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ドラゴンさんのセカンドライフ  作者: いくさや
第三章 衣食住を整えるドラゴン
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94 ドラゴンさん、洞窟を進む

 94


『洞窟の近くにモンスターはいないわ。入りなさい』


 猫耳を動かしていたノクトに言われて僕たちは洞窟に入った。


 細い道の行き止まり。

 その近くの壁にあった洞窟は思っていたのと違った。

 上層の洞窟とはぜんぜん形が違う。

 上から下に広くなっていく形で、広い場所でも僕がねっころがったら頭と足が壁に当たりそうなぐらい。


 光る水晶も少ないなあ。

 僕はいいけど、皆は奥が見えないみたいだ。


 一番前を歩くトントロに続いて、ゆっくりと進んでいく。

 うねうねしていてわかりづらいけど、少しだけ上がっていく坂になっているみたいだ。

 すぐ前を歩いているシアンの息がちょっと上がりだした。


『待って。この先の上にモンスターの群れがいるわね。数は二十八。小さい……』

「なんか、落ちてくる感じがするっす!」


 ノクトがしゃべっている途中だったけど、何かが上から飛び降りてくる。

 ぜんぜん音はしないし、暗いせいで見えづらいけど、これはコウモリだ。


雑食い蝙蝠キラーバット。隠密性が高い上に、牙と爪に麻痺毒を持っているわ。動けなくなった獲物を少しずつ食い殺す残酷なモンスターね』

「オイラ、おいしくないっす! いや、うまいっすか!?」

「お兄ちゃん……」

プラン強化展開ブースト/3・水属性ブルー――水面障壁アクアウォール


 食べられるっていう言葉にあわてるトントロとピートロだけど、シアンはとっても落ち着いて魔導を使った。

 急に僕たちの前にできた水の壁。

 ぶ厚いそれにコウモリたちはどんどんぶつかって、そのまま水の中から出れなくなってしまった。


『……憐れね』


 バタバタと暴れていたコウモリだけど、すぐに動かなくなってしまった。


「シアン、すごいね!」

「ふ、ふふ。魔導は使い方、次第です。こういう時、水属性は便利、なんですよ。もっとも、それを知り尽くした、わたしだからこそ、ですけどね! けほっけほっ」

「アネゴ、すごいっす!」

「わたくしも、アネゴ様を見習わないと……」

『胸を張る前に息を整えなさいな』


 シアンは坂道でつかれているみたいだ。

 ぷかりとコウモリの浮かぶ水をノクトがまるごと影にしまってくれて、そのまま先に進むとすぐにちょっと広い場所に出た。

 さっきのコウモリの巣なのかもしれない。


「こ、ここで、少し休みましょう」

『そうね。モンスターは近くにいないわ』


 言うとすぐにシアンが座りこんでしまう。

 ここまで来ると、滝の音も遠くなったおかげか、大きな声を出さないでも聞こえたみたいだ。

 トントロとピートロもぐたっと寝っ転がる。


「みんな、だいじょうぶ?」

「ええ。なんとか」

『前のシアンだったらここまで歩けなかったでしょうに、丈夫になったわね……』


 しみじみとノクトがつぶやいている。

 前はエントランスに行くまでで疲れていたもんね。

 まだまだよわよわだけど、シアンもがんばっている。


「わたしもモンスターを倒していますからね! 少しずつ生命力を多く作れるようになっているんですよ! ……まあ、それだけではここまで急成長できると思えませんが……」


 シアンがちらりと僕を見てきたから、手を振る。

 こまったみたいに笑いながら振り返してくれてくれたから今日も僕はしあわせだ。


『はあ。今は助かっているんだから素直に受け入れておきなさい』

「これ、わたしも眷属になりかけているんじゃないんでしょうか?」

『それはないと思うわよ。あなたは精霊のあたしと契約しているのだから。いくらレオンでも……絶対にないとは言い切れないのが怖いわね』

「レオンの眷属……まるでレオンに所有されてしまうようで……あれ? 悪くないかもしれません」


 シアンの顔が赤い。

 体の調子が悪いんじゃなければいいんだけど、どうしてか元気そうだからだいじょうぶかな?


『たわ言はそれぐらいにして、実際にこの滝の部屋はどうかしら?』

「想像以上に道が悪いですねえ。ただ歩くだけでも足が滑るのに、そこで戦うとなると冷や冷やさせられます」

「うっす。下に落ちそうで怖かったっす。アニキ、助けてくれてありがとうっす!」

「あと、やっぱり冷えますね。洞窟の中だと少しは楽ですが……」


 抱き着いてくるトントロを受け止めて、ブルブルとふるえているピートロをコートの中に入れてあげる。

 シアンがぐぬぬぬぬという顔をしているけど、元気みたいだ。

 そんな彼女の腕の中にノクトが入り込む。


「そこはわたしのポジションなのに……」

『今はあたしで我慢しておきなさいな。けど、実際に厳しそうね。デミドラゴンまで出てくるし……』


 ノクトが壁這い蜥蜴ハイドリザードとか言っていたデミドラだ。

 デミドラは毒を持っているからきらいな人が多いらしい。

 ドラゴンだった僕がこわがられたのも、きっとあいつらのせいもあったと思う。


「しかし、レオンがすぐにやっつけてくれましたね」

「うん。デミドラはきらいだから」

『弓聖に続いて、嫌いなのが増えたのね』

「だから、あいつらは僕がやっつけるよ」


 どんどん滝の下に落としてしまおう。

 けど、シアンが待ったのポーズをして止めてくる。


「いえ、それではわたしたちが成長できませんから。しっかり対策を練りましょう」

「うっす! オイラ、今度はしっかりやるっす!」

「はい。わたくしもお邪魔にならないように頑張ります」


 デミドラ、やっつけたいのに……。

 でも、僕が倒してもみんなは強くなれないもんね。

 ここはガマンしよう。


『それで、作戦はあるのかしら?』

「ええ。まだ断言はできませんが、この部屋の敵の傾向は見えました。どうやら隠れるのが得意みたいですけど、その点についてはノクトがいる限り、脅威ではありません」


 うん。

 ノクトは魂魄の気配を見て、聞き取っている

 どんなに隠れるのがうまくても見つけてしまえるだろう。


「となれば、わたしたちが対策すべきは戦う場所です。滝裏の細い道では戦わず、洞窟の出入り口近辺で、敵を引き付けて戦いましょう」




 そうして、休み終わった僕たちはまた洞窟を歩いた。


 何度かコウモリが襲ってきたけど、どのコウモリもシアンとピートロの魔導でかんたんに倒してしまった。

 ピートロの作る土の壁はまだうすいみたいで、たまにコウモリにこわされてしまったけど、そんなやつはトントロがひづめでゴツンとやっている。


 コウモリの群れを五回倒したあたりで、あの大きな音が聞こえ始めてきた。

 シアンの背中を押して、歩くのを手伝っていると前が明るくなる。


『洞窟の出口のようね』

「では、レオン。お願いします」

「うん。ちょっと見てくるね」


 僕だけ先に行って、洞窟の外をのぞいてみる。

 そこはさっきの細い道とよく似ていた。

 大きな音をあげる滝と、上と下にずっと続く壁と、その間に通る細い道。

 じっと周りを見つめると、上にも下にもモンスターがかくれているのが見えた。


 見ている間にシアンたちが追いついてきた。

 大きな声でシアンが叫んでくる。


「どうですか、レオン!?」

「うん。やっぱりさっきと同じ……」


 言っている途中で聞こえていないのがわかったから、うなずく。

 シアンには伝わってみたいで、後ろのトントロとピートロへ手をにぎってみせた。


「さあ、いきますよ!」

「うっす!」

「はい!」


 またうるさいのが戻ってきて、大きな声を出しても聞こえなくなる。

 それでもシアンと二匹は声を上げて、洞窟の前に並んだ。

 まずはピートロだ。


ポイント分散展開ブレイク―50・地属性ブラウン――砂煙奮迅サンドミストです!」


 ぶわっと砂が広がる。

 ピートロの前から次々と出ていくのは石とも呼べない砂だった。

 攻撃なんて呼べる魔導じゃない。

 ただ敵の目を見えなくするための魔導みたいだ。


 けど、そのぶん広い場所まで届く。

 洞窟から広がった砂は細い道をつたうように伸びていった。

 ほとんどが滝に飲まれて落ちていくけど、そうじゃなかった砂は湿った空気にぬれて、泥になって崖に落ちていく。


 そうなると、道の下にかくれていたモンスターに泥がぶつかる。


『釣れたわ。下からモンスター……反応が多いわね。右も左もどんどん上ってきているわ』


 泥を受けたモンスターが僕たちに気づいたみたいだ。

 壁をはいあがってきている。


 けど、僕たちは洞窟から出ない。

 すべりやすいけど、ちょっとだけましだし、何より落ちる心配がない。

 しかも、洞窟は外の道よりは広いけど、たくさんのモンスターがいっしょに通れるほどじゃない。


 作戦を考えたシアンがマナを魔力に転換しながら、とってもイイ笑顔で言った。


「では、狩りの時間です」




 いーっぱい狩った。

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