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第102話 大発見?

「で――だ。君達にここに来て貰ったのは他でも無い。出来上がったそれを、この巨人に試してみてはくれないか? 正直現状の我々の調査では、手詰まりになってしまっていてね。少しでも新しい可能性を試してみたいのだよ」

「でも……こんな大きなものに効果あるんでしょうか――?」

「分からないから試すのさ! 先程はその薬で小さな蜘蛛が喋っていたね。だとしたらこれも何かしらの意思を示すかも知れん。生き物にしか効果が無い可能性もあるが、この巨人自体が何かしらの生き物の可能性だってある。とにかく試してみたいのさ! 頼むよ君達!」

「――どうしましょう?」


 アイリンは、リーリエに意思を確かめてみた。

 この謎の薬が出来上がってしまったのは、アイリンが作った『封魔の水』が原因のような気はするが、それに治癒魔術を込めて仕上げたのはリーリエである。

 リーリエが別の事に使いたければ、そうした方がいいと思ったのだ。


「……やろう! やるーっ! ね、ユーリエ?」

「うん! 面白そうよね! リコもそう思うでしょ?」

「いいねいいね! さんせ~! 動いたら私の作った制御盤をぶっ差して自由研究の課題のゴーレムにしたいなぁ! これでうちのパパも安心だよ!」

「そ、それはダメよ! こんな大きいのが守りに来たら、逆に大変! 大き過ぎるし!」


 と、ユーリエは慌てて止める。

 この巨体が街に出て人を護衛などしようとすれば、そのあたりの建物を破壊してしまうこと間違いなしである。

 リコが作ろうとしている、ヨシュアを守ってあげるためのゴーレムには絶対向かない。


「むぅぅぅ~そっか。でもまあいいや、それはそれとして、やろうやろう!」

「よーっし! じゃあこれ掛けてみればいいの? 先生?」

「ああお願いするよ! 首の付け根当たりに、内部構造まで続いている穴が開いているから、そこに流し込んでみたいんだ! 今あそこに上るための梯子をゴーレムに組み立てさせるから、ちょっと待っていてくれたまえ」

「あ、ううん大丈夫!」


 と、リーリエは自由と風の神スカイラの魔術風纏(ウィンドコート)でふわりと宙に浮く。そして、イゴールに近づきその手を取って宙に引き上げる。


「ああそうか――小さくても君は立派な魔術師だね。助かるよ」

「どういたしまして!」


 リーリエはにっこりと可愛らしい笑顔を返す。

 そして巨人の首元に近づくと、イゴールの指示に従い瓶の中の黒い薬を流し込む。

 全て流し込むと下に降りて、様子を窺った。


「さぁ――動け! 動いてくれ!」


 イゴールが祈るように声を上げる。


「頑張って! 巨人さん!」

「お願い動いて!」

「起きろー! 起きろー!」


 リーリエ達もイゴールに続いて声を上げた。

 その声が届いたのか――


 ガ――ガガ……ガガガガ――――


 金属の擦れるような、微かな音が巨人から聞こえた。

 そして、微かな振動も響いてくるように感じる。


「お……おおおおおおおっ! か、微かだが動いた! 動いたな!? すごいぞこれは!」

「あ、あの薬に効果があったんですか……?」

「ああ間違いないよ! これまで何をやっても無反応だったものなのだからな!」

「し、信じられない――あんなものが……」


 アイリンとしては最初のあの出来上がり方を見ると、どう見ても失敗作のように思えたのだが――


「おーい! こんにちは~!」

「あたし達の言ってること、分かる?」

「何か答えてみて~!」


 ジコシュウフク……キノウ――ハソン……コウドウ、フカ――

 シュウリヲヨウセイ――ヨウセイ――


 微かにそのような、声にならない声のようなものが聞こえたかと思うと、巨人はそれっきり黙ってしまう。発していた振動も止まってしまい、元の通りになった。

 皆で暫く様子を見たが、それ以上の変化はなく――


「ぬ、ぬう……完全に止まってしまったか――しかしあの薬の効果は認められたし、気になる情報も入手できたな! どうやら本来持っている自分自身を修復する機能が破損して、全く動けない状態になっているようだ――それを直せば、また動けるようになるかも知れない!」

「でも、どうやって――?」


 とアイリンが尋ねると、バシッと肩を叩かれた。


「それは君達にかかっている! もう一度先程の薬を作ってくれ! そしてまた話せるようにして、巨人自身から聞き出すのさ! どうやら意思疎通は出来そうだからな」

「ああ、なるほど……」


 イゴールの言い分は最もだが、アイリンにとっての不安点が一つ――

 果たして、もう一度同じものは出来るのだろうか?

 奇跡的な偶然で出来上がったもののように思えるのだが――

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