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ドラゴンさんのセカンドライフ  作者: いくさや
第三章 衣食住を整えるドラゴン
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96 ドラゴンさん、もらう

 96


「むう……」


 この前の気持ち悪い感じ。

 たまに、あれを思い出してしまって、おでこの辺りがぐぬっとなる。


 誰かにミラレテいる感じ。

 あれがしてからもう二日だけど、あの気持ち悪さはわすれられない。


「レオン、大丈夫ですか?」


 シアンが背中に手を当ててくれる。

 やわらかい手の感じがうれしくて、気持ち悪いのがちょっと遠くなった。


 僕は空気を吸って、吐いて、マナを取り込んで、ようやく落ち着いてくる。


「うん。もう、へいき!」

『レオンが恐れる相手、ねえ。ぞっとしないわ』


 シアンの頭の上でノクトがため息をついている。

 僕もこんなに怖いのは今までなかったからびっくりだ。


「アニキはオイラが守るっす! 任せるっす!」

「わたくしも、わたくしもお手伝いします!」

「わっ、とと」


 仲よくお皿を洗っていた二匹が抱き着いてくるのを受け止める。

 思ったより二匹が飛びついてくる勢いが強くてびっくりした。


「トントロとピートロ」

「? なんっすか?」

「アニキ様?」


 大きさは変わってないよね?

 まるまるとしていて、ぷにぷになのは前といっしょ。

 なら、飛びつく力が強くなったんだ。


「ちょっと、強くなった?」

「うっす! 前より力が入るっす!」


 トントロが両手を持ち上げたポーズをしている。

 たぶん、おじさんたちに教えてもらったポーズなんだと思うけど、強そうというよりはかわいい感じだ。


「わたくしは……少しだけ。でも、疲れづらくなったかもしれません」

「その分、ピートロは魔力が増えているんじゃないですかね。今日の魔法も腕が上がっていましたから」


 シアンが言うならそうなんだろう。


『あれだけモンスターを倒していれば当然よね』


 ノクトが自分の影を見下ろしながらつぶやいている。

 あの影の中には今まで倒したたくさんのモンスターがしまってあるけど、どれぐらいになっているんだろう?


「中層からはモンスターとの遭遇率が段違いですしね」

『その上、上層より上質の素材が手に入るのだからありがたい話よ。まあ、これだけ稼げるのはあたしたちだけでしょうけど』


 昨日も今日もいーっぱい倒したからね。

 ピートロの魔導で集めたのを、みんなでやっつけるのはどんどんじょうずになっている。

 出てくるモンスターもわかってきたし、慣れてきたから、もう今日なんてあぶない感じもなかった。


 シアンとノクトは倒した数もちゃんとわかっているみたいだけど、聞いたら計算の問題を出されちゃうからなあ。

 いっぱい教えてもらっているけど、どうしても計算だけはうまくできない。

 僕に指がもっといっぱいあったらいいのに……。


「もともと、戦闘力の面では充実していましたからね。後は問題があるとすれば探索能力ですが……」

「すみません。まだ探知魔導がうまく使えなくて……」

『いいのよ。ああいう魔導は制御が難しいもの』

「ええ。わたしの魔導も相性が悪いですからね。崖という場所に、滝の水。ああなってしまうと雨を降らせてもうまくいきません」


 シアンは首を横に振っているけど、それでもがっかりしている感じじゃない。

 ノクトも気づいているみたいでしっぽを揺らしながら、頭の上からシアンを見下ろしている。


『その様子だと何か策はあるのかしら?』

「ええ。わたしは天才ですからね! 明日にはあの部屋も攻略できてしまうかもしれませんよ?」


 おお。

 シアンがそう言うなら安心だ。

 あの部屋に行くと気持ち悪いのを思い出してしまうから、早く次に行きたかったら嬉しい。


『そういえば、トントロとピートロ。あなたたち、今日も命石と魔石を使うの?』

「はい。壁這い蜥蜴ハイドリザードの命石をいくつかいただけますか? 汎用性の高い解毒の霊薬を作っておきたくて。あの、シアンのアネキ様。今日の体力回復の霊薬はどうでしたか?」

「そうですねえ。前に飲んだ物と同じぐらいでしたけど、飲んでからしばらく体がポカポカしていてよかったですねえ」

「よかったです。でしたら、同じ霊薬を増やしておきますね」


 二匹はダンジョンから帰ってくると、魔導装備と霊薬を作っている。

 手に入れた命石と魔石をノクトが渡しているのは知っていたけど、どんなのができているんだろう?

 ピートロの霊薬はシアンがよく使っているのを見ている。


『それで、トントロ。あなたは?』

「うっす。魔石ほしいっす! でも、今日は先に」


 トントロがトコトコと地下室に走っていって、それからすぐに戻ってくる。

 その手には一本の長い棒があった。

 トントロの背よりも長いせいで歩きづらそうだ。


「こいつっす!」


 トントロが両手で僕の前に持ち上げてくるそれは……やっぱり、ただの棒にしか見えない。

 あまりキラキラしていない落ち着いた感じの銀色。

 僕の背と同じぐらいあって、でも、握ってみるとちょうどいい太さをしている。

 先っちょの部分がドラゴンっぽくなっているのがかっこいい。

 あといくつか、かっこいい形のマークがある。


「これ、トントロの魔導装備?」

「うっす! この前は失敗したっすけど、これはちゃんとできたっす! 今度こそオイラのはじめてっす! アニキにもらってほしいっす!」


 当たってた。

 だとすると、棒に魔力を流せばいいのかな?


「あ、待つっす! アニキ、そいつは……」


 トントロに言われるけど、ちょっとおそい。

 もう魔力を流してしまった。


 銀の棒はうっすら赤く光って……あれ、重い?


 手から棒が落ちてしまって、ずしぃぃぃんと重い音を立てて床にぶつかる。


「わわっ、とと」


 あわてて生命力で体を強化。

 倒れそうになるのをしっかり持つ。

 けど、気のせいなんかじゃなくて本当に重たくなっている。

 シアンやピートロじゃ持ち上げられないぐらい重い。


「アニキ、だいじょうぶっすか!?」

「うん。へいきへいき」

『平気じゃないわよ。床がね』


 ノクトが見つめているのは、僕が棒を落とした床。

 あ、木の板がこなごなだ。


「ごめん」

「ごめんなさいっす!」

「あー、まあ、これぐらいなら怒られない、ですかね?」

『修繕費は必要でしょうけどね。前回、事故を起こしているんだから学習なさいな』


 ノクトはため息をつくけど、あまり怒ってはいないみたいだ。

 すぐに棒の方に目を向けてくる。


『それにしても、その魔導装備、重量操作ができるのかしら?』

「ちがうっす! こいつはとっても、とっても、とってもじょうぶになるようにしたっす! いっぱい魔石を使ったらじょうぶになったすけど、同じぐらい重たくなったっす!」


 へえ。

 言われてみるとたしかに、この棒はとっても固くて、でも、どこかやわらかい感じが残っていて、そう――強そうだ。

 これなら簡単に折れないかもしれない。


 シアンが近くで棒を見つめてくる。


「レオンが使うならそれぐらい強度がないとダメでしょうけど……棒なんですね? 剣、ではなくて?」


 ガルズのおじさんから剣を教えてもらってから、僕は剣を使っている。

 手でなぐった方がかんたんだけど、それだと周りから見られたら変だから、練習してる。


 だから、トントロが僕のために作った魔導装備が棒なのがふしぎみたいだ。


「うっす! アニキ、一番下のマークのとこを持って、魔力を流してほしいっす!」

「うん。こう? おお!」


 言われたようにやってみると、棒の光り方が変わった。

 赤い光がしっかり形になって、剣の形になったんだ。

 棒の周りにちょっとだけしかないけど……魔力の量を増やしたら剣の部分が大きくなっていく。


「剣になった」


 どこまで大きくなるか気になるけど、また隠れ家をこわしてしまいそうだからガマン。


『なるほど、魔力剣ね。魔力消費が激しいから扱いが難しいはずだけど、レオンなら魔力の心配がないものね』

「うっす! アニキの魔力なら最強の剣っす! でも、それだけじゃないっす! アニキ、はじっこをはなして、今度は真ん中のマークを持つっす!」


 言われたように手を放すと、魔力の剣が消えた。

 真ん中を持って、魔力を流すと、今度はさきっちょに赤い魔力の刃ができる。


「槍っす! ちょっと上を持つっと斧にもなるっす! この前、ガルズのおじきが教えるって言ってたっす! だから、作ったっす!」


 へえ。

 これがあれば助かるかも。

 やってみないとわからないけど、闘気法を使うと体がダメになっちゃうのも、へいきになるんじゃないかな?


 僕は棒を剣にしたり、槍にしたり、斧にしたりしてみる。

 ちょっと楽しい。


「これはなかなかの大作なのでは?」

『超大作でしょうね。まったく、師匠たちの評価は正しかったようね』

「お兄ちゃん、すごい……」


 シアンたちにもほめられて、トントロはうれしそうだ。

 短いしっぽがゆれている。


『もっとも、使いこなせるとしたらレオンだけでしょうね。持ち替えるだけで大量の魔力を消費しているわ。シアンの魔力量でも賄えないわね。しかも、流し込んだ魔力量に比例して重量も増しているようだし……』

「なるほど。レオンの専用魔導装備ですか……さしずめ、ドラゴンシャフトといったところでしょうか」


 ドラゴンシャフト。

 うん、かっこいい。


「トントロ、ありがとう! 大事に使うよ!」

「うっす! こーえーっす!」


 頭をなでると、トントロはにっこり笑って、ちょっとほこらしそうに笑うのだった。

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