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勇者始めました。  作者: アヒル口
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異世界

遅くなりました(かなり)

―――エドニア王国では今日という日を待ちわびていた。

『今日はハルミヤ様の予言の日、この国を救う勇者が来るとの予言』

 1人が思い口を開く。

『この予言が正しければこの国は救われる……やっとあの魔物共から解放されるのだ……』

 また1人口を開く。

『ハルミヤ様は予言を外したことがない、ならば今回もそうだと信じたいのぅ……』

『然し、勇者が来るなどと言う幼稚じみた予言が当たるのだろうか』

 1人1人場所は違うが、眺める方向は同じ周りを厳重に警備された祭壇である。祭壇の周りは大勢の人集りが出来ている。

 『これより!勇者様の召喚を行う!この召喚が成功すればこの国は救われる!あの憎き魔物共から救われるのだ!』

 黒いフードを被った男が祭壇の上に立ち演説を始める。フードの下からは伺える顔はこれぞ長老者と言わんばかりの髭を蓄えた70代のオジサマであった。

『ハルミヤ様だ!』『ハルミヤ様!』『今回も当ててくれ!』

 人々の歓喜に満ちた声で祭壇の周りは溢れかえる。どうやらこの人物が噂のハルミヤ様の様だ。

『では!召喚を始める!』

 そう言うと祭壇の周りを数人の男が囲み始め、詠唱が始まる。

『時の貴方は遠からず永遠の安息―――』

 詠唱が始まってすぐに祭壇に書かれた文字が光り出す、端から中心へと螺旋状にゆっくりと光が集まっていく。

 儀式が始まりみんなが固唾を飲む中人の群れの中怪しい動きをする者が2人。

 2人は同じ黒のフードを被りどんどん儀式の祭壇へと近づく、そして儀式も終盤に差し掛かる。

『神はいつでもあなたと共に神の加護は我らの元にサモ―――』

 そして最後の一言を唱えようとした、刹那黒い物体がハルミヤの喉に突き刺さる、ナイフだ。これは事故ではない明らかな他殺、暗殺である。

 ナイフが深々と喉元を抉り、一見暗殺は成功したかに見えたが、ハルミヤは生きていた。

 (ここに召喚しては行けない……どこか遠くに勇者を……希望を召喚しないと死にきれない……私が生きた理由、それは……)

 ハルミヤはナイフを引き抜き叫ぶ。同時に大量の血が吹き出し、吐血する。

 『勇者を召喚することだァ!''サモン''どこか遠くへ!勇者を!希望を!俺はこの愛する世界を救いたい!』

 ハルミヤはありったけの魔力を空へと放つ。

 魔力が枯渇し、糸が切れたように倒れるハルミヤ、色が無くなりつつある目で空に見える自分の魔力の残り香を追う。

 (私が生きた意味……か)

 ここでようやく周りの止まっていた時がようやく動き出す。

 『『『うわあああああああああああああ!!!』』』

 逃げ惑う人々、ナイフを投げた黒フード達もその人混みに紛れる。

 『06失敗だ帰るぞ』

 突き刺さるような棘のある声をフードのしたから覗かせる、どうやら女性の様だ。

 『やっぱり早めに消してれば良かったのに、何でギリギリに殺したの?05』

 隣からスッともう1人の黒フードが出てくる、こちらは若い青年のようだ。

『それが命令だからだ』

 05は06の質問をそっけない態度であしらう。

『05ったらそっけないなぁ〜』

『うるさい黙って歩け』

『へいへい』

 

 ―――亜斗は真白と共に今上空2000mにいる。

『『えええええええええええええ!!』』

 亜斗達の声は虚しく空に飲み込まれる。

『ど、どういう事!』

『わ、私が聞きたいくらいですよ!なんで空なんですかぁ!』

『どうすんだよ!ここから落ちたら絶対死ぬ!』

 亜斗は目に涙を溜め、今にも泣き出しそうだ。真白はもう泣いている。

『えっと……えーっと!』

『そ、そうだあの袋の中に入ろう!』

 そう言って袋に手を突っ込みだす。

『ま、まちなさいよ!この袋の中に入ったらどうなるか分からないのよ!この中は亜空間なの!危ないのよ!分かる!?』

『考えたってしょうがねぇだろ!このままでも死ぬんだ俺は生きれる方を選ぶ!』

 そう言って亜斗は袋の口を大きく開いて体をスッポリと入れ込む。

『も、もうどうなっても知らないからね!』

 そう言って真白も自分の袋に入った。

 スタッ……

 軽い音と共に地面に小さな袋が2枚落ちる。そして一瞬の間を置き。

『ぷはァ!た、助かったぁ……!変態生きてる?』

 真白は袋から勢いよく上半身を出し、亜斗に話しかける。

『あれ、変態は?まだ出てきてないの?』

 

 ―――暗く暖かい空間、亜斗はうつ伏せで倒れていた。

『この袋の中に入ってきたのは君で二人目だよ』

 暗く、目の前は見えないがまだ声が高く声変わりが来てないような声が聞こえる、多分声の主は少年であろう。

『どうだい?ここは居心地がいいだろう?』

『ここはどこだよ?』

『ふふっ、ここは君が入ってきた袋の中ですよ』

 少年は懐かしいものを見るように微笑む。

『誰だお前』

『会って早々質問攻めですか?いいでしょう私は''付喪神''この袋自身です、言わばここは僕の胃袋ですかね?』

 少年は掴みどころのない笑い方をする。

『まぁ、どうでもいいから仕事サボらせてよ、4年くらい』

『ふふっ、君はやっぱりあの人に似ているね、でもサボらせて上げたいのはやまやまなんだけど、もう迎えが来ているようだ』

 そう言って少年は上を指さす。

『え?』

 亜斗が上を見上げると真っ暗な空に巨大な手が浮かんでいるのが目に映る。

『な、なんだこれ!』

『多分お友達の手だね、いってらっしゃい、またいつでも来てね』

 そう言って少年は手を振り出す。

『まって!助けて!働きたくないよぉ!』

 そう言って付喪神へと擦り寄るが真白の手に阻まれ、仕事サボりの夢は潰える。

 

 ―――真白の手が人形のような物を掴む。

『あ、これが変態かな?』

 そう言って亜斗を袋から引き上げる。

『……俺のオアシス……』

『何言ってんの変態?』

 蹲る亜斗は何かを呟き、もう1度袋に戻ろうとする。

『ま、まちなさいよ!』

 そう言って力ずくで袋を取り上げる。

『この袋の中空気がないのあんたも入ったから分かるでしょ!』

『いや、オアシスがあった』

『どうせ、酸欠か何かで幻覚を見たのよ!いいから入るのやめなさいよ!ちょっと!』

 真白がとめても入ろうとする亜斗、どうしても戻りたいようだ。

『かくなる上はこの手で―――』

 真白が次の言葉を話そうとしたその瞬間。

 絹をはりさくような爆発音、遅れて爆風、爆風で巻き上げられる砂はまるで波のようにうねっている。

『な、なに……!』

 亜斗達の目の前は砂埃で自分の手すら見えなくなっている。

『ががぁうがああああああああああ!』

 何者かの咆哮、どうやらかなり近い位置に何かいるらしい。

『な、なんだよあれ……』

 砂埃が落ち着き目の前に巨大な芋虫の怪物が現れる。

 どうやら空から落ちてきたようだ。

『ガウラチョウの幼虫……?でもなんでこんな所に?』

 そんな事を考えているうちに先程のガウラチョウの幼虫の大きさを優に超える大きさの鳥が現れる。

 『ぎゃぇええぇえええええええ!!』

 『ラトイ……分かったわあいつがガウラチョウの幼虫を運んで来て落としたんだわ』

 真白は合点がいったのか手のひらを軽く叩く。

『なぁなぁ真白さんや、多分今はそんな事言ってる場合じゃないとおもいますよ……』

 亜斗はラトイを見つめながら1歩づつ後ろに下がっていく。

『大丈夫よ、あいつは捕食に夢中だしこっちには向かないでしょ?』

 その言葉を待ち望んでいたかのようにラトイは180度首を回転させる。

『ふ、フラグ回収お疲れ様……真白さん』

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