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第22話 釣りクエスト

「はい、じゃあ今日は釣りの依頼(クエスト)ね。頑張って来てね~」


 冒険者ギルドのカウンターで、ネルフィが笑顔を見せる。


「「は~い! 行ってきまーす!」」


「いってらっしゃい!」


 彼女に見送られ、俺達は冒険者ギルドを出た。

 今日の依頼(クエスト)はユーリエの希望で釣りになった。

 釣りができるエスタ湖は街にすぐ隣接している。

 湖に面した港もあり、桟橋や船着き場もある。

 俺達に自前の船は無いので、ひとまず長めの桟橋に行って釣り糸を垂らす事にした。


「うーん中々釣れないよぉ? やっぱり別の依頼(クエスト)の方が……」

「大丈夫よ。きっと釣れるから! ゆっくり待ちながら楽しめばいいのよ」

「ずーっとじっと見てるのは退屈だよー……」

「まあ、こういうのは根気が大事だろう」


 と、そんな俺達に声をかける者がいた。


「おや? よう、あんた!」


 それは俺達がこの街にやって来た初日、冒険者ギルドの場所を教えてくれた男だった。

 あの時は荷車を押していたが、今日は釣竿を肩に担いでいた。


「ああ、この間の――」

「ロマークだ。ロマーク・クーゼ。この間はありがとうな」

「どうも。俺は――」

「ああ聞いてる。エイス・エイゼルさんだろ。あの有名な――さ」

「……どうして?」


 知っているのだろう。


「そりゃあ、冒険者ギルドじゃああんたの噂で持ち切りだぜ。あのエイス・エイゼルが子連れで冒険者になりに来たってさ。俺も一応冒険者の端くれだからな。ただギルドマスターのタラップが騒ぐなって言うから、みんな大人しくはしてるが」

「……なるほど」

「本来なら俺なんかが声をかけるのも失礼ってもんだが――」

「いえ、今の俺は単なる第七等級の冒険者です。お構いなく」

「はっははは! 話が分かるねぇ、エイスさん」

「ところで俺に声を掛けたのは、何か理由があって?」

「ああ。そこじゃあんまり魚は釣れねえぜ。今から俺も釣りに出かけるからな、船を出すから一緒にどうだい?」

「わ! 船に乗せてくれるの~?」

「船釣りっていいわね! やってみたい!」


 子供達もそのロマークさんの提案に乗り気のようだ。


「済みません。ではお願いします」

「ああ。借り物の船だけどな。俺に船を持つような金はねえからさ。ついて来てくれ」


 俺達は彼に付いて行き、桟橋に泊められた小舟に乗り込んだ。

 ロマークさんの知り合いの商人の船だそうだ。

 それで湖上に出て釣りを始める。

 ロマークさんは釣りに相当慣れている上級者のようで、子供達に釣り方を教えてくれていた。その教え方がいいのか単に釣り場がいいのか、子供達の竿には次々と当たりがやって来ることになった。


「わわっ! 釣れたー! でもビチビチ跳ねて触れないよ~! エイスくん取って!」

「いいよいいよ、おじさんが取ってやるからな。どんどん釣りな」

「わーいありがとうロマークおじさん!」

「おういいって事よ!」


 と、リーリエの竿にかかった魚を取り外してやりながら、彼は笑う。


「いやあ、娘ってのも可愛らしくていいねえ。ウチは男だからよ」

「息子さんが?」

「ああ、そうだ。最近めっきり生意気になりやがって、苦労するぜ。あんたも気を付けなよ? 十二、三にもなりゃあ、こっちの言う事なんざ聞きもしねえ」


 と、自分の釣竿の糸を湖面に垂らしながら言う。


「……気を付けておきます。ロマークさんはずっと冒険者を?」


 俺もそれに倣い、湖面に糸を垂らした。


「まあな。けど嫁さんを亡くすまでは魔物退治やダンジョン探索なんかもやってたが、今は専ら採集や荷運びの依頼(クエスト)で生計を立ててる。だからもうずっと冒険らしい冒険はしてねえな」

「何故です?」

「そりゃあ、万が一にも俺が依頼(クエスト)で死んじまったら、残った子供が路頭に迷うからな。安全第一で生きて来た結果だよ。おっと当たりが来たっ!」


 と魚を釣りあげる彼の腕前は非常に手馴れており、熟練の技を感じさせる。


「上手いですね」

「ああ、もう魔物と戦うよりこっちの方が上手くなっちまったよ。まあ元々大した腕じゃねえから、元々こっちのが向いてるのさ。万年第四等級冒険者だったからな。今でもそうだが。それでもまあ何とかやって行けてるさ――っとまた来た!」


 また手馴れた所作で綺麗に魚を釣り上げる。


「うわー。おじさん上手~!」


 とリーリエが歓声を上げ、ユーリエは俺の方を見た。


「エイス君は全然釣れないね? これじゃエイス君だけ依頼(クエスト)失敗だよ?」


 リーリエもユーリエも既に何匹も釣っており、俺だけが成果が無かった。


「ああ。釣り竿で釣りをするのは初めてかも知れない」

「え? じゃあどうやって釣りをするの?」

「あっ! あ~~~! 冒険者バッジがあぁぁ~~!」


 何かの拍子にリーリエがつけていた冒険者バッジが外れ、ポチャンと湖面に落ちた。

 バッジを気に入っていたリーリエが、船から身を乗り出して涙目になる。


「うううう~~~……! 落ちちゃったよおぉぉ~~!」

「リーリエ。泣かなくていい、俺が取ろう。ユーリエ、せっかくだから俺の釣りの仕方を見せよう」


 俺はそう宣言した。

■修正報告

以下のように内容修正しました。

・第6話にて、リジェール殿は国王陛下の命令に背いたのでしばらく謹慎に

・第15話にて、冒険者のダッカとコタールの二人は役人に突き出されて牢屋へ行くことに

皆様コメントありがとうございます。

時間が取れないのでレスはできませんが、定期的に見させてもらっています。

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