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第111話 非常事態!?

「――ですが見て下さい、これが報告にあったこちらに近づいて来ている『浮遊城ミリシア』の姿です」


 と、ルオさんが紙を取り出し俺達に見せる。

 そこには現在の『浮遊城ミリシア』の姿とやらが描かれていた。


「――!?」


 飾ってある絵とは全く違う。

 全体を覆っていた緑が姿を消し、黒っぽい鉄か石のようなものが全体を覆い、先日見た『ミリシアの巨人』に近いような魔術紋の光が浮き上がっている。

 そして半球状の下部が先の尖った三角錐のように変形しており、上部の城部分まであらゆる所に、まるで砲門のような突起物が突き出している。

 中でも最大のものは、変形した下部の三角錐の先端である。


「な、なんだよこりゃ――まるで別モンじゃねえの。しかも何か禍々しいっつうかさ。とんがってるよなあ」

「……ああ、これは……これは由々しき事態だ――」

「エイス――何か分かるのか?」

「エイスさんのおっしゃる通りですでの。由々しき事態が発生しましての――この姿と化した『浮遊城ミリシア』に調査のため近づこうとした者が……迎撃され大怪我を負ったようでしての。この無数にある砲のようなものから発せられた光に撃たれたようです」

「――そいつは穏やかじぇねえな。今のアレは絶景の観光名所じゃなくて、近づくヤツを無差別攻撃する空飛ぶ要塞だってか? そんなもんが街の近くに来たらどうなるよ?」

「そもそも、あのような姿で『浮遊城ミリシア』が現れるなど前代未聞の事態ですから、何が起こるか分かりません。ですが今のあれが攻撃性を持っていることは明白。非常に危険だと言わざるを得ません」

「……何て事だ――」

「あ、あんたでもそう思うのか? エイス――」

「ああ……見ろ。こいつには『水晶の花園』がどこにも見当たらない――一体どこへ行ってしまったのか……子供達は『水晶の花園』の花園を見たがっていたんだぞ……!」

「ぶっ……! お前今までの話聞いてたのかよ!? 街がやべえんだってよ!」

「――ならば巨大な縄にでも繋いで、近寄らせなければいいだけだろう」

「って簡単に言うけどよ? そんな事できるのかよ――?」

「必ずという保証は出来んが……不可能だとも思わん。だがそんな事よりも『水晶の花園』だ。あれが『浮遊城ミリシア』の存在価値の全てと言っていい。『水晶の花園』を取り戻す方法は無いのか……!?」

「ははは……うーん流石アクスベルの軍神は価値観が常人とは違うなあ――」

「子供達の事を第一に考えているのでな」

「くっくくく……この事態に全く動じないあなたがいて下さると、こちらも平常心でいられますのお。のう、副協会長?」


 アルディラさんが可笑しそうに声を上げる。


「は、はあ……何とも私には言い難いですがね――」

「いや、動じていますよ。子供達をがっかりさせる事になるかも知れないと思うと、とても恐ろしいです」

「お前の感じてる恐ろしさは、俺達のそれとは違うからなあ――」

「ほっほほ。ではエイスさん。『水晶の花園』を備えた状態に戻す方法が無いか、こちらで調査をしてみましょうかのお。『浮遊城ミリシア』についてはこちらの方が詳しいですからの。エイスさんには安全に調査できるよう、『浮遊城ミリシア』の足止めと調査員の護衛をお願いできませんかの?」

「ああ――それはいいですね! 如何でしょうエイスさん、そちらにも理のある事かと思いますが……それに、ヨシュア殿もお願いします。当然報酬もお支払いしますから」

「……どうするんだ、エイス?」


 とヨシュアが俺に視線を向ける。


「アルディラさん、ルオさん。断る理由はありません。俺は何としても『水晶の花園』を子供達に見せねば。アクスベルの都を出る前から、子供達は『水晶の花園』を見たがっていましたから。あなた方の知識と知恵を借りられるのならば、願ってもない事です」

「おお! では頼みますでのお、エイスさん!」

「んー。なら俺もお供しますか。ま、エイスがいれば大丈夫だろうしな」

「では、エイスさん達を含む調査団の出発は明朝に。人員の選定はすぐに進めます。明日の朝こちらに集合してください」

「分かりました。では帰ろう、ヨシュア。夕食の支度があるからな」

「こんな話聞かされても結局やるんだなーお前は……」


 俺達が席を立とうとすると――


「お婆様! お婆様ーッ!」


 勢いよく扉が開き、血相を変えたアイリンが会議室に飛び込んで来た。

 そして、リーリエとユーリエにそれにリコも一緒である。


「リーリエ、ユーリエ……!」

「リコも一緒か……!」


 三人ともアルケール学園の制服姿だ。


「あっ! エイスくん、大変なんだよ!」

「そうなの! 『ミリシアの巨人』が――!」

「そうそう! 急にぶーっ! ぶーっ! って言い出して!」


 ミリシアの巨人はその後も順調に自己修復を続けているとは、アイリンや子供達から聞いていた。しかもその速度はかなり早く、胸の一部分だった動作部分が、胸部と頭部くらいにまで広がりつつあるとの事だった。

 それが何か、動きを見せたという事か?

 子供達の言葉を聞いたルオさんは、顔を強張らせる。


「ま、まさか――あの巨人まで暴れ出すというんじゃないだろうな……!? ただでさえ『浮遊城ミリシア』の件でこちらは手一杯だというのに――」

「『浮遊城ミリシア』に何か異変が……!? じゃああれは本当の……!」

「アイリンや、どうしたんだい? 何があったかのう?」

「地下の巨人が、いきなり警告してきたんです! 危険なものがもうすぐそこに迫っているって! それで、そのものの姿も見せてくれたんですけれど――何だか様子は違いましたけど、どうもそれは『浮遊城ミリシア』みたいで……! わたし達、イゴール先生の指示でその事を伝えに――」

「巨人が……!? ふむぅ。アイリンや、様子が違うというのは、こんな感じかい?」


 と、ルオさんを目で促すと、彼が先程の変貌後の『浮遊城ミリシア』の絵をアイリンに見せる。

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