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(ゝω・´★)
始めて書かせていただきました‼
目の前に広がる西洋風な大通り。いろんな人々の声が混じりあう。
商人のような人がいれば、腰に剣や手に杖をもったファンタジーの世界にいそうな人もいる。
馬車に乗って愉快に話しながら通って行く人もいる。
しかし、いつも目にしている車がない。ビルもゲーセンもコンビニもスーパーもない。
なぜか、そんなところに来てしまった俺、榊山凪。
俺の頭は既にパニック状態。いや、もうそれを通り越して冷静になりつつある。
さらに言えば、今の状況を分析していたりもする。
「今思えば、こういう類の物を読んでいて良かったな・・・ハハハ」
俺が思うにこれは〈異世界転移〉だろう。何故ならば、部活が終わり家に入ろうとしたドアを開けた瞬間ここにいたからである。そして、ここは〈異世界〉。
俺のいた世界ではあり得ない魔法を使ってモンスターを倒したり、さっき見た剣とかで斬ったりできる。ゲームのような世界だ。今まではゲームの世界だったからいいがこれからは危険とは隣り合わせで生きていかなければならない。
最悪だ。怖すぎる。
いつどっからモンスターが現れてもおかしくはない。そんなこととは裏腹に少しワクワクしている自分がいる。
「・・・ナビとかねぇのかな」
つい、口からこぼれた。
ナビがあれば地図とか〈危険を察知〉とか敵の詳細とか攻撃するときとか防御するときに結構、便利だと思うんだけどな。
ま、そんなに甘くないか、〈異世界〉だもんな。
〈〈ナビ起動・・・オン〉〉
俺の目の前に文字が現れた。
えっ!
何これ・・・俺のスキルってやつ?
俺は今までの記憶をめぐらせ、それらしきものを思い出した。
〈〈認証確認・・・榊山凪〉〉
次の文字が現れたと思ったら、俺の頭が追いつく前にたくさんの画面が現れた。
「わお」
開いた口がふさがらないほど驚いた。
だって、俺が良いなと思ったものが実現されたのだから。俺の想像をはるかに上回っていたものでもあった。
俺の詳細や現在地のことなど、まさにナビだった。
ナビすげー。
俺は心の底からそう思った。
ふと、ある文が俺の目に留まった。
〈〈スキル・・・ナビ〉〉
〈〈ナビとは地図やある人や物の詳細を載せる情報器具。魔法や攻撃するときの技名をコマンドとして開き、発動できる。三段階にレベルが分けられる。レベルのより使えるコマンドが増える。仲間として登録しておけばHPやMPを見ることができる。一度、闘ったモンスターの詳細は自動的に登録される〉〉
俺のスキル、神だろ。
最強じゃね?
なんか急にワクワクしてきた。早く何かしたい。
・・・これって、他の人には見えているのだろうか。
俺は辺りを見渡したが気にしている人は見当たらない。
「・・・ハハハ。ナビさえあれば何とかやっていけるな。よし! 俺はここで生きて見せる!」
周りからの冷たい目線を気にせず、俺は心に誓った。
「お母さん、あの人何?」
「ん? 見てはいけませんよ、あの人は少しおかしな人だから」
・・・え?
そんな会話を耳にしたとき、俺は泣きそうになった。
それから、十五分ぐらいの間ナビを上手く使うために色々いじっていた。
仕組みは簡単。画面にタッチさえすればなんでもできる。
新しく知ったことは目覚ましのアラームとストップウォッチ機能も搭載されていることだ。これにはさすがに驚いた。これがあれば何とか不自由せず無事に暮らせそうだ。
「でも、金がなぁ」
今の問題は金だ。金がなければ何も始まらない。百円玉とかはあるんだけどみたところここではまた違った硬貨を使っているから駄目だし。
うーん、どうしようか。
何か売るところがないかな?
・・・よし! 早速ナビを使ってみよう!
俺は慣れた手つきで入力する。
〈〈売るところ・・・確認しました。買取屋に変換します・・・確認しました。地図を表示します〉〉
お、おう。
できたぞ。
俺の今の感情を爆発させたい。誰かにこんな最強スキルを自慢したくてたまらんぞおっ!
でも、こういうのって。
あまり人に教えてはいけないんだよな。残念。
ま、裏を返せば俺だけでこれを独り占めできるってことだろ。最高じゃねえか。
興奮してきた。やばい。
早く目的地へレッツゴー!
俺は心を弾ませ、とても軽い足取りで向かった。
(ゝω・´★)