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第124話 水晶の花園

「わっ!? ユーリエおっきくなってるよおぉぉっ! すごーい、可愛いよ! だったらわたしも可愛くなってるんだ! やったー!」

「うんリーリエすっごく綺麗になってる……! ああでも喜んでる場合じゃないわ! 早くアイリンさんの所に行くわよ!」

「ああそれがいい。皆待っている」


 俺達はすぐに、アイリンの待つ寝室へと移動する。

 二人はすぐさま治療に入った。

 二人で協力しなければ使えない、強力な治癒魔術を惜しみなくつぎ込む。


「お願い効いて……!」

「アイリンさん頑張って……!」


 その二人の治癒魔術は、今度は効果を発揮した。

 少しずつではあるが、アイリンの怪我が癒えて行くのだ。

 アイリンの体質は治癒魔術の本来の効果を狂わせ、無効化してしまうが――

 その効果を歪める力を、大きくなったこの子達の治癒魔術の力が上回ったと解釈できるだろう。


「やった効いてるよ……! ねえユーリエ!」

「うん! でもまだ油断はできないわよ! 治るのが凄くゆっくりだから!」

「そうだね……よぉし、このまま治るまでがんばろ!」

「うん! 途中で疲れたって言っても聞かないからね!」


 それから結構な時間が経ち――

 昼下がりだった時間が、夕刻に差し掛かかる程になった。

 子供達にも疲労の色が濃くなって来た。

 と、言うよりもここまで休み無しに最大の力を出し続けて来たのだ、よく頑張ったと言える。体が成長したことにより、持久力も増しているようだ。

 小さいままでは、あそこまでの魔術をここまで長い時間維持するのは不可能だっただろう。


「う、うう……ちょっとキツくなって来たね……」

「まだまだ……! まだ頑張れるわよ!」


 そんな時である――


「あ……わ、わたし――」


 アイリンの大きな瞳が開いた。意識を取り戻したようだ。


「わあぁぁぁぁっ! やったぁ! アイリンお姉ちゃんが起きたよ!」

「うん! やったわ! アイリンさん! あたし達が分かる!?」


 しかしアイリンには、大きくなったリーリエとユーリエは初見だ。


「ええと……? どちら様ですか?」


 きょとんと首を捻っていた。


「ああ、いきなり大きくなっちゃ分からないよねえ。リーリエちゃんとユーリエちゃんが『フェアリードロップ』を作って飲んで、怪我したおまえを治療してくれたんだよ」

「あ……お婆様――ごめんなさい。わたし、お婆様の本当の孫じゃなかったんですね……それどころか普通の人間でも……色々何をやっても上手く行かなかったわけが分かりました。本当に何も知らなくて、色々迷惑をかけて――」

「いいんだよ! そんな事は……勝手におまえを『浮遊城ミリシア』から連れ出した私の方こそ、謝らないと……!」

「二人とも、待って! わたし達、そんな風に悲しい顔をし合うために頑張ったんじゃないよぉっ!」

「うん、リーリエの言う通り! アイリンさん達が今まで通りに暮らせるように頑張ったんだから!」

「ほっほほ。そうかい? そうじゃねえ、私はそれがええのお。なぁアイリン?」

「はい、お婆様! わたしもそれがいいです……!」


 アイリンとアルディラさんは、しっかりと抱き合っていた。

 色々と複雑な事情はあるにせよ、仲のいい家族が家族としてそのまま暮らしていけるのであれば、それでいいと俺は思う。

 司令官であるマポレフスキンは撃破したし、『浮遊城ミリシア』自体は元に戻った。

 暫くは様子を見る必要があるかも知れないが、もう大丈夫だろう。

 ともあれ一つの家族を、俺と子供達の力で救う事ができたのだ。

 それは誇ってもいい事だろう。


「二人ともよく頑張ったな、偉かったぞ」


 俺は子供達の頭を撫でる。


「えへへっ! 頑張ったよ!」

「うんっ! 間に合ってよかった……!」


 俺が頭を撫でると、素直に喜んでくれているようだ。

 見た目こそ成長したが、中身はまだ子供のままなのだ。

 と、子供達の体が再び光に包まれる。

 『フェアリードロップ』の効果が切れたのか、元の姿に戻ってしまった。


「あ……元に戻っちゃったね」

「そうね――効果はあんまり長く無いみたい」

「アイリンは治せたし、役割は十分果たしてくれたさ。それに二人の成長した姿も見られて、俺も嬉しかった。とても美人だったな?」

「うん! えへへ、だってユーリエ! 良かったね!」

「そうね! ナイショに出来なかったけど、喜んでくれてよかった!」

「ああ。じゃあ次は俺が喜ばせる番だな――今から急いでお弁当を作るから、『浮遊城ミリシア』にもう一度行って『水晶の花園』で食べるとしようか」


 あそこはキラキラしていて綺麗なので、魔術の照明もあれば夜でも楽しめるだろう。


「やったぁ行こ行こ!」

「そうね! はじめから行きたかった所だし!」


 子供達の笑顔が弾ける。そして――


「わああぁぁぁ! すっごい綺麗ーーーーっ!」

「うわぁ――来て良かったなぁ、こんなに綺麗なところ、他にはないもん……!」


 『水晶の花園』にやって来ると、子供達は嬉しそうに歓声を上げた。

 その無邪気にはしゃぐ様子を見ていると、俺も嬉しくなってくる。『水晶の花園』そのものよりも、それを見て喜ぶ子供達の姿こそ、俺にとって真に価値のあるものなのだ。


「うっわー! 確かにこれはすっごいねえ~! でもエイスおじちゃんのおべんとにも興味ある~! おじちゃん食べていい?」

「やれやれリコお前なぁ、リーリエちゃんとユーリエちゃんがまだ食べてねえってのに」

「いや、構わないぞ。どうぞ」

「うわ~い♪」

「……ったく、済まねえなエイス」

「ありがとうございます、エイスさん」


 と、ヨシュアに続きステラさんが言う。

 彼女は街にいたそうだが、何事もなく無事だっだ。

 彼女だけでなく、街自体にも特に被害は出ておらず、今はもう落ち着きを取り戻している様子だった。


「あのう、エイスさん。わたしも頂いて構いませんか? 何だかお腹が空いてしまって」


 と、アイリンが申し出てくる。


「ああ勿論だ。食べてくれ」

「ありがとうございます」

「食べられるという事は、もう調子はいいようだな?」

「はい。おかげ様で――前より調子がいい気がします。自分の事がよく分かって、すっきりしたからかも知れませんね」

「そうか――分かれば教えて欲しいのだが、『浮遊城ミリシア』がまた街を攻撃するような事はあるのか?」

「……少なくとも暫くは無いと思います。それに、何か変化があっても今はわたしが『浮遊城ミリシア』の指揮官のようになっていますから、操られることもありませんし、止められると思います。ただ、もう巨人を見張るという任務も無効になってしまったので、この先『浮遊城ミリシア』がどこに行くのかは分かりませんけど……」

「そうか、そうなってしまうんだな――」

「はい、だから今のうちに沢山見て、楽しんでおいて下さい。そうすれば『浮遊城ミリシア』も喜びます。エイスさんがこの『浮遊城ミリシア』の創造主である魔導王(マジックキング)に近い存在だというのは確かですから――今思えば、わたしもエイスさんに初めて会った時から、何か特別な感じはしていました。それに、エイスさんが近くにいて下さった時に力が安定したのも、そういう事だったんですね……」

「なるほどな……魔導王(マジックキング)とは何者なんだ?」

「わたしには、わたし達の創造主だとしか――」

「そういう事なら、『樹上都市バアラック』にでも行ってみりゃどうだ? 旧時代の知識や何やらも、一番集まってるのはあそこだろ?」

「……そうだな、それも悪くは無いか」


 この先、特にあてのある旅でもない。

 自分の力の事を知ってみるのも悪くは無いだろう。

 それに『樹上都市バアラック』には世界で一番とも言われる大きな魔術学院もある。

 そこでなら、子供達の治癒術師としての修練も捗るかも知れない。

 『樹上都市バアラック』は世界七大遺跡の一つでもあり、観光としても申し分ない。


「ねえねえエイスくーん!」

「こっちこっち! 一緒に見て!」


 子供達が俺を呼んでいた。


「ああ、すぐに行く」


 俺は笑顔で、子供達の元へ向かう。

 ――先の事よりも、今は子供達とこの絶景を楽しむとしよう。

予定は未定。。! なのですが、いったん完結設定させて頂きます。

ここまで読んで下さりありがとうございました! 


楽しく書けて、自分も勉強になった作品でした。また別の作品もお願いします。



『英雄王、武を極めるため転生す ~そして、世界最強の見習い騎士♀~』

という作品も連載しています。


↓↓にリンクがありますので、よろしければ見てみて下さい。

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ新作読まさせてもらいまーす
[一言] ひっさしぶりに来たけどこれでとりま完結⁉︎⁉︎完結って書いとるけんいつのまにか更新されたのか‼︎って思って来たんだが…
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