……!?」

翠玉竜(エメラルドドラゴン)の子供は草食性です。ここに現れたのならば、草を食べた後がありそうなものですが――それもない」

「そ、そうですね――! 腹が空いていなかったのではないですか!?」

「……まあ、そうとも考えられますが」

「ねぇエイス君」


 と、俺の前に座るユーリエがこちらを振り向いた。


「どうした?」

「目撃された翠玉竜(エメラルドドラゴン)が子供だって事は……クルルのお父さんやお母さんがクルルを連れ戻しに来たんじゃないって事?」

「そうかも知れないな――クルルの兄弟が迎えに来た可能性はあるが。何にせよ見つけてみないとな。何とも言えないな」

「そう……クルルとお別れしなくて済むのかなって思ったから――」

「まだ分からないが、それならそれで、その翠玉竜(エメラルドドラゴン)はクルルと同じ迷子だな」


 そんなに続けて迷子の翠玉竜(エメラルドドラゴン)を見かけるとは――

 もしそうなら翠玉竜(エメラルドドラゴン)の群れに何か異変が起きているのか?


「そうしたら、クルルと一緒ね。クルルも寂しくないわ!」

「クルルゥ~♪」

「ははは。それはまた賑やかになりそうだな」


 体を小さくする魔術の手間が二倍。

 食べさせる食料の草の準備も二倍。

 だが子供達が喜ぶなら、それもいいだろう。


「しかし、その姿も見えないとなると――どうしたものか」

「もう去ってしまって戻って来ないというなら、もう危険はありませんが……他にも目撃された場所があるそうですので、そちらに向かいましょう」

「そうですか。少し長くなりそうですね――」

「済みません、お手数をおかけしまして……」

「いえ。では早く向かいましょう」


 出来るだけ早く、リーリエの所に帰ってあげないといけない。

 俺達は馬首を返して、カルロ殿の言う別の場所に向かおうとするが――

 周囲の草木の影から、唸り声が聞こえて来た。

 それも一つ二つではない。


「む――?」

「な、何……!?」


 それは極度に発達した大きな牙を持つ狼の魔物、サーベルウルフだった。

 この魔物は割と広い範囲に生息しており、旅人が襲われたりすることもままある。

 それがかなりの数、あちこちから姿を現し俺達を取り囲んだ。

 その数は十や二十では下らない。

 五十いや百――

 先頭には片目が潰れた、一際大きなサーベルウルフがいた。

 これがこの群れの首領なのだろう。

 大きな群れが総出で襲ってきたように感じる。

 ――だからどうという事でもないが。


「ば、馬鹿な多過ぎる――! こんなこと――わ、我々をどうするつもりだ!?」

「いや、特に問題はありません。皆近くに集まって下さい」


 俺はカルロ殿やお付きの兵士達を近くに集めた。


「これはこれで、旅人の安全確保のためになります。倒しておきましょう」

「し、しかしエイス殿――! このような数、いくら何でも我々だけでは……!」

「大丈夫。手は煩わせませんので」


 その時、群れを率いる片目のサーベルウルフが大きく吠えた。

 それを合図に、サーベルウルフの群れが一斉に突進を始める。


「吹き飛べ」


 俺が発動させたのは、自由と風の神スカイラと怒りと炎の神イーブリスの守護紋(エンブレム)の力を動員した爆裂の魔術だ。更にそれを秩序と光の主神レイムレシスの魔術全増幅(マイティブースト)で増幅しておいた。

 集まった俺達を中心に、爆風が放射状に広がる。

 凄まじい轟音と共に、地面は抉れ木は吹き飛び、そしてサーベルウルフの群れも全てが吹き飛んだ。


「わぁ~エイス君やっぱりすごい……」


 ユーリエは周囲を見渡しため息をつく。

 とはいえ見慣れているので、そこまでの驚きでもないらしい。


「おお――な、なんという……一瞬で……こ、これがアクスベルの軍神の力とは――」


 一方カルロ殿は爆風に驚いたか落馬して、地面に尻もちをついていた。

 随行している兵士に助け起こされていた。


「さ、ぐずぐずはできません。早く次の地点に向かいましょう」


 俺は身を起こすカルロ殿を促す。


「え、ええそうですね、分かりました……」


 カルロ殿は何か怯えたようにそう答えたのだった。


 その後いくつかの地点を回るも翠玉竜(エメラルドドラゴン)は発見できなかった。

 結局野営で一晩を過ごす事になってしまい、その日は戻れずじまい。

 俺もユーリエも落ち着かずに、夜を明かしたが――リーリエは大丈夫だろうか。

 ネルフィが見ていてくれるので、問題ないとは思うが――


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