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第104話 暴走

「先生、もっといいものってなーに?」


 そう問われて、イゴールは机の上に置かれたリーリエとユーリエのお手製ポーションを指差す。


「そのポーションさ。魔素槽(マナタンク)をもう一つ付けて、中に燃料ではなくポーションを溜めておくんだ、そして手から噴射できるように管を通しておく。そうすれば怪我をした時にすぐ治療できるだろう? 魔素槽(マナタンク)に入れておくことは、ポーション自体の品質劣化を防ぐ効果もある。長持ちさせる事が出来るんだよ」

「おー確かに! おっきな盾で護ってくれて、怪我してもポーションで治してくれるんだ! それきっとパパも助かるね!」

「問題はポーションは希少だし、値段も高いという事だが――幸いリーリエ君とユーリエ君がいるからね。二人がいいなら――だが」

「うん、いいよ!」

「それが役に立つなら、喜んで!」


 母エイミーや聖女ミルナーシャのような、立派な治癒術師になるのが、二人の目標である。

 これもまた、その目標のための一歩だろう。


「ありがとー! リーリエユーリエ!」

「では『封魔の水』の素材はまだ沢山あるからね。じゃんじゃん作ってくれて構わないよ」

「「はーい!」」


 と、元気よく応じるリーリエとユーリエだった。


「それはそれとして――アイリン君。この間の巨人に効果のあった薬の方は再現できたかね?」

「いえそれが――あの通りです」


 と、アイリンは赤くなった薬と青くなった薬を指差す。


「……ふぅむ。色からして違うとは――」


 これにはイゴールも首を傾げるばかりである。


「これはどんな効果なんだろうね?」

「さぁ――? でもちょっと試してみたいわね。試してみる?」


 と、リーリエとユーリエは顔を見合わせる。

 見た事のないものが出来たら、試してみたいという興味が沸くのも自然な事だろう。


「おっ! それ試すんだ! ねえねえ何にかけて試すの?」

「うーん。どうするユーリエ?」

「とりあえず、何かダメになっても大丈夫なものにかけて様子を見た方がいいわね。変なのだったらいけないし」

「そこのゴーレムを使ってくれて構わんよ。巨人と一緒にここの地下空洞に眠っていたものだが――中身は風化して動かなくなっていてね。似たようなものは『浮遊城ミリシア』でも見つかっているから、間に合っている」


 と、イゴールは壁際で埃を被っている鎧兵士型のゴーレムを指差す。


「『浮遊城ミリシア』と同じものがここでも見つかってるんですか?」


 と、ユーリエは問い返す。

 という事は、『浮遊城ミリシア』とここの地下空洞のものは関係があるという話が、より信憑性を増すわけだ。


「ああ。細部に違いはあるようだが、かなり似ていると思われる」

「なるほど……」

「よーし、じゃあこれにかけてみるよ~」


 リーリエは赤い薬と青い薬を両手に持って、ゴーレムの所に行った。


「じゃあまずこっち~」


 赤い薬を振りかける。すると――


 ズゴオオォォォォォウッ!


 巨大な火柱が吹き上がった!


「!? きゃああぁぁぁぁぁっ!?」

「リーリエ! 大丈夫!?」

「うぉぉぉぉ!? すごい火!」

「リーリエちゃん下がって!」

「大丈夫かね!?」


 炎の迫力に後ずさりしながら、リーリエは思わずもう一方の、青い薬も振りかけてしまっていた。


「え……ええぇーいっ!」


 ピキイィィィィンッ!


 今度は猛烈な冷気が噴出し、氷の柱が立ち上る。

 それが先程の炎と合わさり、氷の水分が蒸発して大量の水蒸気を巻き上げた。


「と、止まった……!?」

「炎と氷が相殺してくれたみたいね――」

「あぁびっくりしたぁ~」

「や、やはり前とは全然違う効果になってしまったのね……」

「い、いやちょっと待つんだ! こいつ動いて――!」


 イゴールの言う通り、朽ち果てていたゴーレムの体がガタガタと震え出していた。


 エネルギ……ジュウテンカンリョウ――

 サイキドウ――モクヒョウヲコウゲキ――


「えぇっ!?」


 ゴーレムがいきなり突進を開始したため、間近だったリーリエは自由と風の神スカイラの魔術風纏(ウィンドコート)で浮き上がり、咄嗟に回避した。

 ゴーレムはリーリエに構わず、机の近くにいたユーリエやアイリン達の方に向けて突っ込んだ。

 皆慌てて避けて無事だったが、相当な重量の突進により机が二つに折れて壊れ、上に置いてあった物が辺りに散乱する。


「こ、これは――!?」

「ぬううぅっ! まさか暴走して――!?」

「ちょ、どーすんのこれぇ!?」

「皆下がって! ゴーレム!」


 ユーリエは足元に手を着き、魔術により地下空洞を覆う岩壁からゴーレムを生み出す。

 こうして魔術により直接生み出すゴーレムは、術者の力量によってその性能が大きく左右されるし、術者からの魔素(マナ)供給が途切れれば姿を維持できない。

 イゴールが研究しているような、魔素槽(マナタンク)や制御盤が組み込まれた工芸品のようなゴーレムとは呼び名こそ同じだが全く別物とも言える。

 つまり今は、ユーリエ自身の力量が、この古代のゴーレムに通用するかという問題になってくるのだが――


「ゴーレム! あいつの動きを止めて!」


 岩でできたユーリエのゴーレムは、主の指示に従い古代のゴーレムを組み止める。

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別作のリンクもありますので、よろしければ見てみて下さい。お願いします。

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