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ドラゴンさんのセカンドライフ  作者: いくさや
第三章 衣食住を整えるドラゴン
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92 ドラゴンさん、新しい部屋に入る

 92


 見つけた扉はこの部屋に来た時のと同じようなやつだった。

 川の上にぽつんと扉のわくが浮いていて、その中をのぞいてみると、やっぱり暗い道がある。


『あっさり見つかったわね』

「ふふ。天才のわたしの魔導ですからね! 当然です! さあ、レオン! 遠慮しないでほめてもいいんですよ?」


 胸を張るシアン。

 うん。本当にすごいと思う。

 四日も探してダメだったのが、シアンが魔導を使ったらすぐだ。

 僕はシアンの頭をなでる。


「シアンはすごいね。天才だね」

「ふわっ、ふ、ふふ! そうでしょう、そうでしょう! ちゃんとわかっていますね、レオン。その、もう少しこのままで……」


 なでていいみたいだから、なでておく。

 シアンの髪は細くて、長くて、とってもいい香りがするから好きだ。


『平常運転過ぎてあきれればいいのか、ほめればいいのか、わからないわ』

「ノクトのアネゴにもわからない事があるっすか!? びっくりっす!」

「お、お兄ちゃん……。あの、ノクトのアネゴ様。お兄ちゃんに悪気はなくて……」


 ピートロがおじぎしながら、何度もトントロの頭を上げ下げしている。

 シアンの肩の上のノクトは首といっしょにしっぽを振った。


『わかっているわ。それより、レオン。この先がどうなっているかわかるかしら?』


 そうだった。

 みんなには道がまっくらで、先が見えないんだった。

 ノクトに聞かれて、暗い道の先をじっと見つめてみると……これは。


「水の匂いがする。けど、ここの水と違うような……なんだろう? 匂いはいっしょで。でも、匂いじゃなくて……形? ううん。流れ? あと、うるさい」

「水辺の部屋なのはわかりましたが……」

『流れ方が違うようね。川ではないとして……湖? でも、うるさいというなら……海かしら?』


 シアンとノクトが考えているけど、僕にはわからない?

 湖は大きい池だよね? 海は……なあに?

 トントロは僕といっしょに首を傾けているけど、ピートロはそっと手を挙げた。


「あの、海でしたら水の匂いが違うとアニキ様も感じると思います」

『ああ、そうね。だとしたら、やっぱり湖かしらね』

「いえ、もしかしたらこの同じ川の部屋のどこか、という可能性もありますよ。もしかしたら、上流は流れが急かもしれません」


 すごいなあ。

 僕が言ったあれだけの言葉でこんなに思いつくんだから。

 それでも、先がどうなっているかはっきりとはわからないみたいだ。

 同じ川の部屋か、湖の部屋かのどっちかじゃないかってところで止まっちゃうみたい。


 そうしたら、トントロがぴょんとはねながら手を上げる。

 トントロも何か言ってみたいみたいだから、僕はうなずいた。


「どうしたの、トントロ?」

「うっす! とりあえず、行ったらわかるっす!」

「ああ、そうだね。トントロはえらいなあ」


 シアンの次にトントロをなでる。

 とても気持ちよさそうだけど、どうしてかシアンがぐぬぬという顔になってしまった。


「くっ、予想外なライバルが……」

「お兄ちゃんがすみません……」

『子供に嫉妬しないの。みっともないわよ。それに、案外トントロの言う事も正論よ。前情報が少しでもあるだけありがたいと思っておくべきだもの。それで、シアン。どうするの? この先に行く? それとも他の扉を探す?』


 シアンは少しだけ考えて、それから扉を指さした。


「まずは行ってみましょう。部屋の先がどうなっているか確認してからでも遅くはありませんから」


 シアンの言葉に皆がうなずく。

 続いてノクトが影からいつものテーブルを取り出した。


『なら、ここで一度休憩ね。水に濡れたままじゃ体力を消耗するわ。しっかり拭いておきなさいな。それからピートロ。体力回復の霊薬、シアンに使わせていいかしら?』

「はい! どうぞ! グラマン様が性能を保証してくださったから、大丈夫とは思いますけど少しずつ飲んでください」


 ピートロがポシェットから昨日の器を出して、ちょっとガチガチになってシアンに渡す。

 昨日のトントロの魔導装備の事を思い出しているのかもしれない。


「ピートロが作ったんすから、だいじょうぶっす! 自信を持つっす!」

「お兄ちゃん……」

「ふふ。ピートロもグラマンさんも信じていますよ。では!」


 シアンがゆっくりと霊薬を飲んでいく。

 コク、コクと、のどが動いて、すぐに飲み終わった。


「どう、ですか?」

「驚きました……これ、中級の霊薬クラスです。なかなか手に入らない代物ですよ。ピートロは霊薬づくりの才能があるかもしれませんね」

「そ、そんな。わたくしなんかが才能なんて」

『貧弱で霊薬のお世話になってばかりだったシアンの目は確かよ。自信を持っていいわ』


 うん。

 シアンはここに来るまでたくさん魔導を使っていたけど、どんどん元気が戻っていくのが見ていてわかった。

 顔色がよくなっていくし、だるそうだった体の動きが軽い。


 ピートロの霊薬は本当にすごい。

 僕はピートロを机の上に持ち上げて、よしよしと頭をなでる。


「アニキ様……」

「えらいね、ピートロ」

「あ、ありがとうございます! お役に立てて嬉しいです!」

「ほら、やっぱりっす! ピートロは失敗しないっす!」


 みんなも机に乗っけて、僕はモンスターが近づいてきた時のために立っておく。

 僕は体がじょうぶだから、水にぬれたままでもへっちゃらだ。

 シアンが心配そうに見ているけど、本当にへいきだから気にしないでほしい。


「……まったく、レオンは無理を言いますね。ほら、せめてこれでも口に入れてください。飴ですよ」


 シアンがあーんと口を開けた。

 僕もマネしてみると何かを口に入れられて、舌の上にやさしい味が広がる。


「あまい……」

「次の休憩の時はわたしが見張りをしますからね?」

「オイラもやるっす!」

「あの、わたくしもいいでしょうか?」


 うっ、みんなに見上げられて、何もいえない感じだ。


『決まりね。諦めなさいな。仲間ってそういうものよ』


 そうなんだ。

 でも、悪い感じじゃないからいいのかもしれない。


「うん。わかった」

「よろしい。じゃあ、今のうちにわたしはマッピングをします。ノクト、紙と黒鉛をお願いします」

『それから画板もね。ついでに軽く食べておきなさい』






「では、いきますよ!」


 僕たちはしばらく休んでから扉へと入っていった。

 僕たちは川の部屋に初めて入った時と同じように並んで、手をつないで道の中に入っていく。

 僕にはしっかり見えているけど、皆には何も見えないみたいだ。

 怖くならないようにゆっくりと進んで、そして、しばらくしたら前に出した足が何かを抜ける感じがした。


「あ、次の部屋に――」


 出たと言おうとしたけど、声がすごい大きな音に飲み込まれて、流されていった。


 とても、とても大きな音だ。

 ザーザーと、ドウドウと、ゴウゴウといろんな音がいっしょに降って、ぶつかり合って、それがまた大きな別の音となっている。


 明るくなった先に見えたのは落ちていく水。

 それから、たくさんの泡と、こまかい水の粒。

 そんなのが辺りに広がって、空気にまぎれて、ぬれた感触を残していく。


「これは……滝、ですか?」


 すぐ後に出てきたシアンの声が聞き取りづらい。

 僕じゃなかったらきっと聞こえなかったと思う。


 こうして、僕たちは滝の部屋に入ったのだった。

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