相棒
二話目です、月一のくせに短いです、許してください(白目)
まさかとは思いつつも亜斗は走って店を出る。
店を出ると目の前には黒いサングラスにタキシードとザ・ボディガードというような熊のようにでかい大男が黒いリムジンの横に立っていた。
『お待ちしてました、亜斗様!いえ、勇者様!今から仕事場へ向かいましょう!』
熊男はドスの効いた重い声で恥ずかしい事を口走る
『は、はい……』
熊男の体躯、言動により周りの視線を集めているため少し亜斗は気まずげに斜め上を向いている。
『ではこちらへ』
熊男はそう言いつつ後部座先の扉を開ける
『し、失礼しまーす……』
亜斗は恐る恐る車に足を踏み込む
しかし、先客が居るようで亜斗が乗り込むと女性らしき人影が話しかけてくる
『よく来たわね、私の名前はクロ、派遣会社クロの社長よ、みんなは私の事を姉さんって呼んでるけど自由に呼んでちょうだい』
『は、はい』
クロが淡々と話を進める中、当の亜斗はと言うとクロの美貌に見惚れて立ち尽くしていた。
クロは目鼻立ちが整っており、あらゆる人類いや、生き物に愛されている、動物園に行けば人はもちろん動物だって振り向き発情する、こういう人間が神に愛されし人間と言えるのだろう。
完結して言うとクロは非の打ち所のない女性なのである。
まぁ、そんなクロを前に万年童貞の亜斗が耐えれるはずもなく。
『好きです!ヤらせてください!』
『ごめんなさい』
会って数秒でこの発言をした、よりにもよって今から下につき働こうと言う女性にだ。
『お願いします!まずは彼女からでいいんで!』
『まずは勇者からお願いします』
クロは亜斗の発言を慣れた事のように躱していく、実際このような事が多いのだから慣れてくるのも当然だろう。
『そこを何とか!』
『仕事の出来次第で考える事もあるかもしれませんよ?』
『やります、すぐ行きましょう』
童貞とは悲しいほどに単純な生き物である。
―――車を3時間ほど走らせ目的の場所にたどり着いた、派遣会社クロである。
ここは、木々に囲まれ道という道がない
しかも片道都内から片道3時間と言う不便さ、どう考えても立地条件は最悪である。
『む、虫だ!うわぁ!やめろ!あっちいけ!』
亜斗は小さなハエのような虫にビビって逃げ惑い息を切らす、終いにはクロを盾にする。
『ハァハァ……クロさん、恨まないで下さいね……僕だって本当は―――』
((屑だ……))
今、熊男もクロも同時に心の中に思い浮かべた言葉である。
『ふぅ、助かった』
先ほどの虫を熊男が潰し、虫から解放された亜斗が『一仕事おえたぜ!』と言わんばかりに汗を拭う。
『こっちが会社よ』
もう、呆れて何も無かったかのように会社へと案内する。
『ねぇ熊さんおぶってくれない?』
『え、ええいいですよ!』
『まじで?ありがたいなぁー丁度足が痛かったんだよねー』
もう、働く気がある人間だとは思えない。
そこから5分ほど歩いた所に会社がある、先程までの場所よりもっと木が生い茂り、その木々の隙間から入ってくる木漏れ日が神秘的にさえ見える。
『ここらへん冬は寒そうだね!』
しかしこの亜斗の言葉で台無しである。
『ここよ』
クロは目の前のボロボロの小屋に指を指す。その小屋は所々に穴が空いていて風通しが良さそうだ。小屋の周りには雑草が伸びっぱなしになっており最近手入れされたようなあとは見受けられない。
『えっと……ここですか?』
『ええそうよ?味があるでしょ?』
クロは無邪気な笑顔を浮かべる。
『えぇ……帰っていいですか?』
亜斗はたじろぎ後ろに1歩下がる。
『冗談よ、この下に仕事場があるの』
クロは口角を釣り上げしてやったりと笑う。
『キティ開けて頂戴』
クロが手に付けている腕時計に話しかけ始める。
『畏まりました』
すると小屋から電話越しで聞いた爽やかな女性の声が聞こえてくる。しかし、周りにはスピーカーらしき物はない。
『この声どこから聞こえてくるんだ……?』
『魔法に決まってるじゃないですか!』
『魔法?』
ヒキニートオタクの亜斗はその言葉に反応する。
『ラブここではその話をしちゃダメでしょ?』
話にクロが割り込んでくる。
『す、すみません!』
『中でなら話してあげてもいいわ、じゃあ行きましょう』
そう言って小屋の中へと進んで行く。
小屋の丁度中央に立つと地面が金色に光り出す。
『うわっ!』
目の前が真っ白になり、亜斗は手で目を覆う。
そして、一瞬の静寂を経て、視界に色が戻る。
『ようこそ派遣会社クロへ!』
盛大なお迎えだ。従業員らしい人達が目の前に集まってきている。
しかし、手を離せないのか後ろのパソコンで作業している人もいる。
『貴方が杉原亜斗さんですね、お待ちしておりました』
電話越しの声、先程の入り口の声この女性の物と一致する、どうやらこの女性がキティさんの様だ。この方を絶対ちゃん付けで呼んではいけない。
『キティ、この新人に仕事の仕方を教えてあげて』
『畏まりました』
キティは深々と頭を下げる。
『では、こちらへ』
―――会社の奥へ奥へと進み着いたのは、小さな6面キューブのある部屋であった。
『今からこの''キューブ''を使って貴方の勇者としての素質を見抜きます』
そう言ってキューブを亜斗に渡す。
『そのキューブを振ると、適正職業が表示されます、魔法使い、剣士、魔獣使い、盗賊……などなど、沢山職業があります私達も全部把握してはいませんので何が出るのかは未知数です』
『最強の職業は?』
亜斗は真面目な声音で聞く。
『今の所は魔砲使いですかね?』
アクトはキューブを地面に落とす。
『なぁ、罠師って強いのか……?』
『えっとですね……今確認できている中で最弱ですね』
亜斗は地面に膝をつき動かなくなる。
どういう事かと思いキティはキューブを拾い上げ履歴を見て察する。
『わ、罠師だって!戦えますよ!どうにかすれば!罠師は1000人に1人くらいしかなれないんですよ珍しい職業です!』
キティもどうにかフォローするがそのフォローが罠師が弱く、あまり出ないハズレくじだと言う事を物語っていて、亜斗は更に落ち込み冷たい床に蹲る。
『も、物は試しです!使って見ましょうよ!』
亜斗は返事がなくただ蹲り続けている。
『……』
『次はエドニア王国でなにをするかの説明です』
どうやら亜斗を無視して話を進めるようだ。
『今から行ってもらうエルドラ世界のエドニア王国は五大国の一つの国です、エドニアに着いたらまずフォークと言う男を訪ねてください、仕事の内容などを教えてくれるでしょう、その後は4年の間に魔王を倒すか仲間にするかしてくれればいいです、これで仕事の説明は終わりですね、質問はありますか?』
少し大雑把な説明であるが聞いていれば大体の流れは掴めるだろう。
『質問……支給品とかないの?』
いつの間に復活したのか亜斗が口を開く。しかしまだ顔色は悪いままだ。
『そうですね、最初は何でも入る袋を支給すると言う規定になっています』
『中身は?』
『マニュアルのみです』
キティはキッパリと言い切る。
『お金はどうすればいいの……?』
『もちろん給料から自腹です、異世界でもそこは変わりません、硬貨や紙幣も変わらないので安心してください』
『は、はい……』
『全て説明を終えましたので、クロさんへ報告してきます、少し待っていてください』
そう言い残すと来た道を戻っていく。
―――
『仕事の内容を大まかに伝えて来ました』
『それで?新人はどうだったの?』
ゆったりとお茶を飲みながらキティからの報告を聞く。
『あんまり魔力も感じないですし、素質はないですね』
キティはクロに思ったままを報告する。
『職業はどうなったの?』
『罠師でした……』
『……ざんねんね』
クロはゆっくりとお茶を机に置く。
『このままエルドラに連れて行っても大丈夫何でしょうか……?』
『そうね、ここまで才能がないと流石に危ないわね……』
亜斗の才能の無さに2人の綺麗な顔が歪む。
『もうここまで来ると一種の才能ね、まぁいいわ、ナビ役に真白でも連れて行かせるから』
『真白ちゃんが心配です……』
『大丈夫よ、真白は強いし罠師の新人くらいなら軽く吹き飛ばせるでしょ?』
クロは少し笑ってみせる、それに応えるようにキティも笑う。
『そうですね!』
―――石造りの大広間、大広間には少し複雑な模様の床に4本の柱が正方形の形に立っているというごく単純な造りになっている。
『それでは今からエドニア王国へとお送りし、4年後の午後9時17分必ず迎えに来ます、ちゃんと袋は貰いましたか?』
『これだよね……』
そう言って亜斗は気だるげに袋を掲げる。
『そうですね、使い方はその中に入っているマニュアルを読んでください、マニュアルには罠師についても書いてあるので参考にしてみて下さいね、最後に一緒に仕事に行ってもらいたい人がいます』
『先生!美少女ですか!』
いきなり先程まで意気消沈していた亜斗が息を吹き返す。
『……そうですね、クロさんといい勝負をしそうなくらい可愛いですよ、女の私でも惚れちゃいそうです』
キティは頬に手を付き顔を少し赤らめる。どうやらキティはあっち系の人間だったようだ。
しかしそんなことをものともせず準備を整えた亜斗。
『さぁ、呼んでください』
『分かりました、真白ちゃんもう来ていいわよ』
そうキティが後ろを振り向き名前を呼ぶと後ろの石の柱の後ろから1人の女性がブロンズの髪をなびかせこちらへ歩いてくる、いや、まだ女性と表現するより少女と表現した方がいいほどに若い少女が出てくる。
『この娘が真白ちゃんよ』
『どうも、神永真白です、よろしくお願いします』
『新婚旅行はどこにしますか?』
この発言、やはり安定の亜斗節である。
『え、あの……ごめんなさい』
『どこに家建てます?子供は何人?親への挨拶はいつ行こう―――』
ズドンッ!亜斗は腹部に大きな衝撃を受けピクピクと震え出す。
よく見ると真白の手がめり込んでいるのが分かる。
『ま、真白ちゃん……?』
亜斗は呻き声混じりに真白の名前を呼ぶ。
『ハァ……ハァ……あなた、何言ってるんですか!この変態!』
真白は明らかに顔を赤らめ何度も亜斗を蹴り続ける。
『ちょっと、やめッ……まって!ねぇ……グハッ!』
真白の最後の一蹴りが入り亜斗がピクリとも動かなくなる。
『ハァ……ハァ……ど、どうだこの変態!お、おい、生きてるのか~?』
亜斗は返事をせず息をしていない、どうやらやばい状況らしい。
『じょ、冗談よね?ねぇ起きてよ、ねぇ!』
バシッバシッバシッ!
真白は動揺のあまり亜斗を叩き続ける。
そのせいでどんどん亜斗の顔は腫れ上がる。
『ね、ねぇどういう事なのキティ!ラブならこんなのじゃ倒れないのに……!』
『それはラブさんが特別なだけかと……』
『ど、どうしようこのままじゃ私人殺し……そうなったら地獄行きになっちゃう!そんなのいや!ねぇ起きて!もぉ!何でもするから起きてよ!』
『いま、何でもするって言ったね……』
赤く腫れ上がった顔をで真白を舐めまわすように見る亜斗、どうやら復活したようだ。
『いや、それは……』
『ああーお腹痛いなぁー何でもしてくれないと死にそうだァー』
亜斗はわざとらしく顔や腹部を撫で回す。
『わかった……』
真白は聞こえるか聞こえないかという程の声で呟く。
『なんだって?さっき顔を殴られたせいで耳が遠くなったかもぉ』
『こ、ころす……』
真白はもう1度手を握り直す。
『まって……これ以上はまずいって……!さっきもやばかったし……ね?』
亜斗は後ずさりしながらキティの後ろへと隠れる。
『キティ、どいてちょうだい……』
『まぁまぁ落ち着いて……』
『そ、そうだ落ち着きなって……』
『キティ大丈夫よ、死なない程度に殺すだけだから』
真白は吹っ切れたように笑顔だ。しかしそこが恐ろしい。
『亜斗さん、どうやらダメみたいですね、すいません』
そう言ってキティは真白の方へと歩き出す。
『ちょ、ちょっと待ってキティさん!』
亜斗はキティへ手を伸ばすが、亜斗のキティへ伸ばした手は虚しく空を切る。
『覚悟しなさいよ変態』
ポキポキッ
『は、話し合えば分かるよ!ね?ここは平和的に解決しよう?ね?』
『言語道断!しね!』
真白が拳を振りかざす、杉原亜斗25歳にて初めて死を覚悟する。
『ああああああああああああああああああああああああああああああ!』
誤字脱字などあれば教えて下さると助かります。
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