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ドラゴンさんのセカンドライフ  作者: いくさや
第三章 衣食住を整えるドラゴン
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80 ドラゴンさん、隠れ家を手に入れる

 80


 冒険者ギルドの人たちとお話が終わって、僕たちはマリアといっしょにまた転移の魔導具を使う事になった。


「アニキ、やっぱり変な感じっす」

「お兄ちゃん、大丈夫だよ。ほら、わたくしが手を繋いであげるから」


 二回目でもトントロはまだ怖いみたいだけど、ピートロはなれたみたいだ。

 今はふるえるトントロの手をつないではげましてあげている。

 仲良しの二匹に胸があたたかくなった。


「はーい、到着ですよー」


 そうやって二匹を見守っている間に転移は終わって、僕たちはまた知らない場所に来ていた。

 マリアが前に出てから振り返ってくる。

 その後ろにあるのは……木のお家?


 まるたを並べて、重ねて、立てかけて、そんなふうにして造られた家だ。

 大きさは『迷宮の狭間亭』よりもちょっと大きいぐらい。


「いかにも隠れ家という感じですね」

「本当に隠れ家だからねー」


 という事らしい。

 しばらくの間、アルトたちからかくれるのにここを使っていいんだって。

 ここなら絶対に見つからないから、って。


 僕たちと同じようにお家を見ていたノクトがため息をついた。


『まさか、ダンジョンの中にこんな物件を隠しているなんて、冒険者ギルドは本当に油断ならないわね』

「ノクトさんに言われると照れちゃいますねー」

『褒めてないわよ。まあ、確かにここなら見つからないでしょうけど』


 そう。

 びっくりしたけど、ここはダンジョンの中なんだって。

 上層のはしっこの方に、魔導具で道を見えないようにした先なんだとか。

 ほとんどモンスターも出ないし、行き止まりだし、普通は来る人のない場所を見つけて、そこにお家を作ったらしい。


「それにここならー、すぐにダンジョンに行けて便利でしょー?」

「けど、ダンジョンなんですよね? 危険ではありませんか?」


 ピートロに聞かれて、マリアはそのピートロに抱き着いた。


「ピートロちゃんはかわいいのにお利口さんねー。大丈夫よー。ここにはー、最高レベルの魔導具で守られているからー」


 そうなんだ。

 言われてよく見てみると、ダンジョンの方につながっている通路には魔力の壁があった。

 僕がたたいたら割れてしまいそうだけど、本当にだいじょうぶなのかな?


 じっと見ていたら、誰かに服を引っ張られた。

 マリアだ。

 いつの間にかトントロまで抱きしめたまま、でも、とっても不安そうに僕を見ている。


「あのー、ダメだよー? 最高レベルの魔導具なんだからー、壊しちゃったらダメなんだからねー?」


 こわれちゃうんだ。

 やってしまう前に言ってもらえてよかった。

 でも、それでいいのかな?


「こわれちゃうなら、ここって危ない?」

「レオン、あなたレベルの破壊力を持った相手に不意打ちされたなら、どの道、守りがあろうがなかろうが関係ありませんからね」


 そっか。

 じゃあ、不意打ちされないように気を付ければいいんだ。

 それか、やられちゃう前にやっつける。

 うん。そうしよう。

 それなら、みんなを守れる!


『何かとてつもなく物騒な決意をしているような気がするけど、まあ、あたしたちに害はなさそうだから放っておくわ』

「相手がかわいそうなぐらいですけどね」


 シアンとノクトが小さな声で話しているけど、止められないからきっと間違ってない。


「アニキ! この女の人、なんかこわいっす!」

「うぅ、とても口に出せないような事をされそうになりました……」


 マリアからトントロとピートロが逃げてきた。

 そのまま僕の背中にかくれてしまう。

 僕たちから見つめられたマリアはとってもあわてている。


「ち、違うよ!? ちょっと抱き心地を確かめただけだから! 服の下が気になったりなんかしてないからね!?」

「マリアさん……」

『マリア。あなた……』


 シアンとノクトの目がもっとひんやりした。


「マリア。トントロとピートロをいじめたらダメだよ」

「うっ、レオン君の言葉が一番痛いかもしれませんねー。はーい、ごめんなさいー」


 うん。あやまったからいいよ。

 二匹はまだこわいみたいだけど、さっきみたいに逃げなくなったしね。


「じゃ、じゃあー。案内するねー!」


 マリアが急にはりきりだして、まずは下を指さした。

 下はダンジョンの固そうな岩だけど、この辺りはぺったりと平らになっていて、何度も見た模様が書かれている。


「ここがー、転移の魔導具が埋められている場所ねー。シアンさんのギルドカードを登録しておいたからー、ここの部分に当ててくれたら使えるよー。向かう先はギルドねー」


 マリアが模様の真ん中を指先で叩いた。

 そこに小さな白い石が埋められている。


「次は隠れ家ねー」


 マリアについていってお家に入る。

 中はお昼に行ったお店みたいになっている。

 一階には大きなテーブルと椅子。

 あと、いろんな魔導具っぽいのが置いてある。

 向こう側は……台所かな?


『吹き抜けなのね』

「そうですよー。階段から上がった先に個室があるからー、好きに使って下さいねー。必要な物も大体は揃っていますからー、これも自由に使ってもらっていいですー」


 うん。

 階段の向こうに通路があって、そこにいくつも扉が並んでいる。

 三階は……ないんだ。


「下にも部屋があるね」


 しっかり見たら、床の下がぽっかり空いているのがわかった。


「なんで、見てもいないのにわかるのかなー?」


 マリアがこまったみたいに笑っている。


「見たらわかるよ?」

「ドラゴンってすごいんだねー。……なんだか、考えるだけ無駄な気がしてきたわ」


 遠くの方を見てつぶやくマリア。

 その足にノクトが体をくっつけて、温めてあげている。

 ノクトとマリアも仲良しだね。


『レオンとの付き合い方がわかってきたかしら?』

「はあー。ええ、まあ。とにかく、そうですねー。地下室は一番頑丈になっているから、もしもの場合はそこを使ってくださいー」

「レオン、ここの台所はなかなかですよ! 調理器具も一式揃っていますし、広くて使いやすそうです!」


 奥の方に行っていたシアンが戻ってきた。


「食料は数日に一度ー、協力者に運んでもらうからー」

「協力者というと、先程の方たちですね?」


 それって、冒険者のおじさんたち?

 そういえば、名前も聞いてなかった。

 もういろいろとお話しているのに、名前も知らないなんて僕はダメだなあ。


「ガルズのオジキたちっすか!」

「そうだよー。ガルズさんたちがダンジョンに入ってー、そこから持ってきてくれるからー、受け取ってねー」


 トントロが両手をばんざいしだした。

 ガルズって、もしかしておじさんの事?


「やったっす! ガルズのオジキたちに会えるっす!」

「トントロ……おじさんたちと仲良くなったんだね」


 さっきお話していたのは知っていたけど……。

 トントロはきらきらした目で僕を見上げてくる。


「うっす! ガルズのオジキがリーダーでカッコいいっす! ギーグルのオジキは武器を作るのが得意らしいっす! グマランのオジキは薬が作れるみたいっす! ゲンダーのオジキは魔導ができるっす!」


 すごい。

 僕よりもずっとおじさんたちを知っている。

 ショックだ……。


「トントロ、僕はダメなアニキみたいだ……」

「どうしたっすか!? アニキは最高っす! カッコいいっす! 強いっす!」

「でも、友達ができない……」

「友達っすか? そんなことな……でも、オイラとピートロはしゃてーっす。シアンのアネゴはアニキの女っす。ノクトのアネゴは親分っす。マリアやオカミは……仕事の関係っす。オジキたちも……」


 トントロが固まってしまった。

 ついでにシアンもカチンと固まっている。


「女。レオンの、女……」

『親分。そんな認識なのね』

「仕事の関係ってー……」

「もう、お兄ちゃんってば……」


 ピートロが固まったトントロをゆすっている。

 そのうち、また動き出すと思うから、いいのかな?


「れ、レオン君の友達は置いといてー、あっちがダンジョンに繋がっている通路だからー。魔導具で塞いでいるけどー、あとで、ノクトさんに開閉の仕方を教えますねー」

『そうね。あたしが覚えておくのがよさそうね。他も聞いておくわ』


 ノクトとマリアがお話をしている。

 頼れるノクトが聞いているなら、任せておけばだいじょうぶだ。


 一人と一匹はしばらく話していたけど、シアンとトントロが動き出すのと同じぐらいに終わったみたいだ。

 マリアがうーんと体を伸ばして、僕たちを見回してくる。


「それじゃー、私は五日に一度は来るからー、大変だと思うけど頑張ってねー」

「ええ。わたしの成長を楽しみにしていてください!」

「ふふっ、期待しているわー」


 そう言って、マリアは魔導具でギルドに戻っていった。

 僕たちは部屋を決めて、お家を見る事にする。

 ダンジョンに行くのは明日からだ。


 だけど、途中でシアンに手をにぎられた。


「レオン、大切なお話があります」

「? なあに?」


 シアンはいいづらそうにもじもじしていて、その足元ではノクトが静かに僕たちを見上げていた。

 じっと待っていると、シアンはぐっと強く手をにぎってくる。


「わたしの、シアン・セルシウス・ブリュー……いえ、ブリューナクの話です」

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